歳内が復活の148キロ!竹安は3か月ぶり、浜地は10か月ぶりの実戦登板《阪神ファーム》
きのう5日、阪神ファームはソフトバンクの3軍を鳴尾浜に迎えて練習試合を行いました。きょう6日も予定されていたのですが、前夜からの雨で残念ながら中止。近畿もこれで梅雨入りした模様です。そういえば昨年もソフトバンク3軍との練習試合が6月20日と21日に組まれていて、2戦目が中止でした。昨年は少し遅く6月20日頃が梅雨入りだった近畿なので、2年続けてぶつかったわけですね。
さて、5日の試合は呂彦青投手が1か月ぶりに先発し、入団後最長となる5イニングを投げました。5日と6日は1軍の交流戦(甲子園)で『台湾デー』が開催されたこともあって、鳴尾浜のスタンドにも呂投手を応援するグループが来られていたみたいですよ。
そのあと6回に投げた歳内宏明投手は、立て続けにバットをへし折るストレートを披露。最速は、2015年8月1日に1軍のヤクルト戦で出した自己MAXの150キロに迫る、148キロでした。また竹安大知投手が3月6日の教育リーグ・中日戦(鳴尾浜)以来、4か月ぶりの登板で146キロを出しています。そして2年目の浜地真澄投手も今季初登板!昨年7月27日の広島戦(由宇)以来、約10か月ぶりのマウンドで148キロの真っすぐが光りました。
久々の実戦に躍動した投手陣は、失点したり走者を出したりしたものの、充実の表情だったのが印象的です。もちろん、最後の9回を三者凡退で締めた松田遼馬投手もしかり。「前よりはよかったです」と少し笑顔も見えました。これから全員が、きっと猛アピールをしていくことでしょう。鳴尾浜だけでなく、1軍の投手陣も油断はできませんね。なお、この日は小豆畑眞也選手が今季初のスタメンマスク、そしてフル出場。反省も収穫もいっぱいだったようです。
では試合詳細です。練習試合のため公式記録ではありません。おまけにバッテリーエラーや盗塁、走塁が入り乱れ、判断しかねる部分も…。ソフトバンクの攻撃に関して、もと阪神の高波文一3軍外野守備走塁コーチに聞いたところ「田城とコラスは、うちのチームで徹底している『投球がワンバウンドになるとわかったら行く走塁』なので盗塁ではないです」とのこと。よって下記のような結果としました。ご了承ください。
《練習試合》
阪神-ソフトバンク (鳴尾浜)
ソフ 100 011 100 = 4
阪神 510 002 60X =14
※特別ルール
◆バッテリー
【神】呂-歳内-竹安-浜地-松田 / 小豆畑
【ソ】尾形(5回)-島袋(1回)-児玉(0/3回)-渡辺健(1回)-伊藤(1回) / 堀内-樋越(8回裏)
◆本塁打 神:俊介ソロ(尾形) ソ:清水ソロ(呂)
◆三塁打 ソ:三森
◆二塁打 神:板山、熊谷 ソ:森山
◆盗塁 神:森越、島田 ソ:三森、黒瀬
◆打撃 (打-安-点/振-球/盗塁/失策)
1]右:俊介 (2-2-1 / 0-0 / 0 / 0)
〃右:緒方 (3-0-0 / 0-0 / 0 / 0)
2]指:荒木 (2-1-0 / 1-0 / 0 / 0)
〃打指:岡崎 (3-1-1 / 0-0 / 0 / 0)
3]一:板山 (3-1-1 / 1-0 / 0 / 0)
〃一:小宮山 (0-0-0 / 0-2 / 0 / 0)
4]中:高山 (4-1-0 / 1-1 / 0 / 0)
5]三:今成 (1-0-0 / 0-1 / 0 / 0)
〃三:西田 (3-0-0 / 1-0 / 0 / 0)
6]二:森越 (4-2-4 / 0-1 / 1 / 1)
7]左:島田 (5-1-2 / 1-0 / 1 / 0)
8]遊:熊谷 (4-3-3 / 0-0 / 0 / 0)
9]捕:小豆畑 (4-0-1 / 0-0 / 0 / 0)
◆投手(打-振-球/失点-自責) 最速キロ
呂 5回 86球 (5-3-2 / 2-2) 140
歳内 1回 19球 (2-1-0 / 1-0) 148
竹安 1回 24球 (2-2-1 / 1-1) 146
浜地 1回 19球 (0-2-1 / 0-0) 148
松田 1回 16球 (0-2-0 / 0-0) 148
<試合経過>※敬称略
先発の呂は1回、1死を取った後に三森の三塁打と四球、4番・大本の二ゴロ併殺崩れの間に1点を失います。その裏に打線が大逆転!俊介と荒木の連打に続き、1軍から参戦の板山が右越えのタイムリー二塁打、1死後に今成の四球で満塁として森越が左前へ2点タイムリー!森越は二塁へ。島田の二ゴロ(本塁封殺)と盗塁で2死二、三塁となり、熊谷が2点タイムリー!この回5安打で5点を取りました。2回にも先頭の俊介がレフトへホームラン!
呂は2回を三者凡退に切って取り、3回は2死から連打されながらも大本を見逃し三振に。4回は四球と暴投、自身が処理した内野安打などで2死一、三塁としますが無失点でした。ところが5回、先頭の1番・清水に139キロの真っすぐをレフトへ。このホームランのあとは3人でキッチリと抑え、6対2で前半を終えます。
6回は歳内が登板。先頭の砂川に投じた145キロの真っすぐでバットが折れ、交換して戻ったら2球目の146キロでまたバットが折れて飛びました。次の134キロを打ってバットは無事で(?)三ゴロ。森山は右翼線二塁打、田城は二ゴロエラー、堀内はワンバウンドの球で三振し、田城は二塁へ。2死二、三塁で9番・松本龍の右前タイムリーを浴びて1点を失います。でも最後は自身の牽制で刺して3死。さすがにうまいですね。
6対3で迎えた6回裏、島袋に対して森越が四球を選んで二盗成功、1死後に熊谷が左前打してレフトが後ろに逸らすのを見て森越が生還!熊谷も三塁まで進みます。続く小豆畑の三ゴロをサードがバックホーム、しかし熊谷の足が速く野選となって、この回も2点を追加しました。
7回は3人目の竹安。1死から三森の右前打、次の三振で二盗を決めると、途中出場の4番・コラスのタイムリー内野安打(ピッチャー竹安がグラブに当て、方向が変わりショートも捕れず)で還します。さらに四球や盗塁、暴投などで2死二、三塁とするも、6番・森山の遊ゴロを熊谷が手を伸ばして好捕。最少失点で終了です。
8対4となった7回裏、ソフトバンク児玉から小宮山と高山が連続四球、西田は一ゴロエラーで無死満塁として、まず森越が中前タイムリーで2点。送球の間に二、三塁となって続く島田の中前タイムリーで2人とも生還。ここで投手が代わります。なおも無死一塁で熊谷が中越えのタイムリー二塁打。2死後に岡崎が中前タイムリー。この回は打者11人で3四球と4安打(すべてタイムリー)で計6点を加えて14対4としました。
8回に登板した浜地は1四球があったものの2三振を奪って無安打無失点。その裏の攻撃は三者凡退で終えた阪神ですが、9回は松田が2奪三振の三者凡退で試合終了。3時間16分と久しぶりに長めの試合で、最後はポツポツと雨粒も落ちてきました。
今後が楽しみな投手陣に監督は
では試合後の話をご紹介しましょう。矢野燿大監督には投手4人のことを聞いています。まず先発した呂投手について。「体もボールも強さが出てこないと、1軍っていうところに近づいていけないからね。前回も今回も、最初のころにあった弱さは消えつつあるかな。まずは球の力と、ボールのキレの強さも、ちょっとずつ出てきたかなと思う」
歳内投手には「久しぶりにいい球がね。シートバッティングでも一度、いいボールを見たけど。球種もそんなに多くないし、球の力が出て勝負になる。今回はいい真っすぐが多かった。アイツも這い上がってこないといけない立場にいるから、きょうみたいなのを続けてほしいと思う。また彼らにとっては結果も大事で、いい球は出ていたけど点を取られましたでは…。いい球でゼロに抑えられないとダメだし。でも、いい真っすぐがきていたからね」とのことです。
次いで浜地投手の話になり「俺は(試合で投げるところを)初めて見たよ!」と矢野監督。確かに1年近く投げていませんからね。「もともと真っすぐがいい子だと思っていた。きょうも真っすぐはいいスピンが効いて、スピードガンよりも球のキレを感じる。バッターもそう見えたし。いいものを持っているというのはブルペンでもあったからね。あとはケガの具合と、変化球やね。真っすぐを生かせる変化球。最後はスライダーで空振り三振を取っていたけど。真っすぐだけで、もちろん(藤川)球児みたいになる可能性もあるけど、長くやろうと思えば。これから武器になる変化球を見つけてほしいなと思う」
同じく久しぶりの登板だった竹安投手には「やっと投げられたなあ。2月のキャンプがスタートした時には、1軍に行ってもおかしくないような素材、能力を持っていると俺も思ったし、ずっと期待しているピッチャーだったので」と残念そうでした。でも「ちょっとここまで時間がかかりすぎた部分はあるけど、ここからでも巻き返せる。まだまだ先を見据えたところもあるピッチャーだしね。まずは投げられてよかったと思う。スタートラインにまだ立っていないくらいのとこにいるので、もっともっと上がってきてほしいね」と期待をかけています。
初の5回・呂、久々の148キロ・歳内
続いて選手のコメントです。最初は呂投手。1か月ぶりの先発で、5回を投げ5安打2失点。5イニングは「日本に来て最長ですね。これまでは3回までだったので」とのことです。試合を振り返って「立ち上がりにスライダーのコントロールができなかったけど、それが3回以降は決まり出してコントロールできたのがよかったと思います」と答えました。これがよくなかった点とよかった点の両方なのでしょう。他に「チェンジアップを誘い球にできなかった」ことも反省点のようです。
86球という数ももちろん来日最多ですが「台湾では90球から100球は先発で投げていたので。もっと投げることもできます」と涼しい顔。今後アピールしたいところは?「やっぱり先発でやっていくため、イニング数を投げられるようにしていきたい。あとはスピードとコントロールのレベルを上げたいと思います」
歳内投手は、バット2本続けて粉砕しましたねといったら「打たれていますけどね」と苦笑。148キロを始め、威力十分だった真っすぐに「徐々に戻ってきたと思います。だいぶ不安もなくなってきました。あとは細かいコントロールと変化球ですね。きょうは真っすぐでいこうと決めていたので、ほとんど真っすぐでしたが、公式戦ではカーブやスライダーなど、変化球の精度を上げていかないといけない」と、しっかり先を見ていました。
真っすぐも「球速は出ていたけど、最後の押し込みだったり、そういうところがまだ物足りない」そうです。昨年の春に右肩の痛みを覚えて1年あまり。「ここまで何とか来られた、去年ケガをして、ここまでやってこられたという感じですね。ようやく怖さが取れてきて、腕が振れるようになってきました。これから技術的なことで悩んでいけるのかなと思います」。つきまとう痛みや不安から今ようやく解放された歳内投手。バットをへし折った以外にも、相手を圧倒するような球威は健在でした。ここからですね。
今始まったシーズン・竹安&浜地
矢野監督が安芸キャンプで期待の投手と名前を挙げ、2月11日には初実戦の先発も任された竹安投手。でも3月6日の教育リーグ・中日戦で投げて以降、不運にも右手の外傷で戦列を離れていました。4か月ぶりとなった実戦マウンドを振り返って「思ったより腕は振れていました。でも、まだまだ意図したボールは投げられていなかった。精度を高められるようにしていきたい」と話しています。
ピッチングをできなかった期間は「体の使い方と下半身のトレーニングをやっていた」そうです。時間が空いて、逆によかったことはありますか?「きょう、自分としては力んだわけじゃないですけど、数字が出ていました。真っすぐもある程度、押せていたので。そこはよかったと思います」。投げたかったでしょうね、ずっと。マウンドで躍動する姿にそれが表れていました。
そして2年目を迎えた浜地投手は、いつ以来の実戦だったかと聞かれ「10か月ぶりくらいですかねえ。去年8月の広島戦で投げて以来なので」と、思い出しながら答えてくれます。調べたところ、ルーキーだった昨年7月27日の広島戦(由宇)で投げて以来で、これが公式戦初先発だったんですね。そのあと腰の痛みが出て、登板機会がありませんでした。
約10か月ぶりのマウンドで「変に力んじゃった部分はありましたね」と苦笑いしつつも「技術どうこうより、まず投げられたのが一番。腰の不安なく投げられたので、ここから技術をしっかり上げていきたいです」と明るい表情。148キロを計測していましたね。「真っすぐに関しては、1人はよかった(田城選手を空振り三振)けど、変に力んで下に行って…」と次の堀内選手への四球を反省。
「真っすぐは修正できると思ったんですが、変化球は自分の中で課題です」。どのあたりが?「僕の場合はバラつきがあって、日によって違ったり。安定感がないのかなと思います」。めざすところは?「まずは自信を持つこと。実戦から離れていたから早く感覚を取り戻して、1軍で投げないと意味がないので」
同期で同い年の才木浩人投手に追いついて、追い越していきたいですね。「ピッチャーと勝負するわけじゃないので、自分なりに頑張ります」。気にはなるでしょう?「気にならなくはないです。でも意識したところで、自分は自分のやれることしかできないので。自分のことをしっかり頑張りたいです」。これが浜地投手の“らしいところ”です。
最後に「久しぶりに緊張感がありました!」という笑顔は、20歳を迎えたばかりの青年。でも少し大人になったようにも見えます。
2人で5安打7打点・森越&熊谷
タイムリー2本で4打点の森越祐人選手。盗塁や好走塁もありました。好調の要因について聞かれ「(今は)ボールが見えている方ですね。すぐ悪くなっちゃうんで、1球1打席に集中していきたい」と答えています。よくなったのは?「姿勢を真っすぐにしたことですかね。5月の終わりくらいからです。コーチにも言われていたけど、自分がよかった時はどうだったのかなと探りながら。今はボールが見えているので、感じもいいです」
そして「振らないことにはわからないから、積極的に振っていこうと思っています」と。それもいい方向へ作用しているのでしょう。
最後は熊谷敬宥選手。左打席でタイムリー二塁打、右打席で左前打と中越え二塁打を放ち、4打数3安打3打点という内訳。しかもすべてのヒットで、送球や相手エラーの間に次の塁を陥れチャンスを広げています。試合結果を踏まえて「まだまだですけど、ようやくちゃんと振れてきたかなという感じがしています。ファウルの仕方とかも。力強さというよりは、打席の中で思ったスイングがちゃんとできているのかな」と自己分析しました。
それは慣れてきたから?「というより、やってきたことが自分の中に染み込んできたんだと思います」。1軍を経験したことについて「自分が上に行った時、何を求められているのかが明確になりました。1軍で(自分)は打撃より守備と走塁だと。そういうのを考えて、練習に取り組めるようになった。それが収穫です」と話すルーキー。
ちなみに、1軍初打席は緊張しすぎて周りの音が何も聞こえなかったそうです。でもおかげで、戻ってきたらファームの打席は「まったく緊張しなくなった!」と言っていました。ただ守備に関しては「自分が納得してやれていないので、まだまだ。打球には慣れてきましたけど」とのことです。
体も大きくなった?「そうですね。自覚ありますよ、お風呂で見ても"おっ"と思う(笑)。体重が思ったより減っていないので、筋肉量が増えているかなと。この時期いつも65キロくらいなんですけど、今は72キロをキープできています。運動量に負けないくらい食べているので。ウエートも、どれだけ疲れていてもやります!」。そう言い、大トリでウエートトレーニングへ向かいました。
<掲載写真は筆者撮影>