トランプ米政権はシリアのアサド大統領の長男ハーフィズ氏(19歳)らを制裁対象に追加
マイク・ポンペオ米国務長官は7月29日の記者会見で、シーザー・シリア市民保護法(シーザー法)にかかるシリア制裁の一環として、「ハマー・マアッラト・ヌウマーン制裁」と銘打ち、14の個人・団体を新たに制裁対象としたと発表した。
シーザー法とは?
シーザー法は、2019年12月にドナルド・トランプ大統領によって承認され、2020年6月17日に発効した法律。シリア国民に対する犯罪を続けるシリア政府や軍の高官、これに資金、物資、技術面で支援を行う個人・団体、さらにはシリア政府と良好な関係にあるロシアとイランを支援する個人・団体に、資金凍結や渡航禁止といった制裁を科すことを定めていた。また、シリア中央銀行の資金洗浄への関与を特定し、関与が認められた場合、追加措置を講じると規定している。
発効とともに、同法と大統領令第13894号に基づき、バッシャール・アサド大統領、アスマー・アフラス大統領夫人、マーヒル・アサド准将(大統領の弟)、ブシュラー・アサド(大統領の姉)、イラン・イスラーム革命防衛隊が支援するアフガン人民兵のファーティミーユーン旅団など39の個人・団体が制裁対象に指定されていた(「米国がシリアに対する新たな制裁法「シーザー法」を発動、その内容、そして影響は?」を参照)。
ハマー・マアッラト・ヌウマーン制裁
「ハマー・マアッラト・ヌウマーン制裁」はシーザー法に基づく制裁の第2弾となる。
ポンペオ国務長官は、新たな制裁にハマー市とマアッラト・ヌウマーン市(イドリブ県)というシリアの都市の名をつけたことについて、7月29日に次のように述べている。
そのうえで、シリア軍を「蛮行、抑圧、腐敗のシンボル」と非難し、シリア軍第1師団司令官のズハイル・タウフィーク・アサド少将(大統領のおじ)、カラーム・アサド(ズハイル・タウフィーク・アサド少将の長男)、ハーフィズ・バッシャール・アサド(アサド大統領の長男)らを制裁対象に加えたと述べた。
新たに制裁対象となった14の個人・団体
米財務省の発表によると、新たに制裁対象となった14の個人・団体は以下の通り。
個人
- ハーフィズ・バッシャール・アサド(アサド大統領の長男)
- ズハイル・タウフィーク・アサド(第1師団司令官、少将、アサド大統領のおじ)
- カラーム・アサド(ズハイル・タウフィーク・アサドの長男)
- ワスィーム・アンワール・カッターン(ビジネスマン、ダマスカス郊外県商業会議所代表)
団体
- シリア軍第1師団
- アーダム通商投資LLC
- ジャラー・ホテル
- インターセクションLLC
- ラールーサー家具
- マーサ・プラザ・モール
- ムルージュ・シャーム投資観光グループ
- カシオン・モール
- ワスィーム・カッターンLLC
- ヤルバガー・コンプレクス
第1師団を除く団体はいずれもビジネスマンのカッターンが経営に関与する企業。
なお、米財務省の外国資産管理局(OFAC)が公開しているリスト(2020年7月30日現在)によると、シーザー法と大統領令第13894号に基づき制裁対象となっている個人・団体は以下の通り:
個人(19人)
- カラーム・アサド
- ズハイル・タウフィーク・アサド
- バッシャール・アサド
- ブシュラー・アサド
- ハーフィズ・バッシャール・アサド
- マナール・アサド
- マーヒル・アサド
- アスマー・アフラス
- ワスィーム・アンワール・カッターン
- ナーディル・カライー
- ナズィール・アフマド・ムハンマド・ジャマールッディーン
- ハーリド・ズバイディー
- ラーニヤ・ラスラーン・ダッバース
- サーミル・ダーナー
- アフマド・サービル・ハムシュー
- アムル・ムハンマド・ハムシュー
- アリー・ムハンマド・ハムシュー
- ムハンマド・ハムシュー
- ガッサーン・アリー・ビラール
団体(18団体)
- アジュニハ(ウィングス)株式会社
- アーダム通商投資LLC
- アンマール個人会社LLC
- インターセクションLLC
- カシオン・モール
- キンマ(アペックス)開発計画LLC
- ジャラー・ホテル
- シリア軍第1師団
- シリア軍第4師団
- タイミート商事LLC
- タマイユズLLC
- ファーティミーユーン旅団
- マーサ・プラザ・モール
- ムルージュ・シャーム投資観光グループ
- ヤルバガー・コンプレクス
- ラーマーク開発人道計画LLC
- ラールーサー家具
- ワスィーム・カッターンLLC
2020年6月17日に制裁対象に指定されたアーディル・アンワル・ウラビー、スマイマ・サービル・ハムシュー、アート・ハウスGmbH、ダマスカス・ブンヤーン証券会社、キャッスル・ホールディングGmbH、ダマスカス・シャーム・マネージメントLLC、エブラー・ホテル、グランド・タウン観光都市、カルイー工業、ミールザー社、ダマスカス・ラワーヒド株式会社、テレフォーカス・コンサルタントInc、テレフォーカスSAL、ズバイディー・ワ・カルイーLLCがリストから削除される一方、アリー・アブドゥッラー・アイユーブ国防大臣が追加されている。
(「シリア・アラブの春顛末記:最新シリア情勢」をもとに作成)