Yahoo!ニュース

アメリカ・NWSLで現在、アシストランキング1位。年齢を重ねて輝きを増す川澄奈穂美が目指すもの(2)

松原渓スポーツジャーナリスト
リーグ屈指の得点力を誇るシアトル・レイン(C)Seattle Reign FC

 アメリカの女子プロサッカーリーグ(以下:NWSL)のシアトル・レイン(FC)で3度目のシーズンを過ごしているFW川澄奈穂美。

 NWSLには世界21カ国の選手たちが集い、世界ランク1位のアメリカ女子代表の選手をはじめ、各国代表クラスの選手が数多くプレーしている。このリーグで、川澄は2017年8月9日現在、16試合中15試合に先発。4ゴール7アシストと目覚ましい活躍を見せ、アシストランキングではリーグトップに立っている。

  

 持ち味のスピードと運動量を活かし、シアトル・レインでのびのびとプレーしている川澄は、歳を重ねるにつれて何かが失われていく感覚よりも、むしろ自らが進化している手応えを感じているという。それは、あらゆる逆境をチャンスとして捉え、プラスに転じてきた川澄のポジティブな性格と、チャレンジャー精神の賜物とも言える。

「1年前よりもサッカーが楽しいし、だからこそ、さらに上手くなれる自信があるんですよ」(川澄)

 川澄は、今年の9月に32歳になる。

 年齢の枠に縛られず、チャレンジできるアメリカらしい価値観の中で、川澄が持つ可能性はさらなる広がりをみせつつある。

アメリカ・NWSLで現在、アシストランキング1位。年齢を重ねて輝きを増す川澄奈穂美が目指すもの(1)

インタビュー@シアトル(2017年7月末)

【「ここからもっと上手くなれる」と感じています】

ーー普段、NWSLでアメリカ代表の選手と対戦していますが、アメリカ代表の強さの秘訣は何だと思いますか?

川澄:アメリカは、代表選手自身の誇りと代表選手への尊敬が半端じゃないんですよね。それは、この国の強みだと思います。あれだけ大事にされていたら、選手としてのモチベーションも高まると思いますよ。今のアメリカ代表には、ベテラン選手から若い選手までいるのですが、上手い人を集めたら、「たまたま年齢が若かったね」、とか、「あなたもう35歳を超えているんだ」という選手が揃っているイメージがありますね。若い選手が入ったから「世代交代だね」、ということではなくて、上手な選手を選んだ結果、それが若い選手であろうと、国を代表してプレーするだけあるな、と。リーグで対戦していても、「この選手は上手いな」と思う選手が選ばれている、という印象があります。それは、他の国との層の違いもあると思います。アメリカは次から次へと、良い選手がごろごろ出てきますから。

ラピノーとのホットラインは強力だ(C)Seattle Reign FC
ラピノーとのホットラインは強力だ(C)Seattle Reign FC

ーーアメリカ代表のFWラピノー選手は、シアトル・レインのチームメートで、川澄選手とは同い年ですね。

川澄:ピノ(ラピノーの愛称)は今、ノリに乗っている選手です。ただ、チーム(シアトル・レイン)では、ピノに対して、監督が試合後のコンディションを考慮して、翌週の練習量を減らしたりもするんですよ。でも、私は練習量を減らしてもらったことはないんです。ピノと同い年なのに(笑)。ただ、それもベテランだからとか若いから、という見方をしないからなので、やりやすいですし、好きですね。自分が30歳を超えている、ということを意識しているチームメートはいないと思います。日本だったら30歳をオーバーしているというだけで見方が変わる。年齢に関して気にし過ぎなのかな、と思います。

ーー確かに、それはありますね。実際、30代に入ってから、ピッチに立つ自分自身の変化をどのように感じていますか?

川澄:正直、27、28歳の頃は、プレースタイルやサッカー観がある程度、確立された中で「30代は現状維持になってしまうんじゃないかな?」と思っていたんです。それが、いざ30代に入ってみたら、積み重ねてきたものがさらに一皮むけてきて、「自分はこんなこともできるんだ!」と思える瞬間が多くなったんです。実際、1年前よりもサッカーが楽しいし、だからこそ、さらに上手くなれる自信があります。

この歳になると人の評価もあまり気にならなくなりますし、いい意味で「怖いもの知らず」になれるんですよ(笑)。

ーー試合中の表情にも、その楽しさが表れているように見えます。

川澄:新しいことにチャレンジしているからこそ、そういう(新しい)プレーが出来るようにもなるんです。新しい自分に出会える瞬間は、日本でプレーしていた頃よりもケタ違いに多いですね。サッカーを始めてこれだけの年月が経って、30歳を過ぎているのに、「本当にこんなことができるんだな」と、新鮮な気持ちになるんです。それは、このチームのスピード感やプレースタイルだからこそ、感じられることだと思いますけどね。

私が話す英語は大したことないのですが、シアトルのチームメートは自分の性格を分かってくれているし、信頼して受け入れてくれる。プレースタイルを理解して、リスペクトしてくれているな、と感じます。それはすごくありがたいことですね。

ーーアメリカでのシーズンが終わったら(10月14日がNWSLのプレーオフ、チャンピオンシップ決勝)、皇后杯の時期に、また日本でプレーする可能性もあると思います。もしそうなった場合、日本のスタイルにスムーズに切り替えることはできそうですか?

川澄:その点は、切り替えなくていいんじゃないかと思っています。積み重ねてきた今の自分のプレーをそのまま出して、日本に“逆輸入“できたらいいな、と思っているんです。

(3)【スポーツ大国、アメリカが教えてくれた「観戦」の楽しさ】   に続く

  

NWSL公式サイト 

スポーツジャーナリスト

女子サッカーの最前線で取材し、国内のWEリーグはもちろん、なでしこジャパンが出場するワールドカップやオリンピック、海外遠征などにも精力的に足を運ぶ。自身も小学校からサッカー選手としてプレーした経験を活かして執筆活動を行い、様々な媒体に寄稿している。お仕事のご依頼やお問い合わせはkeichannnel0825@gmail.comまでお願いします。

松原渓の最近の記事