レアルは再び欧州の頂点に立てるのか?アンチェロッティの策略とバルベルデの覚醒。
もう一度、欧州の頂点に立つための戦いに挑んでいる。
リーガエスパニョーラで首位に立つレアル・マドリーだが、チャンピオンズリーグでも好調を維持している。セルティック、ライプツィヒ、シャフタール・ドネツクが属するグループFでトップに立ち、首位通過をかけて最終節でセルティックと対戦する。
■バルベルデの覚醒
今季序盤戦、マドリーで素晴らしい活躍を見せている選手がいる。フェデリコ・バルベルデだ。
バルベルデは17歳でマドリーの下部組織に入団。カスティージャ(Bチーム)でのプレーやレンタル移籍を経て、トップ登録を行った。だがマドリーにはカゼミロ、トニ・クロース、ルカ・モドリッチが盤石の中盤を築いていた。バルベルデには思うように出番が回ってこなかった。
そのバルベルデを、カルロ・アンチェロッティ監督は昨季途中から右ウィングにコンバートした。【4−3−3】を基本布陣としているマドリーで、バルベルデを右WGで起用する効果は大きかった。ハードワークを厭わないバルベルデが、時にMFに、時にSBに変化する。バルベルデの存在により全体バランスが整った。
それだけではなかった。アンチェロッティ監督は、バルベルデのポテンシャルを見抜いていた。「昨シーズン、バルベルデは1ゴールしかしていない。それが不思議だった。だから彼に言ったよ。『その足があって、1シーズンに10ゴールを奪えなかったら、私は監督ライセンスを返上しなければいけない』とね」とはアンチェロッティ監督の弁だ。
バルベルデは今季、公式戦17試合7得点3アシストを記録している。まさに“覚醒”の時を迎えているのだ。
■ベンゼマ不在の時
バルベルデの得点力がアップしたのは大きい。カリム・ベンゼマが抜けた穴を埋める選択肢が広がるからである。
ベンゼマは昨季、46試合に出場して44得点をマークした。先日、発表された2022年のバロンドール賞で、ついに“世界一”の称号を授かった。だが今季は負傷に悩まされており、リーガでのプレータイムは全体の58%に留まっている。
ベンゼマ不在時、アンチェロッティ監督はゼロトップを試してきた。だが昨季の後半戦のバルセロナとのクラシコ(0−4)のような過ちは犯していない。モドリッチがゼロトップに置かれることはなく、エデン・アザールやロドリゴ・ゴエスが配置されるようになった。
ただ、基本コンセプトは変わらない。全員で、ベンゼマの穴をカバーする。バルベルデ(17試合7得点3アシスト)、ロドリゴ(16試合6得点5アシスト)、ヴィニシウス・ジュニオール(18試合9得点5アシスト)が着実にゴールとアシストで勝利に貢献している。
「敗戦に怒りを覚えてはいない。フラストレーションはある。だが、この敗戦は我々に大きな影響を与えるものではない。次のチャンスがある。今シーズン、ここまでチームは良いプレーを見せている。選手たちを批判することはできない」とは今季初黒星となったライプツィヒ戦後のアンチェロッティ監督のコメントだ。
「時に、ひとつの敗戦は、10連勝するより多くのことを教えてくれる。負ける可能性は常にある。我々は望んでいたようなプレーができなかった。自陣に引いてカウンター、というプランを持つべきだった。だが試合展開はそれとは逆になってしまった」
アンチェロッティ監督が反省の弁を口にしたように、マドリーには課題がある。この夏、マンチェスター・ユナイテッドの移籍したカゼミロの穴もまだ本当の意味では埋められていない。
昨シーズン、マドリーはチャンピオンズリーグを制した。決勝トーナメントに入り、パリ・サンジェルマン、チェルシー、マンチェスター・シティ、リヴァプールを撃破した。逆転に次ぐ逆転で、その勝ち方は“奇跡”だと称された。
だが奇跡は何度も起こらない。そもそも、あれが奇跡だったのかどうかーー。その証明は、今季のCLでなされることになる。