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BIGBOSSの商標登録は今どうなっているか?

栗原潔弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授
(写真:アフロ)

「【日本ハム】新庄剛志監督”来年からが本当の勝負”インスタで改めて脱BIGBOSS宣言」というニュースがありました。自分は野球全然詳しくないのですが、要はBIGBOSSの愛称はもう使わずに本名で活動するということですね。

今年の5月に株式会社北海道日本ハムファイターズが出願していたBIGBOSS商標について記事を書いておりますので、最新情報を調べてみました。

日ハムの出願の登録査定を妨げていた個人の方の抜け駆け出願については、9月12日付けで拒絶査定が出ていました。理由は日ハムと無関係な者が出願したことによる公序良俗違反(商標法4条1項7号)および日ハムとの出所混同です(4条1項15号)。制度上は不服審判(および、審決取消訴訟)を請求できますが、事実上難しいのではと思います。なお、この出願の後も、別の複数の出願人(企業)がBIGBOSSを出願していますが、基本的に同じ理由によって拒絶されています。一般に、このように新聞やテレビで大々的に報道される”大ネタ”をそのまんまで抜け駆け出願して登録するのはほぼ不可能です。

日ハムの出願は、この個人の方との抵触を避けるために分割されており、親出願の方は9月14日付けで登録査定がされています。まだ、記録上はまだ登録料が支払われていません(期日は10月14日ですが実務上は多少遅れても大丈夫です)が、こういう状況なのでどうするのでしょうか?

分割の子出願の方は、野球用帽子、運動用特殊靴、球技用具等、上記の個人の方の抜け駆け出願と重複していた重要度の高い商品が指定されています。上述のとおり、抜け駆け出願が拒絶になる可能性が高いので、こちらも、問題なく登録されると思いますが、ここでも、費用を払って先に進めるのかどうかはわかりません。

もちろん、グッズの商標としてBIGBOSSを使っていくという可能性もあるわけですし、日ハムの予算を考えれば商標登録の費用など知れているので、おそらくは、念のためにも登録までしてしまうものと思いますが。

私も商標登録が完了する前にその商標を使うはずだった事業の計画がなくなってしまったということは希にありました(弁理士としてもちょっとがっくりしてしまうパターンです)が、出願の時点ではそうなるとはわかっているはずもないのでしょうがありません。

弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授

日本IBM ガートナージャパンを経て2005年より現職、弁理士業務と知財/先進ITのコンサルティング業務に従事 『ライフサイクル・イノベーション』等ビジネス系書籍の翻訳経験多数 スタートアップ企業や個人発明家の方を中心にIT関連特許・商標登録出願のご相談に対応しています お仕事のお問い合わせ・ご依頼は http://www.techvisor.jp/blog/contact または info[at]techvisor.jp から 【お知らせ】YouTube「弁理士栗原潔の知財情報チャンネル」で知財の入門情報発信中です

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