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C12形蒸気機関車の復活運転構想あった若桜鉄道 2011年に購入した12系客車はどうなっている!?

鉄道乗蔵鉄道ライター
若桜鉄道若桜駅終点端部方面の様子(筆者撮影)

 筆者が先日、鳥取県のJR因美線・郡家駅と若桜駅の19.2kmを結ぶ若桜鉄道若桜線を訪問したことは、記事(高校生に快適な自習空間を提供 輸送密度の数字だけでは見えない「鳥取県の若桜鉄道」が運行を続ける意義)でも詳しく触れた。そんな若桜鉄道の終着駅である若桜駅には、C12形蒸気機関車やDD16形ディーゼル機関車が保存されており、300円で入構券を購入すればだれでも間近で見学することができる。また、線路終端部付近には12系客車の姿も見られた。

若桜駅構内で保存される蒸気機関車やディーゼル機関車

 筆者が鳥取駅を16時35分に発車する若桜行に乗車し、混雑する帰宅途中の高校生と一緒に終点の若桜駅に到着したのは17時25分のこと。若桜駅からの折り返し列車は9分後の17時34分に鳥取行が出発するが、それ以降も郡家行が18時9分、18時56分、19時38分とおおむね30分~1時間間隔であることから、そのまま折り返さず若桜駅周辺を散策してみることにした。なお、若桜駅は、中国地方最東端の終着駅になるという。もちろん鳥取県でも最東端に位置している。

 鳥取駅から2両編成で若桜駅に到着した列車は、到着後、すぐに1両を切り離し、17時35分、鳥取方面に連結されていた車両が1両編成で鳥取へと出発していった。残されたもう1両は、18時9分発の郡家行となるようだった。

 若桜駅構内には、C12形蒸気機関車と転車台や給水塔など、蒸気機関車時代の遺構がそのままの状態で残されている。筆者は、鳥取方面への列車を見送った後、この蒸気機関車などを見に行こうと、ホームを線路終端方面に歩いていくと、「この先の立ち入りには入構券300円が必要です」との案内が貼ってあったことから、一度、駅舎に向かい、窓口で入構券を購入。駅ホーム先にある構内へと立ち入ることにした。

若桜駅構内で保存されるC11蒸気機関車と給水塔。その後ろにはDD16形ディーゼル機関車の姿も見られる(筆者撮影)
若桜駅構内で保存されるC11蒸気機関車と給水塔。その後ろにはDD16形ディーゼル機関車の姿も見られる(筆者撮影)

ディーゼル機関車と12系客車は2027年に復活運転構想も

 若桜駅では、2006年に個人が構内に残されていた転車台の修復を行ったことをきっかけに「若桜駅SL保存会」が結成。その後、2007年に蒸気機関車「C12 167」を兵庫県多可郡多可町より譲り受け、若桜鉄道で圧縮空気駆動に改造された。2011年には、蒸気機関車の本線上での運転を想定してJR四国からムーンライト高知号などで活躍した12系客車を購入。その後、2015年には、この客車とともにC12形の若桜鉄道線上での試験走行を若桜―八東間で行い話題を呼んだ。

 なお、このほか若桜駅構内に残るコンクリート基礎で鉄製の給水塔は、日本に3基しか現存しない珍しいものであるといい、手動式の転車台も貴重な存在となっている。これらの蒸気機関車時代の遺構は、若桜駅舎やプラットホームなどと一緒に文化庁の登録有形文化財となっている。

手動式の転車台(筆者撮影)
手動式の転車台(筆者撮影)

 若桜鉄道公式ホームページによると、圧縮空気駆動式に改造されたC12形蒸気機関車は、2024年は4月~11月の第4日曜の日中に運転されるというが、筆者が若桜駅を訪れた日は平日の夕方であったことから、車両を外側から見学するのみにとどまった。しかし、筆者と若桜駅に同行した大阪在住の友人は、技術系の研究職を行っていることもあり、蒸気機関車のクランク機構には興味津々だったようで、「昔の人は蒸気から回転運動を取り出すのによくこんな仕組みを考え出したなぁ」などとつぶやきながら1時間近くにわたって蒸気機関車の構造を念入りに観察していた。

 なお、2011年に若桜鉄道がJR四国から購入した12系客車のうちの3両は、若桜駅構内の終端寄りに留置されているが、現在は若桜鉄道や観光協会、商工会などが中心となり、DD16形ディーゼル機関車けん引の観光列車として2027年4月から土日祝のみ1日2往復の運行を目指しているという。

1930年の開業時から使用され続けている若桜駅舎(筆者撮影)
1930年の開業時から使用され続けている若桜駅舎(筆者撮影)

駅舎は水戸岡デザインによりリニューアル

 若桜駅舎は、1930年(昭和5年)の国有鉄道若桜線の開業以来、今日までほぼ原形を保ったまま使用されつづけており、現在は若桜鉄道の本社機能も有している。そんな若桜鉄道若桜駅は、2020年3月に工業デザイナーの水戸岡鋭治氏のデザインにより内装が大きくリニューアルされた。駅窓口横にあった売店には、厨房が設置され食事や飲み物が提供されるようになり、待合室で飲食もできるようだ。筆者が、若桜駅を訪れた時間帯にはすでに売店は閉店していたが、待合室の居心地はとてもよく18時56分発の郡家行まで気持ちよく過ごすことができた。

待合室の様子(筆者撮影)
待合室の様子(筆者撮影)

(了)

鉄道ライター

鉄道に乗りすぎて頭の中が時刻表になりました。日本の鉄道全路線の乗りつぶしに挑戦中です。学生時代はお金がなかったので青春18きっぷで日本列島縦断修行をしてましたが、社会人になってからは新幹線で日本列島縦断修行ができるようになりました。ステッカーやTシャツなど鉄道乗蔵グッズを作りました。

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