「どこでもドア」が実在したら、世の中はどうなってしまうのか? ドラえもんの誕生日に考える。
こんにちは、空想科学研究所の柳田理科雄です。マンガやアニメ、特撮番組などを、空想科学の視点から、楽しく考察しています。さて、今回の研究レポートは……。
この夏、仕事が忙しくてどこへも行けなかった人は、「どこでもドアがあったらなあ」と思っているかもしれません。
行き先を唱えてドアを開ければ、そこは目的地。北海道でも軽井沢でもスイスでも、瞬時に行けてしまう。ああ、想像しただけで涼しくなる。
調べてみると、『ドラえもん』において「どこでもドア」は、登録された地図に載っている10光年以内の場所なら、どこへでも行けるらしい。
10光年とはすごい。地球からいちばん近い恒星のケンタウルス座α星が距離は4.3光年だから、どこでもドアなら到達圏内。月(距離38万km)や、火星(最も近づいたときで5500万km)など、ホイホイ行けるのだ。
いつか、どこでもドアが実現する日が来るのだろうか?
◆ワームホールの問題点
現実世界に目を向ければ、いまのところ、どこでもドアが実現しそうな気配はない。研究されているという話も聞かない。
ただし「似たものが実際にあるのでは?」という説はある。
「ワームホール」がそれで、入り口から入ると、時間ゼロで出口に出るトンネルのようなものだ。
まさにどこでもドア!と嬉しくなるが、いまのところ理論上の話で、存在する証拠は見つかっていない。
では、ワームホールが存在したら、どこでもドアを作ることは可能なのか。
ワームホールには次のような特徴がある。
①直径が0.00000000000000000000000000000001mmという小ささ
②常に生まれては消えている
③出口がどこに開くかわからない
う~む、どこでもドア実現の日は、まだまだ遠いのか……。
しかしドラえもんが生まれるのは2112年9月3日で、ちょうどいまから90年後。それだけの時間があれば、実現も夢ではないのでは!?
◆ドアが閉まらない!
科学が発達して、どこでもドアが発明されたら、どんな使い方があるだろう?
筆者としては、ぜひとも宇宙に行きたい。
でもその場合、ちょっと心配なこともある。
宇宙とつながるドアを開けると、空気がどばば~っと吸い出されてしまうのではないだろうか!?
計算してみると、ドアから吸い出される空気の風速は、秒速293m=時速1060km。
音速に近い猛スピードであり、ドアを開けた瞬間、宇宙空間に飛ばされるかも!
慌てて閉めようとしても、ドアからは音速に近い猛風が吹き出ているのだから、近寄ることもできないだろう。
そのまま放っておくと、地球からどんどん空気が出ていき、人類は滅亡するのでは……?
幸い、どこでもドアは180cm×90cmほどと思われる(一般家庭のドアのサイズ)から、そこから空気が出続けても、地球の空気が半減するまで、2億1千万年かかる。
ただ、不用意に近づくとキケンなのは間違いない。
どこでもドアの周辺(のび太の家?)は地球でもっとも危険な地帯として、立ち入り禁止になるかもしれない。
◆いっせいに使ったら大変だ!
なんだか不穏な話になってきたので、スバラシイ使い方を考えたい。
たとえば、富士山の頂上に池を作り、麓にも池を作って、水路でつなぐ。
そして、どこでもドアを麓の池の中に置いて「富士山の頂上の池!」と叫ぼう。
すると、麓の池の水は、富士山頂の池に出て、水路を通って流れ落ちてくる。
その水は、どこでもドアを通って、また富士山頂へ。
夢の永久機関の実現だ……!
これはいい。やっぱりどこでもドアはぜひとも実現してほしいし、世界中に広まってもらいたい。
……と思ったけど、本当にそうだろうか?
どこでもドアが普及して、世界の人々がいっせいに「宇宙へ行きたい」と考えたらどうなるだろう?
世界人口が現在と同じ80億人だとして、80億台のどこでもドアがいっせいに宇宙に開いたら!?
地球の空気は、わずか9日で半減してしまう! 空気が半減したら、人類は滅亡するのでは……。
う~む、あまりに便利すぎて、みんなで使うのはキケンということか。
――こんなふうに、どこでもドアをどう使うかを考えると、便利な点とオソロシイ点がいっぱい想像できて、とてもオモシロイ。
9月3日は、ドラえもんの誕生日。皆さんもいろいろ考えてみてください。