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ウルトラマンはいつ変身している? 全39話を見直すと「ムチャな変身」が多くてびっくり!

柳田理科雄空想科学研究所主任研究員
イラスト/近藤ゆたか

こんにちは、空想科学研究所の柳田理科雄です。

マンガやアニメ、特撮番組などを、空想科学の視点から、楽しく考察しています。

さて、今回の研究レポートは……。

ウルトラマンの変身は一瞬だ。

科学特捜隊のハヤタ隊員がβ(ベータ)カプセルを掲げ、ボタンを押すとフラッシュビームがまぶしく輝き、光の中からウルトラマンが現れる!

劇中のシーンを計測すると、ボタンを押してからウルトラマン登場まで、たったの2秒!

これほど短い時間で済むせいか、ハヤタ隊員はかなりムチャな変身をしていた印象がある。

筆者の印象に深く残っているのは、第21話「噴煙突破せよ」という話で、この回には毒ガス怪獣ケムラーが登場した。

ケムラーは、サンショウウオが甲羅を背負ったような怪獣で、四つ足で歩く。その体を覆う甲羅は、怪獣図鑑によれば、ダイヤモンドの10倍も硬い。

そんなケムラーに対して、ハヤタ隊員は攻撃機ジェットビートルに乗って、背後から低空飛行で接近。

すると、それまで腹這いになっていたケムラーが、いきなり後ろ脚で立ち上がった。

ビートルはダイヤモンドの10倍も硬い甲羅に激突して、ドバーンと大爆発!

ハヤタは落下しながら空中でウルトラマンに変身するのだった……!

◆巨大化で地面に激突!?

この変身の仕方は、モーレツに危ない。

ケムラーの体長は35mなので、その背中にぶつかったということは、高度は30mほどだろう。

その高度からだと、地面に落ちるまで、たった2.47秒しかない!

しかも、ハヤタは落下1秒後に変身を始めたから、残り時間は1.47秒だ。

前述のとおり、ウルトラマンの変身時間を2秒と考えると、変身完了の0.53秒前に地面に激突してしまう……!?

これ、実際にはもっと早いと思われる。

なぜなら、ハヤタ隊員は落下しながら変身&巨大化を開始したから。

体の重心を中心に巨大化するとしたら、ウルトラマンは自由落下+巨大化でぐんぐん地面に近づくだろう。

元の身長(ハヤタのとき)が1m80cmだとしたら、巨大化途中のウルトラマンの頭が地面にゴン!と激突するのは、変身完了の1秒前!

その時点での身長は、20m90cm。

ウルトラマンは最終的には40mになるはずだから、半分ちょっとでしかない。その後もムクムクと大きくなるのか……!?

イラスト/近藤ゆたか
イラスト/近藤ゆたか

――というのが空想科学的に考えられる展開なのだが、劇中のウルトラマンは頭をぶつけた様子もなく、元気にケムラーと戦い始めた。

すごい反射神経の持ち主で、体へのダメージを最小限にしたのだと思われる。

◆バルタン星人との戦いのときは?

他のエピソードではどうだったのか?

そこで筆者は『ウルトラマン』全39話を見直してみたのだが……、ぬわっ、危ない変身がいっぱいだ!

まずビックリしたのは、第2話「侵略者を撃て」である。

バルタン星人が登場するこの有名な回で、ビルの屋上にいたハヤタ隊員は、巨大化したバルタン星人に殴られて吹っ飛ばされ、βカプセルを落としてしまう。

幸い、カプセルは下の階の窓に引っかかっていたが、屋上から手を伸ばして届く距離ではない。

そこでハヤタはどうしたか?

なんと、頭を下にしてビルから飛び降りる。

そして、落ちる途中でβカプセルをキャッチして変身した!

ハヤタがいた屋上は、バルタン星人(身長50m)と比べると、せいぜい20mほどの高さしかなかった。

前述の対ケムラー戦よりも条件が悪い!

◆オドロキの変身が続々!

ハヤタ隊員は、他にもいろいろとオドロキの行為をやっている。

第11話「宇宙から来た暴れん坊」では、怪獣ギャンゴが戦意を喪失したフリをしてしゃがみこんでいると、ハヤタ隊員の乗ったビートルが低空飛行で近づいた。

ところが、急に立ち上がったギャンゴに叩き落とされる!

前述のケムラーと同じパターンだが、このときはハヤタ隊員はビートルに乗ったまま海に突っ込み、海中で変身。

ウルトラマンが海から突然現れたため、驚いたギャンゴは転倒!という意外な効果を生んでいた。

第14話「真珠貝防衛指令」でも、怪獣ガマクジラにビートルを叩き落とされ、このときは海辺の岩場で失神した。

フジ隊員に起こされたのは6分51秒後、変身したのは通算8分23秒後であった。

変わった変身をしたのは第15話「恐怖の宇宙線」で、川のなかにいる子どもたちに「そこをどけ! どくんだ!」と注意を促していたら、自分が川に落ちて、水中で変身した!

第16話「科特隊宇宙へ」では、不時着したビートルのなかで変身し、また、第24話「海底科学基地」では潜水艇(特殊潜航艇S25号)のなかで変身していた。

「そんなところで巨大化してビートルや潜水艇は壊れないの!?」と心配していたのだが、どちらも無事だったので、不思議ながらもホッとしていると、第31話「来たのは誰だ」では、ビルのなかで変身し、ウルトラマンはビルを突き破って出現していた!

いろいろナゾである。

いちばん「それはマズいのでは!?」と思ったのは、第35話「怪獣墓場」。

なんと、自分が操縦して飛んでいるビートルのなかで変身、ウルトラマンになって、怪獣シーボーズと戦い始めた!

操縦者がいなくなったビートルは、その後どうなったのだろう……。

◆なかなか普通に変身できない

別の意味で驚いたのは、第18話「遊星から来た兄弟」だ。

この回ではザラブ星人が、ハヤタ隊員の正体がウルトラマンであることを見抜く。

ハヤタを捕えて縛りつけ、βカプセルを奪おうとその体を探るが、カプセルがない。

ザラブ星人は「キミはβカプセルを持っていない! どこへやったのだ!?」と驚くが、縛られている以上ハヤタはどうせウルトラマンに変身できない、と安心し、にせウルトラマンに姿を変えて、街を壊し始める。

βカプセルはいったいにどこに……?

不思議に思って見ていると、準隊員のホシノ少年が救助に現れて、βカプセルをハヤタに渡したではないか。

ホシノくんは「ハヤタさんが忘れていったから、持ってきてあげたんだよ」。

ええっ、忘れていった!?

そんな大事なものを、普通に忘れて出動したりするのか、ハヤタ隊員!?

ムチャな変身とは関係ないが、意外すぎてビックリのシーンであった。

『ウルトラマン』全39話で、変身は全部で41回ある。

そのなかで普通に変身したのは18回であり、実に23回はいろいろと危険な状況で変身している。危険変身率は56・1%!

半分以上はムチャな変身をしているわけで、ハヤタ隊員も大変である。

いや、もちろん、そんな大変な状況で変身するからオモシロイんですけどね。

空想科学研究所主任研究員

鹿児島県種子島生まれ。東京大学中退。アニメやマンガや昔話などの世界を科学的に検証する「空想科学研究所」の主任研究員。これまでの検証事例は1000を超える。主な著作に『空想科学読本』『ジュニア空想科学読本』『ポケモン空想科学読本』などのシリーズがある。2007年に始めた、全国の学校図書館向け「空想科学 図書館通信」の週1無料配信は、現在も継続中。YouTube「KUSOLAB」でも積極的に情報発信し、また明治大学理工学部の兼任講師も務める。2023年9月から、教育プラットフォーム「スコラボ」において、アニメやゲームを題材に理科の知識と思考を学ぶオンライン授業「空想科学教室」を開催。

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