【現地取材】W杯アジア最終予選、韓国も大苦戦。ソン・フンミンも苦言した「チムデ・サッカー」
昨日9月2日から始まったカタールW杯アジア最終予選。森保一監督率いる日本代表はホームでオマーン代表に0-1で敗れる予想外の結果に終わったようだが、韓国もほろ苦いスタートとなった。
パウロ・ベント監督率いる韓国代表はホームで行われたイラク代表との試合で0-0のドロー。勝ち点3を得られなかった。
韓国としてはほぼベストに近い布陣だった。先発にはソン・フンミン(トッテナム)、ファン・ウィショ(ボルドー)、イ・ジェソン(マインツ)、ファン・インボム(ルビン・カザン)、キム・ミンジェ(フェネルバフチェ)ら欧州組が多数顔を揃え、昨季KリーグMPVのソン・ジュンホも合流。
3月25日の日本戦惨敗時に先発だったのはキム・ヨングォンとホン・チョルだけ。ベンチにもファン・ヒチャン(ウォルヴァーハンプトン)、クォン・チャンフン(水原三星)、さらには「カタールのメッシ」とされるナム・テヒ(アル・ドゥハイ・)らベント監督が重用してきた選手たちが控え、いずれも投入された。
(参考記事:W杯アジア最終予選で中東5カ国と戦う韓国代表、突破のカギを握るは“カタールのメッシ”?)
だが、ゴールを割ることはできなかった。シュート数は韓国15本に対し、イラクは2本。筆者も記者席で試合を見守ったが、無観客試合だったこともあり記者席からタメ息ばかりが漏れ聞こえた90分だった。
そんな中で注目を集めているのがソン・フンミンの言葉だ。試合直後にTV用のフラッシュインタビューのカメラの前に立ったソン・フンミンの姿は記者席でも確認できたが、こんなことを言ったのだ。
「結果は受け入れがたい。何と言えばいか…僕たちがダメでゴールを決めることができかったが、時間稼ぎが続くとサッカーは発展しない。言い訳かもしれないが、もどかしい。試合が遅延されるたびにもどかしさを感じた」
グループAに属してイラン、UAE、イラク、シリア、レバノンといった中東勢との戦いが続く韓国にとって、今回のW杯アジア最終予選の課題として挙げられているのが “チムデ・サッカー”への対応だ。
「チムデ」とは「ベッド」の韓国語で、試合中すぐに倒れてあからさまな時間稼ぎをするサッカーのことを指すが、ソン・フンミンがイラクの老獪な時間稼ぎに苦言を漏らした。
ソン・フンミンだけではない。試合後、記者たちに公開されたオンライン会見に姿を見せたキム・ミンジェも「イラクに時間を奪われたことも残念だった」と漏らしていた。
確かに後半の終盤に差し掛かるとイラクの選手たちのさり気ない動きが時間稼ぎのように映ることもあった。
だが、サッカーの発展を妨げたり、時間泥棒と呼びたくなるような悪質なものは少なかった。記者会見でソン・フンミン発言について問われたイラク代表のディック・アドフォカート監督も、「根拠がない発言だ。ソン・フンミンは素晴らしい選手で立派なキャプテンだが、その発言には同意できない」と言い返していた。
アドフォカート監督は、かつて韓国代表も率いた人物。2006年ドイツW杯で韓国代表を率いた。ドイツW杯では1勝1分1敗でグループステージ敗退という結果に終わったが、フランスに引き分けたり、アウェーでのW杯で韓国初の勝利をもたらすなど、今も評価は悪くはない。
ちなみにそのアドフォート監督が韓国代表デビュー戦となった2005年10月の試合(イラン戦)も今回と同じくソウルW杯スタジアムで行われ、そのときは韓国が2-0で勝利している。その試合も記者席で見守ったが、あれから約16年後にふたたび韓国の前に現れたアドフォカート監督の姿に妙な懐かしさも覚えた。
ほかの記者たちも気持ちは同じようで、「15年前と比べて韓国はどうだったか」という質問もあったが、73歳になったかつての名将は「とても良いチームだ。ヨーロッパでプレーする強い選手も多い。我々はその韓国の攻撃をしっかり防いだ。危険な機会を与えたのは2〜3回だけだ。イラクの選手たちを褒めてあげたい」と、はぐらかした。
いずれにしても韓国も初戦から躓きムードはあまり良くはない。9月7日に水原(スウォン)で行われるレバノン代表との試合までチムデ・サッカーの攻略法を見つけられるか。