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ノート(193) なぜ拘置所や刑務所は受刑者らのカルテを本人に開示しないのか

前田恒彦元特捜部主任検事
(写真:アフロ)

~工場編(21)

受刑154/384日目

カルテの開示は?

 この日は、刑務作業の合間に工場単位でグラウンドまで移動し、順番にレントゲン車に乗り込んで胸部のエックス線検査を受けた。法令に基づく健康診断の一環だ。

 もっとも、たとえ検査の結果が出ても、いちいち本人にその内容を伝えることはないという。これはどう考えてもおかしな話だった。健康状態に関する問題であるうえ、法令でも自費で外部の医師の診察や治療を受けられることになっているからだ。

 とはいえ、拘置所や刑務所に対し、本人がカルテなどの開示を求めても、「行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律」に基づき、一貫して「開示しない」という立場を堅持してきた。刑事事件に関する裁判や刑の執行に関する個人情報は開示の対象外だという除外規定があるからだ。

 しかし、そもそもこの規定は、就職の際などに個人の前科情報や服役情報を本人を介して第三者が得ることで、本人の社会復帰が阻害されることを防ごうとしたものだ。それでも、拘置所や刑務所は「開示しない」という方針を曲げなかった。

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元特捜部主任検事

1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。

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