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綾瀬はるか主演『奥様は、取り扱い注意』は、「隣の美人妻」と「秒殺アクション」のダブル仕様!?

碓井広義メディア文化評論家

綾瀬はるかさんが、『奥様は、取り扱い注意』(日本テレビ系)で、民放ドラマに久々の登場となりました。

折しも、昨年1月の出演作『わたしを離さないで』(TBS系)の原作者、カズオ・イシグロさんがノーベル文学賞を受賞したことで、綾瀬さんにも注目が集まるというナイスなタイミングです。

「隣の美人妻」と「秒殺アクション」

まずは先週の初回。物語の冒頭部分でびっくりしました。中国某所に監禁されていた綾瀬さんが、素手で屈強な男たちを次々と倒し、脱出に成功するのです。

その戦いぶりは、「え、秘密諜報部員?」「腕利きの暗殺者?」と聞きたくなるほどで、まるで“女性版ジェイソン・ボーン”みたいなカッコよさでした。このアクションは、昨年から放送中の『精霊の守り人』(NHK)での武闘訓練の成果でしょう。

今週の放送分で、ヒロインが自分について「ある国家の特殊工作員だった」と語っていましたが、詳しいことはまだ明かされていません。

そんな秘密の過去をもつ菜美(綾瀬)が、IT企業経営者である伊佐山勇輝(西島秀俊)と結婚して専業主婦になります。ご近所の主婦である優里(広末涼子)や京子(本田翼)という友達もできて、退屈だけど平和な日々を過ごすかと思いきや、トラブルに巻き込まれた善良な人たちを助ける、秘密の救世主となっていくのです。

第1話では、料理教室で知り合った主婦(倉科カナ)の窮状を見かねて、彼女のDV夫(近藤公園)を懲らしめました。見た目は綾瀬はるかなのに(当たり前です)、ボクシングの経験者でもあるDV夫を完全制圧します。また、包丁で野菜を切るのは下手なくせに、武器として使わせたら完璧。このギャップがいいですね。

第2話では、AV女優だった過去をもつ主婦(高岡早紀)が、かつての事務所関係者から恐喝されます。住んでいる家の塀に、女優時代の名前を書かれたり、周囲にビラをまかれた上に、お金を要求されました。菜美は単身、事務所に乗り込んで男たちを倒し、拘束されていた家出少女も救い出します。

「気になること」と「お楽しみ」と・・・

ドラマ全体はライト感覚のエンターテインメントとして楽しめるのですが、若干気になる点もあります。

一つは、「ご近所の主婦が抱えるトラブルを、最後は腕力で解決する」というのがパターン化しないだろうか、ということ。毎回、同じような流れでは、飽きちゃいますから。特殊工作員としての能力は、格闘技だけではないはずなので、今後のバリエーションに期待です。

次は、広末さん、本田さんという主婦仲間との間で展開される、ちょっとした「セクシーねた」の、微妙な“上滑り感”(笑)ですね。視聴者へのサービスのつもりなのかもしれませんが、果たして見る側は歓迎しているのかどうか・・・。

まあ、その辺りのことは制作側も分かっていると思うので、上手く軌道修正していただくとして、「隣の美人妻」と「秒殺アクション」という、綾瀬はるかさんをダブルで楽しめるドラマであることは確かです。

それと、西島秀俊さんが演じている、菜美の夫・伊佐山ですが、絶対に「ただ者」じゃないですよね(笑)。会社での仕事部分はまだ謎で、菜美への寛容さはもちろん、あの落着きぶりもフツーではありません。たとえば、菜美が秘密を洩らさないかどうかを監視する、「ある国家の特殊工作員」とか。それとも、まさかの公安刑事? って、それじゃあ『MOZU』(TBS・WOWOW)だ。

イメージとしては、ブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジョリーが共演した映画『Mr.&Mrs. スミス』。夫婦が、お互いにプロの暗殺者であることを隠していて・・というお話でした。やがて明らかになるはずの、西島秀俊さんの“正体”も楽しみにしています。

メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。1981年テレビマンユニオンに参加。以後20年間、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶大助教授などを経て、2020年まで上智大学文学部新聞学科教授(メディア文化論)。著書『脚本力』(幻冬舎)、『少しぐらいの嘘は大目に―向田邦子の言葉』(新潮社)ほか。毎日新聞、日刊ゲンダイ等で放送時評やコラム、週刊新潮で書評の連載中。文化庁「芸術祭賞」審査委員(22年度)、「芸術選奨」選考審査員(18年度~20年度)。

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