身近な山林に普通に生えている超美味しいヤマドリタケモドキ きのこ狩りの方法・下処理と保存方法・料理例
ヤマドリタケモドキはイグチ科のキノコです。
ヨーロッパで珍重されるヤマドリタケの近縁種であり、美味しい食用キノコとしてキノコ狩りファンの間では言わずと知れたキノコです。
名前に付いたモドキは漢字で書くと擬(匹敵するほど良く似ていると言う意味)のことでヨーロッパのヤマドリタケにとても良く似ていることから来ています。
ヤマドリタケモドキは人里近くの山林や道端などでも見かける比較的一般的なキノコです。
大型のキノコですので少ない数でも採れればそれなりの量になります。
ヤマドリタケモドキの特徴と取る時の注意点
柄の表面には明瞭な網目模様があります。
柄にはツバはなく、柄は寸胴型もしくは中央や下部がやや膨らんだ太鼓腹型でとても太く、柄の根元にツボはありません。 (*注:ツバ、ツボ等のキノコ各部の呼び方はこの記事の最後の方でまとめて解説しています)
傘の裏側には一般的なキノコに有るヒダは見られず、代わりに管状のものが密集している管孔になっていて、この部分のことを管孔部と言います。
管孔はキノコが若いうちは平面のようになっていますが、ある程度成長すると一つ一つの管孔の小さな穴が確認できるようになります。
下の写真はまだ若いヤマドリタケモドキの管孔部です。
傘の裏側に管孔部がある事はイグチ科のキノコの多くに見られる一般的な特徴です。
傘の上面に滑りはなく、色は明るい茶褐色である事が多いが、傘の色は生育環境や個体差によりかなり変化に富む事が多いので注意を要します。
例えば下記の写真は全てヤマドリタケモドキの傘の表面です。
とにかく野生のキノコは栽培品と違って環境の変化の影響を受けやすく、生育環境の変化が色や形に影響を及ぼすことが多く、時には同じ種類のキノコでも全く違うものに見えることもありますので注意が必要です。
これはキノコ全般に言えることですので、例えば他の種類のキノコが生育環境の影響でヤマドリダケモドキに似てしまう事だって考えられます。
そう言った意味からもキノコ狩りでは正確な種類の判定(これを種の同定と言います)が最重要になります。
種の同定は、ひとつの特徴によらずにキノコの各部の特徴を総合的に見て判定する事が大切です。
キノコ狩りでキノコを取る時は、地上部だけを折り取るのではなく、根本の地中に埋もれた部分まで取っておけば、持ち帰った後に種の同定をする時に非常に役立ちます。
取った後の下処理
野生のキノコは栽培品と違い日持ちしませんので、持ち帰ったらすぐに下処理をする必要があります。
まずは生えていた根元の部分を切り落とします。
この時に切断面を観察してみると、中に虫が入っている、もしくは入っていた形跡が認められる事も多いです。
入っている虫の種類はいろいろですが、多くの場合キノコバエの幼虫である事が多いです。
キノコに入る虫自体に害はありませんが、キノコを食用にするならあまり気持ちの良いものでもありませんので、虫が入っている部分は切り捨てます。
虫食いの跡が無くなるまで少しづつ切り捨てていくのが良いでしょう。
大抵のキノコは柄の根本付近に虫食い跡があり、傘に近くなるにつれて虫は居なくなりますが、季節や気候によってはキノコ全体が虫たちのコンドミニアムと化している事もあります。
その時は残念ですが潔く諦めましょう。
虫食いの部分を削除できたらキノコを洗います。
シンクに水を張ってその中で優しく洗うのが良いでしょう。
洗い終えたら水気を良く切りましょう。
この時に、若いヤマドリダケモドキの管孔部は水分がほとんど浸透しませんのでそのまま食用に使えますが、やや成長した個体では管孔部が水分を含んだスポンジのようになっている筈です。
水分を含んでスポンジのようになっている管孔部は痛みやすく食感も良くないので、水洗い直後のこの段階で取り除きます。
成長した個体の管孔部は手で簡単に剥がし取ることができます。
管孔部を剥がし取ると上の写真のような状態になります。
これで食材として使える状態になりました。
使う料理に合わせて適当に切って使います。
調理例として柄の部分だけを使って簡単に出来る料理を紹介します。
ヤマドリダケモドキの柄の部分を輪切りにしてたっぷりのバターでソテーしただけの料理です。
柄の食感と深い味わいがバターのコクと相まってボリューム有る秋の逸品だと思います。
たくさん取れた時の保存方法
たくさん取れた時は保存したいものです。
保存したい期間に合わせて数種類の保存方法の中から最適な方法を選びます。
2〜3日の保存なら冷蔵保存、数週間から数ヶ月なら冷凍保存が可能です。
冷蔵保存なら適当な蓋付き容器を、冷凍保存ならチャック付きの密封袋を用意します。
まずは数日間の冷蔵保存なら唐揚げなどの惣菜が入っているような蓋付きの容器にキッチンペーパーを敷いて使います。
蓋をして冷蔵庫で保管すれば数日間は鮮度を保った状態で保存できます。
数週間から数ヶ月の保存なら冷凍保存します。
まずは使う料理を想定して適当な状態に切っておきます。
一回分づつに小分けしてからチャック付きの保存袋に入れて冷凍保存します。
この状態で冷凍すれば最長で1年間は保存ができます。
冷凍保存したキノコを調理に使う時は解凍せずに凍ったまま加熱調理すると出来上がりが生のキノコを調理した時とやや同じ状態に仕上がります。
更に長期保存を望むなら乾燥保存も可能です。
乾燥保存する場合には、まず傘と柄を切り離します。
次にこれを出来るだけ薄く切ってから網などに並べて天日干しします。
天気が良ければ2〜3日の天日干しで完全に乾燥します。
但し、厚切りにすると乾燥前に腐ってしまいますので、とにかく出来るだけ薄切りにする事が乾燥保存における乾燥工程での大切なポイントです。
乾燥したら適当な分量をチャック付きの保存袋に入れて密封します。
この時に中に乾燥剤を入れたくなるものですが、ヤマドリダケモドキは乾燥保存中に香りが増していくと言う特徴があります。
乾燥剤を入れるとこの香りを乾燥剤が取り去ってしまう可能性がありますので乾燥剤の封入はお勧め致しません。
保存中のカビや湿気を防ぐには袋の中の空気を出来るだけ抜く、袋の中に脱酸素剤を入れておく、保存袋を2重にして使う、等の工夫で数年間の保存にも耐えることができます。
こうして数年間乾燥保存したヤマドリダケモドキは香りが強まり生の状態とは全く違う食材に生まれ変わります。
料理に使う時には水で戻してから使います。
戻した時に出る黄金色の汁も一緒に料理に使います。
乾燥品のヤマドリダケモドキの定番料理はやはりシチュー等の煮物や汁物でしょうか。
1年以上乾燥保存したヤマドリタケモドキは本場ヨーロッパ産のヤマドリタケの乾燥品「乾燥ポルチーニ」にも負けず劣らずの美味しい食材になります。
ヤマドリタケモドキを取る時の注意点
昔は毒キノコが無いと言われたイグチ科のキノコにも数は少ないですが毒キノコが存在する事が知られています。
キノコ狩りに於いては正確な同定(種を見極める事を どうてい と言います)が必要なのは言うまでもありません。
そう言った意味で、この記事を見ただけで、似ているキノコを見つけてヤマドリタケモドキだと決めつけるのは非常に危険です。
同定に自信が無い方は知識豊富な人と同伴のもとにキノコ狩りを楽しむ事をお勧めします。
キノコ狩りの時に役立つ知識
キノコの部位の名称(地面側から)
- 菌糸(きんし):地中に広がる糸状のもの。キノコによっては根のように見える事もある。
- 壺(つぼ):形は卵の殻状の事が多いが、壺が無い種類のキノコも多い。
- 柄(え):地表から伸びるいわゆる棒状の部分。この最上部に傘が付く種が多いが、柄自体が判然としない種もある。
- 鍔(つば):柄の中間に付く刀の鍔のような形のもの。種によって形状や付き方が異なる。鍔が無い種も多い。
- 襞(ひだ):傘の裏側に付くヒダ状の部分。ここで胞子が生産される。柄との境界線の形状は種類を判定する決め手のひとつになる。ヒダではなく次に述べる管孔になっている種もある。
- 管孔(かんこう):傘の裏側に付く極小のパイプの集合体のような形状の部分。ここで胞子が生産される。この部分は多くのキノコではヒダ状になっている。管孔はイグチ科のキノコに良く見られる特徴。
- 傘(かさ):柄の最上部に付く雨傘状の部分。円形の種が大半だが、ヘラ状、サンゴ状など傘とは言えないような変化に富む種も多い。
キノコの各部位の状態に対する呼称
- 条線(じょうせん):傘の縁にでる放射状の模様。
- 網目(あみめ):柄の表面にでる網目のような模様。
- 滑り(ぬめり):傘の表面や種によっては柄の表面が粘液状のもので覆われた状態。
- 胞子の色:胞子の色は紙の上に成熟したキノコの傘をヒダを下にして置いておくと確認できる。
これらの特徴や有無などはキノコの種の同定に役立つとても大切な情報です。
最後に野生のキノコを食べる時は十分な知識と確実な同定そして自己責任で!!
最後までご覧頂きありがとうございます!!
この記事は動画でもご視聴頂けます。
動画では各パートごとに下記の短い動画3本に分けて構成しております。
ヤマドリタケモドキの特徴と採種時の注意点↓
採取後の処理と保存の方法と調理例↓
乾燥保存の方法と調理例↓