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「ボレロ」から「クレイ」まで〜ジャズ・ドラム七変化(森山威男トリオ@可児市文化創造センターala)

富澤えいち音楽ライター/ジャズ評論家
2021年7月18日(日)17:00まで限定公開の動画画面(筆者撮影)

界隈で噂になっているのに、どうやら「見逃してた!」という人が少なからずいるようなので、改めて紹介したい。

この動画(3部に分かれた3本)は、5月15日に岐阜県可児市文化創造センターala小劇場で開催された森山威男トリオの無観客ライヴの無料配信。

もともと有観客で開催されるものが、新型コロナ感染症拡大防止のため中止、無観客での収録に切り替えて配信されたもの。しかも無料で観ることができる。

いや〜、太っ腹だわ(^<^)

※これらの動画は2021年7月18日(日)17:00までの限定配信です。

森山威男とは

1945年 山梨県勝沼市生まれ。ドラマー。東京芸術大学打楽器科卒業。在学中より山下洋輔トリオに在籍、3度のヨーロッパツアーに参加。

1975年 山下トリオを退団。1977年から自己のバンドを結成し、国内外で精力的に活動を展開する。

2001年からは、在住である岐阜県可児市との共同企画で『MORIYAMA JAZZ NIGHT』を可児市文化創造センター 大ホールにて毎年開催。毎回、新たな趣向にチャレンジして、地元の文化活動にも貢献している。

魚返明未とは

1991年東京都生まれ。ピアニスト。4歳からピアノを始める。

高校入学の際にモダンジャズ研究部に入部し、ジャズピアノに転向。

2015年7月、初リーダーアルバム「Steep Slope」リリース(タワーレコード限定)。

2017年東京芸術大学音楽学部作曲科卒業。

中山拓海とは

1992年 静岡県富士市生まれ。サックス奏者。

5歳からピアノを学び、12歳でサックスとジャズに出逢う。2011年 国立音楽大学ジャズ専修1期生として入学。

2014年 山野ビッグバンドコンテストで2年連続の最優秀を受賞。最優秀ソリスト賞を受賞。

若手ミュージシャンたちによる多国籍ジャズ・オーケストラ”Asian Youth Jazz Orchestra”(AYJO)のコンサートマスターやJAZZ SUMMIT TOKYOのディレクターを務める。

リーダーバンド''たくみの悪巧み'' ''トライデント''のほか、''鈴木勲オマサウンド''などを中心に演奏活動を行なう。

まとめると…

若手との共演を厭わない森山威男ならではの人選。

ここ数年で注目度がマックスになっている2人を“森山トリオ”に巻き込もうとする“策略”やいかに⁈

森山威男が好きな“美しいメロディを書けて演奏できる”という条件を彼らがクリアしたことが、演奏とその紹介の仕方(森山のMC)を観ていると、伝わってくる。それは彼の個人的嗜好でありながら、日本のジャズを膨らませてきた感性でもある。

山下洋輔トリオの代表曲「クレイ」では、(本家・山下トリオと比較して)魚返のコード解釈や音の埋め方といった方法論の違いが垣間見られ、中山のフリー奏法では坂田明へのオマージュを感じさせられるなど、半世紀ほどの時間差をパラレルに結んで編み込んでいくようなスリリングな展開が楽しめた。

森山威男がラヴェルの「ボレロ」をトリオで取り上げたのも驚き。これまでにも山下洋輔とのデュオや、ソリストとして参加したジャズ・オーケストラでの演目として取り上げたことはあったが、本人も単調な繰り返しの続くこの曲を敬遠していたと言っていて、ドラムス/サックス/ピアノという編成でまた違った景色が見えるのではないかと感じたのだろう。森山威男がその立ち位置をめまぐるしく変え、エッジの立ったサウンドに仕立てるための仕掛けをあちこちにばらまくことで、期待どおりのフツーじゃない展開になっている。

全体としては、魚返や中山が「森山に叩かせる」という内容の曲を作ることができると、このトリオの次が見える、かな。

プレイリスト作りました

なお、動画をまとめてチェックできるように、YouTube Musicのプレイリストを作ったので、ブラウザとYouTubeを行ったり来たりするのや、いちいち探しに戻ったりするのが面倒な人は、こちらを利用してみてくだされ。

効くジャズver2021/06/14

音楽ライター/ジャズ評論家

東京生まれ。学生時代に専門誌「ジャズライフ」などでライター活動を開始、ミュージシャンのインタビューやライヴ取材に明け暮れる。専門誌以外にもファッション誌や一般情報誌のジャズ企画で構成や執筆を担当するなど、トレンドとしてのジャズの紹介や分析にも数多く関わる。2004年『ジャズを読む事典』(NHK出版生活人新書)、2012年『頑張らないジャズの聴き方』(ヤマハミュージックメディア)、を上梓。2012年からYahoo!ニュース個人のオーサーとして記事を提供中。2022年文庫版『ジャズの聴き方を見つける本』(ヤマハミュージックHD)。

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