デンマーク「無礼だ」、北欧各国もびっくり トランプ大統領のグリーンランド購入騒動
トランプ米大統領は、デンマーク領グリーンランドを購入することに関心を示していた。しかし、相手側の反応は冷ややか。
希望の買い物が上手くいきそうにない状況を見て、トランプ大統領はデンマーク首相との会談延期を決めた。
トランプ大統領のわがまますぎる言動。デンマークのメディアでは、呆れる報道が目立っている。
デンマーク国営局DRのアメリカ特派員は、「デンマークと米国の関係を凍らせた」と比喩。
21日は国営局など、現地メディアが大きく特集している。
小国だからこそ、米国大統領の訪問は重要だった
北欧各国は、自分たちが「小国である」ということを十分に理解している。アメリカ、ドイツ、イギリス、中国などとの大国との連携には、以前から協力的だ。
大国のリーダーたちとうまく交流し、自分たちの国に招待・歓迎する。欧米とはまた異なる「北欧の価値観」(北欧流のビジネスや考え方)を、きつく批判せずに、やんわりと伝えることのできる首相が、能力のあるリーダーとも評価される。
現地メディアの報道の雰囲気や国民の感情をそのまま伝えてしまい、大国のリーダーたちと関係を悪化させる首相や外相では困るのだ。
だからこそ、米国の大統領との9月2・3日に予定されていた首脳会談は、デンマークの人々にとって、とても重要なものだった。
トランプ大統領は、デンマークのマルグレーテ王女とも会見する予定だった。21日、デンマーク王室は、大統領の訪問が実現しないという連絡を受けたとして、広報のLene Balleby氏は「驚いている」と現地メディアにコメント(国営局DR)。
女王との会見は、そもそも女王側の意思ではなく、政治的な関係で発生したものだと報じられている。このような形で女王との会見が取りやめになることはめったになく、異例だとする見方が多い。
トランプ大統領との予定がなくなったため、女王は早速、カレンダーの予定を変更して、当初予定されていた公務の実行を決めた。デンマーク王室が予定変更を発表したFacebook公式ページでは、国民から「尊敬します」とコメントが集まっている。
「失礼すぎる」
デンマークの政治家たちは、「無礼だ」、「私たちへの敬意というものが、みじんもない」と憤慨するコメントを次々と発表。
デンマーク首相は正式なコメントを避けており、21日現地時間15時に記者会見が予定されている。
トランプ大統領の態度は理不尽だが、米国の大統領をさらに不機嫌にさせて、デンマークが得をすることもない。
「米国の大統領がドアを閉めることは、小さな国デンマークにとって、問題だ。だからこそ、今、外交官たちは必死に動き回っているだろう」とアメリカとの外交関係に詳しい専門家Philip Chr. Ulrich氏は現地のEkstra Bladet紙の取材に答える
トランプ大統領は、北欧諸国の極右政党の間でも通常は人気がある。しかし、デンマークで極右に位置されるデンマーク国民党のKristian Thulesen Dahl党首でさえ、Twitterで「驚いている。訪問中止の理由を知って、エイプリルフールかと思った」と発言。
北欧他国も、びっくり
トランプ大統領の行動に、北欧他国も衝撃を受けている。
前述したように、北欧各国は「小国」という自覚が強い。世界地図の中で、自分たちが国際的に及ぼすことのできる影響力は限られており、大国との関係が命綱だという認識がある。
小国だからこそ、北欧各国の連携も強く、特に言語やカルチャーが似ているスカンジナヴィア地域(ノルウェー、デンマーク、スウェーデン)は、兄弟のような関係だ。
トランプ大領領のニュースは、彼を不機嫌にさせると、どれほど外交に影響があるかを実感させる悪い例となる。
デンマークでの騒動を、どう報じているだろうか。
「デンマーク国民はショックを受けている。『子どもみたいだ』、『侮辱だ』という反応で、デンマークの政治家たちは米国大統領を笑いのネタにしている」とノルウェー国営局NRKの記事。同局は、トランプ大統領を子どもっぽいと発言する現地政治家のコメントを多く引用している。
スウェーデンのマルゴット・ヴァルストローム外務大臣は、「なんでもかんでも、売り物というわけではない」と、「全てが驚きで非現実的だ」と、スウェーデン・ラジオで答える。
スウェーデンの元首相・元外務大臣であるカール・ビルト氏は、「もはや笑っていいのか、泣いていいのか分からない」とコメント(スウェーデン国営局SVT)。
デンマーク国民は、後ほど予定されている首相の記者会見のコメントを待っているところだ。
その間、デンマーク国営局は、「私たちは、こんなに準備していたのにな」と、警察や軍が総動員でトランプ大統領を迎える体制を整えていた様子をレポートしている。
Text: Asaki Abumi