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青山学院大が6回目の日本一!! 驚異の勝率.964の歩みを振り返る

横尾弘一野球ジャーナリスト
青山学院大の初の日本一には、1年生だった井口忠仁(現・資仁)も貢献した。

 第73回全日本大学野球選手権大会は、6月16日に神宮球場で決勝が行なわれ、2対1で早稲田大を下した青山学院大が2年連続6回目の優勝を果たした。大会連覇は、1954、55年、1980、81年の明治大、1957、58年の立教大、1984、85年の法政大、1988、89年、1997、98年の近畿大、2010、11年の東洋大に続いて6校目で8回目。優勝回数では明治大、駒沢大に並び、法政大の8回に次ぐ2位となった。また、連盟別優勝回数でも、東都大学連盟は27回目で東京六大学連盟に並んだ。

 それに加え、青山学院大には不敗神話がある。7回目の出場で6回目の優勝であり、唯一、優勝を逃した2006年の第55回大会も準優勝。全日本大学野球選手権大会では27勝1敗で、勝率は脅威の.964である。そんな王者の歩みを振り返ってみる。

 リーグ初優勝は1988年秋で、3回目の1993年に初めて春を制して第42回全日本大学野球選手権大会に出場した。主将の小久保裕紀(現・福岡ソフトバンク監督)が三番サード、清原和博氏の実弟・幸治が四番ファースト、高山健一(現・広島スカウト)が五番セカンドの打線には、2年生の坪井智哉(現・独立リーグ石狩監督)、1年生の井口忠仁(現・資仁=元・千葉ロッテ監督)も入っており、投手陣は白鳥隆志と中川隆治(元・大阪近鉄)が左右の両輪。初戦(二回戦)で阪南大を4対1で下すと、準々決勝も大阪体育大に4対1で快勝する。準決勝では、大塚晶文(現・中日コーチ)ら好投手を揃えた東海大に苦戦するも、8回裏に3対2と逆転勝ち。決勝では、大学ナンバーワン左腕と評された河原隆一(元・横浜)を擁する関東学院大を3対1で倒し、初出場で優勝まで駆け上がった。

 2回目は、井口が4年生で主将となった1996年。澤﨑俊和(現・BCリーグ群馬コーチ)と倉野信次(現・福岡ソフトバンクコーチ)の二本柱を、清水将海(現・福岡ソフトバンクコーチ)が好リードし、3年生の高須洋介(現・台湾味全コーチ)も活躍したチームは、初戦(二回戦)で国際武道大を10対3の8回コールドで下すと、準々決勝では倉野が青森大を2対0、準決勝では澤﨑が東北福祉大を3対0で完封。決勝では12安打の猛攻で九州共立大を9対4で圧倒し、3年ぶりに日本一を勝ち取る。

 その3年後、1999年は2年生エースの石川雅規(現・東京ヤクルト)が6勝1敗、防御率1.71で春季リーグ戦の最高殊勲選手、最優秀投手、ベストナインに輝くと、日本一を目指す戦いでもフル回転した。初戦(二回戦)で東亜大に2失点完投勝利を挙げ、九州産業大との準々決勝はリリーフで2対1の辛勝。そうして、九州東海大との準決勝、早稲田大との決勝ではいずれも完投し、3年ぶり3回目の優勝を収める。そして、「青学は大学選手権では負けない」と言われるようになる。

唯一の黒星も連覇に王手をかけていた

 2005年には、3年生右腕の高市 俊(元・東京ヤクルト)が5勝負けなしの活躍でリーグ優勝に導き、全日本大学野球選手権大会の初戦(二回戦)でも福井工業大を2年生の小林賢司とのリレーで無四球完封。準々決勝は東海大を相手に1失点で完投勝利を挙げ、八木智哉(元・中日)を擁する創価大との準決勝も8安打されながら2失点で完投する。そして、決勝では近畿大の大隣憲司(現・千葉ロッテコーチ)と息詰まる投手戦を繰り広げ、延長10回サヨナラの2対1で6年ぶり4回目の優勝を成し遂げる。

 秋も最高殊勲選手、最優秀投手、ベストナインの三冠に輝いた高市は、4年生になった2006年春も抜群の安定感を発揮。6勝3敗、防御率1.52で3季連続の個人賞三冠を手にし、チームも初の3季連続優勝を果たす。さらに、全日本大学野球選手権大会でも初戦(二回戦)で福岡大との延長12回の死闘をを制すると、準々決勝は小林が名城大をシャットアウト。準決勝では前年と同様に創価大を下し、大会連覇をかけて大阪体育大との決勝に臨んたが、疲れもあったか高市は4回までに5失点してしまう。打線も奮起して終盤に6点を返したものの、高市は8回にも2失点。惜しくも6対7で敗れ、全日本大学野球選手権大会での連勝は19でストップした。

 その後は、東洋大が5連覇、亜細亜大が6連覇するなどライバルの台頭に押され、2部陥落も経験する苦しい時代を過ごす。だが、2019年に安藤寧則監督が就くとコツコツとチーム力を高め、昨春は33季ぶりのリーグ優勝。すると、常廣羽斗也(現・広島)と下村海翔(現・阪神)の二枚看板を中心にしたチームは、4試合で3失点という手堅い試合運びで18年ぶり5回目の頂点に立ち、全日本大学野球選手権大会での不敗神話を復活させる。

 そうして、勝ち方を思い出したように昨秋も勝ち点3ながら混戦を制すると、今春も日本大に勝ち点を落としながら、ここ一番の勝負をものにして二度目の3連覇を達成。その勢いのまま、全日本大学野球選手権大会でも投打に質の高さを見せつけた。6回の日本一の軌跡を見ていくと、現在でも指導者として野球界に貢献し、あるいは現役で活躍する錚々たる名前が並ぶ。青山学院大が積み上げてきた栄冠は、野球の技量の高さとともに、相手をリスペクトしながら戦い抜くイズムがしっかりと継承させている証なのだと感じる。

(写真提供/K.D ARCHIVE)

野球ジャーナリスト

1965年、東京生まれ。立教大学卒業後、出版社勤務を経て、99年よりフリーランスに。社会人野球情報誌『グランドスラム』で日本代表や国際大会の取材を続けるほか、数多くの野球関連媒体での執筆活動および媒体の発行に携わる。“野球とともに生きる”がモットー。著書に、『落合戦記』『四番、ピッチャー、背番号1』『都市対抗野球に明日はあるか』『第1回選択希望選手』(すべてダイヤモンド社刊)など。

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