弾道ミサイルへの警戒だけでなく、大規模な自然災害に関する気象関連情報でも使われるJアラート
北朝鮮の弾道ミサイルとJアラート
北朝鮮が相次いで弾道ミサイルを発射しています。
令和4年(2022年)11月3日には長距離弾道ミサイル(ICBM)とみられるミサイルの発射を受け、宮城県、山形県、新潟県を対象にJアラート(全国瞬時警報システム)が発動されました。
日本列島を越えて飛行する可能性を探知したためですが、実際は日本列島を越えず、日本海上空で消失したことが確認されたことから、この情報が訂正されましたが、Jアラートが大きく注目されました。
Jアラートは、通信衛星と市町村の同報系防災行政無線や有線放送を直結し、緊急情報を住民に瞬時に伝達するシステムです。
平成16年から総務省消防庁が開発および整備を進めてきたもので、運用が始まったのは平成19年のことです。
このJアラートは、日本を標的とした弾道ミサイルへの警戒に使われるだけではありません。
国民の保護のために必要な情報は、弾道ミサイル攻撃等の有事関連情報の他に、対処に時間的余裕のない大規模な自然災害に関する特別警報や大津波警報などの気象関連情報も伝達につかわれます(表)。
市町村に伝達された有事関連情報は、原則として同報無線等を自動起動して放送されますので、発表されると直ちに住民へ伝わります。
これに対し、市町村に伝達された気象関連情報は、原則として同報無線等を自動起動するもの、原則として同報無線等を自動起動しないもの、自動起動するかどうかを市町村で設定するものの3種類があります。
津波警報(大津波)や噴火警報(居住地域)は特別警報に位置付けられていますので、特別警報は、原則として同報無線等を自動起動して放送されます。
Jアラートでの情報の流れ
弾道ミサイル攻撃等の有事関連情報は、内閣官房から消防庁に送られ、Jアラートで市町村等に伝達されます。
また、自然災害に関する特別警報や大津波警報などの気象関連情報は、気象庁から消防庁に送られ、Jアラートで市町村等に伝達されます(図1)。
気象庁の特別警報等の情報の流れ
気象庁は防災活動に資するため、特別警報、警報、注意報などを発表していますが、その伝達については気象業務法で既定されています。
図2は、このうちの特別警報の伝達の流れです。
法律上の伝達には、「伝達しなければならない」という義務と、「伝達に努めなければならない」という努力義務の2つがあります。
日本における防災活動の中心は市町村が行いますが、この市町村に対し気象庁から特別警報を受けた都道府県は義務として確実に伝達します。
これに加え、気象庁から特別警報を受けた消防庁は、義務としてJアラートで市町村に確実に伝達します。
この2つのメインルートの他に、警察庁とNTTでも気象庁から受けた特別警報を市町村へ努力義務として伝達しています。
つまり、それだけ重要な情報の伝達なのです。
なお、NHKは、特別警報を受けたとき、義務として放送しなければなりませんが、NHK以外の報道機関は放送の義務ではありません。
実際に特別警報が発表されると、NHK以外の報道機関でも放送をしていますが、気象業務法のうえでは、NHKとNHK以外では大きな差があります。
運用開始当初は、気象庁が作成する気象関連情報の伝達が主で、有事関連情報の伝達はあまりないと考えられていましたが、今は逆になっています。
Jアラートは有事関連情報だけでなく、気象関連情報でも使われますが、使わないで済むならそれにこしたことがないシステムです。
図1、図2、表の出典:饒村曜(平成27年(2015年))、特別警報と自然災害がわかる本、オーム社。