Yahoo!ニュース

妊娠した高校生の役で『あの子の子ども』主演の桜田ひより 「2人の選択肢に正解も不正解もありません」

斉藤貴志芸能ライター/編集者
(C)カンテレ

高校生の妊娠を真正面から描き、1話のTVer再生数が220万回を超えたドラマ『あの子の子ども』。主演は桜田ひより。子役時代から演技力を絶賛され、昨年から大ヒットした映画『交換ウソ日記』などヒロインや主役が相次ぐ。今回もセンシティブなストーリーの中で、微笑ましい高校生カップルぶりと裏腹の現実への苦悩を、等身大に見えるナチュラルさで演じている。

心の不安定さを意識しています

――『あの子の子ども』ではセーラー服姿がかわいいですね。

桜田 本当ですか? ありがとうございます(笑)。21歳なので不安ですけど、皆さんには「問題ない」と言っていただいています。

――見た目は似合いすぎるくらいですが、演じている福(さち)は16歳の高校2年生。年齢感は意識していますか?

桜田 思春期の高校生なので、ちょっとした心の不安定さや、しっかりしすぎないことはすごく意識しています。

――話し方も、ちょっとあどけなさが残ってる感じがします。

桜田 台詞の言い回しは、自分では形として作るものではないと思っていて。内面から幼さを出していくようにしています。高校生だからというより、福ちゃんの穏やかな性格が相まっての話し方ですかね。

幸せを共有するのが恋人に大切だなと

――「この先の初めて、全部(恋人の)宝とがいい」と永遠に好きでいるような純粋さも、10代ならではですかね?

桜田 10代ならではなのかは私にはわかりませんが……大人になると、そう思わなくなるのでしょうか?

――そうでない人もいると思いますが。

桜田 福ちゃんと宝はお互いを思いやっていて、相手の幸せが自分の幸せ。その幸せを2人で共有することが嬉しい。宝がお菓子を半分コにしてくれたり、観たいと言っていた映画を覚えてくれていたり。そういう些細なことで幸せな時間を過ごせるというのは、高校生に限らず大切なことだと思います。

――忘れたくない気持ちですね。

桜田 すごくセンシティブな作品ですけど、家や学校にいるところだけでなく、2人だけの空気感を大切にしようという意識はあります。

学校で教わらないことも提示できたら

――“高校生の妊娠”がテーマのこの作品のオファーを聞いたとき、どう思いましたか?

桜田 「ぜひやりたいです」とお返事させていただきました。演じ甲斐もありますし、福という役がとても魅力的に感じたので。プロデューサーさんとお話しする機会もあって、作品で伝えたいことを聞いて、役者へのフォローも事細かく考えてくださっていて。その熱意と覚悟に胸を打たれて、より前向きになりました。

――難しい役だとも思いませんでした?

桜田 そうは思わなかったです。撮影することが楽しみでした。

――妊娠について考えたことは、なかったかと思いますが……。

桜田 授業で習った知識しかなくて、改めて調べるきっかけになりました。いろいろな選択肢があって、何かにぶつかったときに対応してくれる人もいる。2人と同じ体験をしている人、これからするかもしれない人に「こんな方法もあるよ」と、提示できるドラマにもなればいいなと思いました。

お話と共に自分の知識も広げています

――そういうことを、ひよりさんも撮影前に勉強したわけですか。

桜田 勉強もしましたし、役にも反映させていきたくて。お話が進むにつれて、福がいろいろな選択肢を知っていくので、私もどんどん知識の幅を広げている感覚です。産むか産まないかの判断だけでなく、その先にある養子縁組だったり、乳児院だったり、里親制度だったり。言葉だけで具体的な内容は知らないままだったことを、詳しく調べるようになりました。

――ドラマのポスターは“命の予感”をテーマに撮影されたそうですが、演技の中でも自分の中に命が宿ったイメージもあったり?

桜田 ポスター撮影のときは、お腹に手を添えるようにディレクターさんから言われました。お話が進む中で、福ちゃんにそういう感覚も少しずつ出ていると思います。

――ひよりさんとしては、福と宝はどうすればいいとか考えました?

桜田 私が2人に対して、こうすれば良かった、ああすれば良いということは、絶対に考えないようにしています。正解も不正解もない、選択肢はいろいろあることを伝える作品だと思っているので。

心が動くままに空気感を作り上げて

――福のキャラクターとしては、どんなイメージで演じていますか?

桜田 人から見た福ちゃんがどういう子か、ということだと、友だちは多くて、やさしい。マイペースなところもありますけど、そこが愛らしくもあって。ちょっとフワフワした、どこにでもいそうな女の子。ナチュラルなイメージです。宝も福のことをすごく想ってくれる心やさしい少年で、2人は身近にいるカップルのように思えます。

――2人が手を繋いで歩いたり、どら焼きをふたつに分けて食べるシーンも、自然に空気感が生まれたんですか?

桜田 脚本にも「半分コ」に割ることは書かれていて、後々に大事な意味が出てきます。でも、2人の空気感に関しては、現場で自分たちの心が動くままに歩いたり話したりして、テンポ感を作り上げています。

20代になった自分が反映されるように

――ひよりさんは小さい頃からのキャリアがありつつ、去年から映画、ドラマと主演級が続いています。階段を駆け上がっているような感覚もありますか?

桜田 ありがたいことに素敵な作品に出演させていただくことが多くて、演じ甲斐がありますし、心から楽しんでお芝居ができています。今年22歳になりますし、役の幅が広がっていくと思うので、これからも挑戦していきたいと思います。

――昔から演技力を高く評価されていましたが、ここに来て、また成長のギアが上がったのを自分で感じたりは?

桜田 いろいろな役を演じせていただいて、いろいろな方と出会って、お話もうかがって。お芝居をしていく中で、吸収するものがたくさんあります。自分の向上心もどんどん上がっているので、毎日がとても刺激的です。

――たとえば以前は難しく感じていたことが、できるようになったりも?

桜田 簡単にできるようになったことはなくて、毎回きちんと役に向き合っていますけど、向き合った先での自分の選択や考え方の幅は広がってきていると思います。20代になってからの自分が反映されている気がします。

現場で言葉にできない感情が生まれたり

――『あたりのキッチン!』では極度の人見知り、『バジーノイズ』では破天荒な役だったり、本当にいろいろな役を演じてますが、最近の何かの作品で新しい扉が開いたりもしました?

桜田 毎回新たな発見があるので、どの作品ということはありません。今回の現場でもそうですし、言葉で言い表せない新しい感情が生まれたり、「こんなことを言われたら、こういう気持ちになるんだ」とか、日々いろいろなことを吸収できている気がします。自分だけでなく福ちゃんとも繋がって、役と一緒に成長できています。

――ドラマの公式サイトで、ひよりさんは「Z世代から絶大な支持を得る」と紹介されています。インスタのフォロワー数も73万人になって、支持されている感触もあります?

桜田 配信で『あの子の子ども』を若い方が観てくださっている実感はあります。私のSNSにも「観ました」とコメントをいただいていて、作品が届いているのはすごく嬉しいです。

頭に氷のうを乗せて撮影してます

――今年の夏も暑くなって、撮影現場は体的には大変では?

桜田 暑いですね~。みんなで頭に氷のうを乗せて撮影しています。室内では可能な限りギリギリまで、エアコンをつけてもらって、本番は音の関係で止めないといけないんですけど、たくさんサポートしていただいています。

――自分で夏バテ対策にしていることもありますか?

桜田 ごはんはバランス良く食べるようにしています。毎日三食しっかり食べて、水分補給も心掛けて。食欲はあまり落ちません(笑)。

――夏ならではのお楽しみもありますか?

桜田 スイカを食べることです。大きめのを買ってきて、自分で切って食べています。毎年、夏の思い出はスイカです(笑)。

感情の掛け合いを楽しみにしてください

――そんな中で、ドラマは後半に入っていきます。

桜田 いろいろな人の視点が入ってきたり、福ちゃんと宝が進んでいく道を確立していったり。自分たちの考えを人に伝えられるようになって、2人が成長しながら、どんどん目が離せない展開になっていきます。私たちもひとつひとつていねいに作り上げているので、少しでも多くの方に観ていただけたらと思っています。

――福の大きな見せ場もあるんでしょうね。

桜田 たぶん私が言わなくても、視聴者の方々が火曜日を待ち遠しくなるくらい、盛り上がっていきます。ヤマ場というより、毎回大事なシーンがあって、みんなで大切に時間を掛けて撮っています。人と人の感情の掛け合いを楽しみにしてください。

研音提供
研音提供

Profile

桜田ひより(さくらだ・ひより)

2002年12月19日生まれ、千葉県出身。幼少期から役者として活動し、2014年にドラマ『明日、ママがいない』で注目される。主な出演作はドラマ『卒業タイムリミット』、『彼女、お借りします』、『silent』、『あたりのキッチン!』、映画『咲-Saki-阿知賀編 episode of side-A』、『祈りの幕が下りる時』、『ホットギミック ガールミーツボーイ』、『交換ウソ日記』、『バジーノイズ』など。ドラマ『あの子の子ども』(カンテレ・フジテレビ系)に出演中。8月9日公開の映画『ブルーピリオド』に出演。

火ドラ★イレブン『あの子の子ども』

カンテレ・フジテレビ系 火曜23:00~

公式HP

(C)カンテレ
(C)カンテレ

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

斉藤貴志の最近の記事