「素晴らしい女性」デンマーク首相を褒めるトランプ氏 国民や野党が仲直り劇に大喜び「大人の対応」
グリーンランド買収を「ばかげている」とコメントしていた、デンマークのメッテ・フレデリクセン首相。トランプ米大統領は、アメリカに対する失礼な発言だとして、9月頭に予定されていたデンマーク訪問を取りやめた。
感情的なトランプ氏に対し、首相に就任したばかりのフレデリクセン首相は、冷静な大人の対応を演出していた。
- 「とてもプロらしい対応でした」
- 「あなたを誇りに思う」
- 「あなたが首相でよかった」
デンマーク市民からは、応援するコメントが相次いだ。
トランプ氏の今回の言動は、同氏の北極圏に対する関心を改めて浮き彫りにさせた。北極圏に位置し、ロシアと国境が近い北欧他国も、「他人事ではない」と捉えていた。
23日、トランプ氏は突然、態度を豹変させた。あまりの急展開に、周囲の国々も驚かせている。
これまでの記事でも書いてきたが、北欧各国は自分たちが「小国」であり、大国とのつながりを保たなければというサバイバル意識が根強い。「米大統領が北欧の首相を相手にする」こと自体、稀だと考えられている。
私が住んでいるノルウェーでも、ソールバルグ首相がトランプ氏やG7サミットの首脳たちと何かしら交流があるものなら、大きなニュースとなる。
自分の国の領土は「売り物ではない」と堂々と宣言することで、国民から高く評価された。
そもそも、「グリーンランドは、グリーンランドの人々のものである」という発言もしていたので、独自の自治政府があるグリーンランドの人々を喜ばせていた。
同時に、トランプ氏に堂々と言い返し、大物を不機嫌にさせた。
結果、仲直りして好かれるというドラマは、勇気ある綱渡りとして羨ましがられるだろう。彼女がまだ首相として経歴が浅いという背景も、国民や周辺の国々はよくわかっている。
今回の仲直りの電話は、デンマーク首相からだったとデンマーク外務省は認めている(ノルウェー国営放送局NRK)。
グリーンランドに領事館
同時に、アメリカがグリーンランドに領事館を置くことが判明した。グリーンランドでのアメリカ領事館は1953年になくなっていた。
トップの仲が悪くなっている中、両国の外交官たちは、関係改善のために必死に動いていた。
グリーンランド買収の代わりに、領事館の設置でとりあえずは満足させたのだろうか?
子どもに大人の対応をした
今回のデンマーク首相の「大人の対応」は、同国では本来は批判する側に回っている野党やラース・ロッケ・ラスムセン前首相も絶賛している(デンマーク国営局DR)。
デンマーク国民は首相の対応を誇りに思っているだろう。
国営局は、トランプ氏が彼女を「ワンダフルな女性」と言っている動画を目立たせて報じている。
9月2・3日に中止された訪問だが、新しい日程は確定していない。騒動は、両国の安全保障協力の強化につながるか。
2人が顔を合わせる日は、そう遠くはないのかもしれない。
Photo&Text: Asaki Abumi