日ハムのBIGBOSS商標が登録できていない理由について
「日本ハム"BIGBOSS"グッズがバカ売れも…商標問題は解決どころか特許庁から拒絶されていた」というニュースがありました。
株式会社北海道日本ハムファイターズが2021年11月28日に出願していた”BIGBOSS”という商標登録出願が、第三者がひと足先に出願していたことで登録できていないという話です。なお、上記見出しの「拒絶されていた」は不正確で「拒絶理由が通知されていた」(暫定的に拒絶されていた)が正しいです。今後、補正等の対策を取ることにより(少なくとも一部の商品について)登録することは十分可能です。
「第三者がひと足先に出願していた」というと、特定の人(または、その人の会社)を思い浮かべてしまいますが、今回はその人は関係ありません(出願はしているのですが、出願日が日ハムより後なので日ハムの出願が影響を受けることはありません。
また、上記記事では、2021年11月8日に個人の方が出願した商標のみが問題になっているかのように見えますが、特許庁からの拒絶理由通知では(手続き的な瑕疵に加えて)以下の複数の類似先登録・先願商標の存在を理由に登録できないことが指摘されています(BIG BOSSはブランドとして使用されがちな言葉と思うのでこれはしょうがありません)。なお、このケースにおいて、スペースのあるなしはほとんど関係ありません(”BIGBOSS”は事実上”BIG BOSS”と同一視されるため)。
登録3227676号:コーヒー等を指定商品にしたサントリーのBIG BOSSの文字商標です。これはかなり周知性高いと思います。これに対しては、日ハム側は指定商品からコーヒー等を削除することで対応済みです。
登録5606066号:カモ井加工紙株式会社によるBIG BOSSの文字商標です。ネットサーチしたところ現在も使用されています。こちらは、拒絶理由がまだ解消していません。
登録5606067号:上記登録のロゴマーク版です。状況は同じです。
登録5938237号:パチスロ機器メーカーのKPEによる文字商標BIGBOSS(スペースなし)です。これに対して、日ハム側は指定商品を一部削除することで対応済みです。
商願2021-138869号:これが上記の記事に出てくる第三者の個人による出願です。指定商品は被服類および運動用特殊靴なので日ハムにとって重要性が高いでしょう。この出願は現在審査中ですが、「公序良俗違反」「商品又は役務の出所の混同」「他人の周知商標と同一又は類似で不正の目的をもって使用をする商標」の拒絶理由通知が出ており、出願人の応答待ち状態になっています。拒絶理由通知には、たとえば、以下のように書かれています。
私見ですが、この拒絶理由を覆すのは結構困難と思います(新庄監督の会見を聞いて出願したのではなく、その前から事業の準備を行っていたこと等を立証する必要があるでしょう)。将来的にこの出願の拒絶が確定すれば、被服および運動用特殊靴等についての日ハム側の拒絶理由も解消しますので無事登録できることになります。
ということで、一番重要と思われる被服と運動用具については日ハムが無事商標登録できる可能性が高いと思われます。コーヒー等については登録はあきらめて、むしろサントリーとコラボする等の方が適切でしょう。今回はおそらくは大きな問題なく終わると思いますが、一般に、世の話題になる可能性が高く、かつ商標として使用し得る言葉を発表するときは、発表前に商標登録出願しておくに越したことはありません。