なぜ今「男性の育休義務化」が必要なのか?フランスでも「男性の産休」義務化の動き
7月17日に閣議決定された「骨太の方針(経済財政運営と改革の基本方針2020)」に「配偶者の出産直後の男性の休業を促進する枠組みの検討など、男性の育児休業取得を一層強力に促進する」という文言が入るなど、急速に注目が集まっている「男性の育児休業取得」。
今年には小泉進次郎環境大臣が大臣として初めて育休を取得し、世間的にも「取りやすい雰囲気」が徐々に醸成されつつある。
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また、読売新聞の報道(7月26日)によると、政府は男性の育児参加を促すため、出産直後の父親を対象とした新たな休業制度(産休制度)を創設する方針であるという。これによって、現在、母親にしか取得が認められていない産休制度を父親も取得できるようになる。
9月17日には、男性の育休促進を政府に働きかけてきた小室淑恵・株式会社ワーク・ライフバランス代表取締役社長と天野妙・みらい子育て全国ネットワーク代表が『男性の育休 家族・企業・経済はこう変わる』 (PHP新書)を出版し、なぜ男性の育休が重要なのか、取得率は7%台と普及しない理由は何なのか、データや具体的事例を交えながら解説している。
企業側への「義務化」
本書では、男性の育休に関して7つの政策提言が書かれているが、中でも注目されるのが、男性の育休「義務化」である。
これまで政府が実施してきたのは「イクメンプロジェクト」などの男性に向けた啓発活動だったが、約10年間かけて男性の育休取得率は2%程度から約7%に変化しただけ。
本人への啓発も大事ではあるが、それ以上に男性の育休取得を阻止している企業に対して、抜本的な制度改定をするべきであるという議論が「イクメンプロジェクト」の委員の間でも年々高まっていったという。
(太字は筆者)
フランスでは1週間の男性産休「義務化」
こうした男性の育休取得を促進しよう、という動きは日本だけではない。
「育児は母親が中心」とする保守的な価値観の根強いスイスでは、これまで父親に有給の産休・育休を認める法律がなかったが、父親に2週間有給の「出産休暇・育児休業」を法的に認めるかを判断する国民投票が9月27日に行われ、賛成多数で新制度が承認された。
またフランスでは、エマニュエル・マクロン大統領が9月23日、パートナーの出産直後の男性を対象とした「男の産休」のうち、少なくとも1週間の取得を義務とすると発表した。
フランスでは2002年に2週間の「男の産休」を導入し、取得率は約7割になっているが、雇用形態(正社員or契約社員等)によって大きな差があることから、2週間を4週間に倍増させ、うち1週間は休暇を義務とする。来年7月1日に施行される予定だ。
企業側に男性育休制度の周知行動を義務化させる日本でのアイデアと、「産休」を義務化させるフランスとでは設計が異なるが(そもそも日本ではまだ男性の産休制度が存在しない)、男女平等のために男性の育休/産休取得を促すべきというのは世界的にも共通しており、これまた先進国共通の課題となっている少子化対策のためにも欠かせない取り組みである。
菅新内閣では、女性閣僚が少ない点が問題視されているが、安倍政権がやり残した大きな課題の一つが「男女平等」であり、女性に家事・育児の負担が偏っている現状を是正し、男性の家庭進出を促進することを期待したい。