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【命の守り神⁈】手術の土台を組み立てる麻酔科医!担当は選べるの?

繁和泉看護師・予防医学士・薬機法管理者
  • 何らかの病気にかかってしまった…
  • ケガで急遽手術が必要になった…

そんなときに患者さん本人や家族は、主治医から手術の概要を聞かされて手術を受ける判断をつけなくてはいけません。

予定されている場合やセカンドオピニオンなどで執刀医の変更は可能ですが、麻酔科医の重要性について考えたことはありますか?

麻酔科医はその名の通り手術を行う際、患者さんに麻酔をかけて手術中の管理をしています。

とある麻酔科医が話していましたが、手術中に麻酔をかけると言うことは「患者さんに綱をつけて三途の川を泳がせているようなもの」だそうです。

三途の川のイメージ
三途の川のイメージ

麻酔の管理が不十分であれば命に関わることもありますし、逆に麻酔がしっかりとかかっていれれば執刀医の手術がスムーズにいく大きなサポートとなるのです。

まさに手術の土台を組み立てる、大切な業務を担っているのが麻酔科医なのです。

それだけ重要な仕事をしているのですから、できれば自分が手術を受けるときは信頼できる麻酔科医に麻酔をかけてほしいですよね。

今回は「手術を受けるとき知っておきたい、麻酔科医を選べる可能性について」と言うテーマで、元・手術室看護師が取れる手段について解説します。

ご自身やご家族が手術を受ける際には、検討事項のひとつとして参考にしてみてください。

麻酔科医は過酷な労働環境で人員不足

疲れた医師のイラスト
疲れた医師のイラスト

麻酔科医の過酷な労働環境
慢性的な人員不足

まずはこの事実を知っておいてほしいのです。

同時進行で患者さんの容態を管理しなければならない過酷な環境

麻酔科医はその名の通り手術中の麻酔を管理しているのですが、本来ならば1人の患者さんに対して1人の麻酔科医が、手術開始から手術終了までつきっきりで対処するのが望ましいです。

しかし、実際には1人の患者さんに麻酔をかけて状態が安定していれば、他の患者さんの麻酔をかけに行き、状態を安定させて2人を同時進行で管理していくこともあります。

もちろん、2人以上を見る場合には麻酔の開始時間と終了時間はズレるように担当調整されますが、同時進行で麻酔の管理を要求されることは少なくありません。

麻酔がかかっている患者さん
麻酔がかかっている患者さん

麻酔科医が不在な間は、手術室看護師が患者さんの容態観察と管理のサポートをしているので、危ないわけではありませんが、患者さんとしてはできれば麻酔科医に終始管理してほしい気持ちになりますよね…

外科医のスピードに合わせて人員配置できない実情

麻酔科医は、ああ執刀医の手術スピードや担当する手術の内容により拘束時間が変わります。麻酔科医の意思で、手術のスピードをコントロールできるわけではありません。

予定しているよりも早く終わることもあれば、時間がどんどん押すことだってあります。

予定時間がずれてしまえば、時として麻酔科医の人数が足りなくなり、2人同時に管理が必要になることもあるの疲れた医師のです。

そもそも、外科医の人数に対して麻酔科医が充足していない施設も多く、必然的に同時管理を要求されることもあります。

手術室件数に対して麻酔科医が充足しているかを確認する

手術中の様子のイラスト
手術中の様子のイラスト

麻酔科医の人員不足が考えられれば、麻酔の同時管理をされる可能性は少なくありません。

より信頼して手術を任せるには、できれば自分の管理に時間をかけてほしいものですよね。

ではどこでチェックするのか。まずは病院のホームページをチェックしましょう。

年間の手術件数をチェックする

どの病院も手術を行なっていれば、年間の手術件数をホームページ上で公表していると思います。手術件数に対して麻酔科医の数が少なければ、もしかしたら同時進行で管理をしている実情もあるかもしれません。

病院のホームページで常駐の麻酔科医の人数をチェックする

時にはアルバイトの麻酔科医をサポーターとして雇ったり、大学の医局から派遣で人員を補充したりしている施設もあります。 同時進行での管理の可能性がゼロであるとは言い難いかもしれませんね。

不測の事態に麻酔をかける人がいないという実情が生じる可能性もあります。

患者さんは、 手術の成功の有無にばかり目が行きがちですが、 麻酔による事故の有無や施設による麻酔の管理の仕方などについても確認をしておきたいところです。

麻酔科医は1日何人くらいの患者さんを担当しているのか確認したうえで、年間件数と比較し過剰な様子だったら同時管理の実情があるかもしれません。

担当の麻酔科医を指定できる唯一のチャンスは麻酔科医診察

麻酔科診察のイメージイラスト
麻酔科診察のイメージイラスト

全身麻酔をかけて手術をすることになった場合、手術前に「麻酔科医の診察」があります。一般的な全身状態の確認や、麻酔をかけることの説明を受ける機会があります。

自分の体をあずける麻酔科医と、唯一顔合わせできる機会です。麻酔科医の人間性を実感して「この先生にかけてほしい!」と思ったなら、その場で直接交渉するのが一番いいかもしれません。

施設により麻酔科医の担当の割り振りは異なりますが、「あなたがいいです!」と強く主張すると、場合によっては担当する麻酔科医を調整してくれるケースもあります。

何も言わないでいると、手術室に入室したときに「はじめまして」というケースもあるので希望があれば伝えておくのもよいでしょう。

ちなみにですが…、希望を伝えたとしても必ずしも希望が通るわけではないことは心の隅に留めておいてください。

手術室認定看護師、周麻酔期看護師の在籍を確認する

術前訪問をしている様子のイラスト
術前訪問をしている様子のイラスト

さて、同時進行で麻酔管理が行われている実情があるならば、そのサポートは手術室看護師が担っています。麻酔の管理において、より専門的なサポーターがいると麻酔における心配もいくらか軽減できるでしょう。

看護師には看護師免許のほかにも「資格」というものがあり、より高度な知識や技術を保有している資格保有者がいます。

麻酔管理におけるサポートとして、活用できる認定資格はとくに以下の2つです。

・手術室認定看護師
・周麻酔期看護師

これらの資格を保有している看護師が在籍していれば、忙しく人員不足である麻酔科医の業務を、より高度にサポートしてくれます。

高度技能を持った看護師が在籍している場合は、病院のホームページでも紹介されているはずですので、チェックしてみてください。

まとめ

今回は、手術を受ける際に自分の命の手綱を握っている麻酔科医について紹介しました。患者さんが麻酔科医を指名するケースは非常にまれ。

というのも、麻酔科医とは術前診察でしか対面する機会がありません。患者さんはそれ以上に手術に対する不安や緊張で、麻酔科医についてまで頭がまわらない実情もあるのだと感じていました。

しかし、人間性に安心感が持てたり、信頼を寄せられる麻酔科医に担当してもらえれば、手術への緊張も軽減できる一因にもなるはずです。

担当してほしい麻酔科医に出会ったら、まずは「あなたに麻酔をかけてほしいです!」とお願いしてみましょう。

必ず担当してもらえるわけではありませんが、担当割り振りの際に考慮はしてくれるはずです。また、そんな声を頂戴した麻酔科医だって悪い気はしないはず。

仮に担当が外れてしまっても、担当になる麻酔科医にしっかりと申し送りをして、患者さんの不安や緊張の軽減につながるサポートをしてくれるでしょう。

「手術を受けなければいけなくなってしまった」という際の参考にしてくだされば幸いです。

参考:麻酔科医不足に対する日本麻酔科学会の対応 並列麻酔の是非

看護師・予防医学士・薬機法管理者

【医療・美容・健康・ヘルスケア・子育てに関するリアルな情報を発信】兄妹の子育てをしながら働くワーママ。保有資格を活かしながら実際の現場で得た自身の知識や経験をもとに「誇大表現にならないリアルな情報をユーザーに届け、ユーザーが自分にとって適切な判断ができる」情報発信を追求。Well-beingな社会を目指す。

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