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春休み中の子どものゲーム・スマホ依存、関係の悪循環化を防ぐために親がとりたいコミュニケーション方法

森山沙耶ネット・ゲーム依存予防回復支援MIRA-i 臨床心理士
(写真:milatas/イメージマート)

もうすぐ子どもの春休みがやってきます。例年であれば、家族と一緒に行楽地に出かけたり、友達と集まって遊んだりと、アクティブに活動したい時期かもしれません。しかし現在の状況では、引き続き在宅で過ごす時間が多くなることでしょう。

そこで気になるのは、やはり子どものネット・ゲーム利用時間の大幅増加、それに伴う依存の問題です。

長時間利用の習慣化リスクとストレスリスク

国立病院機構久里浜医療センターが2019年に行った「ネット・ゲーム使用と生活習慣に関するアンケート調査結果」によると、やはり平日よりも休日の方がゲーム時間が長くなる傾向にあるようです。

平日と休日のゲーム利用時間(久里浜医療センター「ネット・ゲーム使用と生活習慣に関するアンケート調査結果」より筆者作成)
平日と休日のゲーム利用時間(久里浜医療センター「ネット・ゲーム使用と生活習慣に関するアンケート調査結果」より筆者作成)

春休みのような長期休暇によって長時間の利用が習慣化してしまうと、もとに戻すのは大人でも難しいものです。

さらにコロナ禍において、子どもが大きなストレスを抱えていることが指摘されています。

新型コロナウイルスの流行が子どもたちの心に与える影響について、国立成育医療研究センターが2020年11月〜12月に実施した「コロナ×こどもアンケート」第4回調査によると、小学4~6年生の15%、中学生の24%、高校生の30%に、「中等度以上のうつ症状」があったとのことです。

うつ状態など不快な気分から逃れるためにゲームやスマホを使用することは、依存を助長させる可能性もあります。子どもが過度にゲームやスマホにのめり込んでいる場合、その背景としてメンタルヘルスにも目を向け、子どもが抱えるストレスそのものに対処する必要があるかもしれません。

ただ、ゲームやスマホの利用時間が増えているからと注意をしても、子どもは反発し、結局お互いに険悪な雰囲気になってしまっただけ、という場合も多いでしょう。そこで今回は、家族関係を良好に保ちながら、上手く子どもと関わっていくための工夫をご紹介します。

子どもと保護者の「関係の悪循環」を防ぐために

子どもがスマホやゲームに夢中になってしまい、約束の時間を超えてもやり続けたり、もっとやりたいと駄々をこねたりなど困った行動が起こってくると、多くの保護者は叱責や注意を与えて行動を制限しようとするのではないでしょうか。

保護者自身の心配や不安、苛立ちから、子どもに対して厳しく接してしまうことは誰しもあると思います。しかし、そればかりになると、温かみのある関わりが失われ、子どもがさらに反発したり、家族で言い争いになったりしてしまい、下記の図のような関係の悪循環に陥ってしまう場合があります。

家族関係が悪循環に陥ったときのイメージ図(「こうすればうまくいく発達障害のペアレント・トレーニング実践マニュアル」をもとに筆者作成)
家族関係が悪循環に陥ったときのイメージ図(「こうすればうまくいく発達障害のペアレント・トレーニング実践マニュアル」をもとに筆者作成)

では、関係の悪循環に至るのを防ぐ、または悪循環から抜け出すためには、具体的にどうすればよいのでしょうか。保護者ができることは主に2つあります。

1つは、否定的な言葉かけや注目を減らすことです。

否定的な言葉かけとは具体的に、注意する、叱る、怒鳴る、ため息をつくなどです。

ゲーム中に言葉遣いが荒くなっていたり、もっとやりたいと駄々をこねていたりする場合は、その場で「だめだよ!」と怒るのではなく、一旦その行動が収まるのを待ちましょう。子どもがゲームをしておらず落ち着いているタイミングで、ゲームで感情的になったときに別の言い方ができないか、駄々をこねるのではなくどのように自分の気持ちを伝えると良いのかを話し合えるとよいと思います。

ゲームをやめる時間を知らせたいときは「○時でやめなさい」と表現するより、「○時になるまでやってもいいよ」や「○時になったら、みんなでご飯を食べよう」という表現の方が、子どもも比較的肯定的に受けとることができます。

また、保護者自身も落ち着いて、子どもにとってわかりやすい具体的な指示を出すようにするとより伝わりやすくなります。

もう一つは、肯定的な言葉かけや注目を増やすことです。

肯定的な言葉かけとは、例えば、褒める、認める、笑顔をかえす、うなずくなどです。

人は誰でも注目されたい、認められたい生き物です。逆に、何も反応されなかったり、当たり前であるかのように努力を無視されたりすると、悲しくなったり、腹が立ったりします。これは大人も子どもも同じです。

まずは、どんな些細なことでも構わないので、子どもの増やしたい・好ましい行動にはどんなものがあるのか考えてみてください。例えば、約束の時間にゲームを自分でやめる、宿題に取り掛かる、スマホ以外の遊びをしている、家のお手伝いをするなどが挙げられることでしょう。そして、子どもにそれらの行動が見られたら、即座に肯定的な言葉かけをするようにしてください。

保護者が子どもに対して肯定的に関わることを続けていくと、その行動が再び起こりやすくなり、同時に「自分は認められている」と感じるようになります。親に認められていると感じ始めると、少々気が向かないようなことをお願いされても、少しずつ応じるようになってくれるはずです。

日頃からのコミュニケーションも大切に

上記のようなゲームやスマホを巡るコミュニケーションだけでなく、日頃からのちょっとしたコミュニケーションもぜひ大切にしてください。挨拶や感謝を伝える、子どもの考えや気持ちをまず聞いてあげるなどを意識して取り入れていくことで、コミュニケーションは随分と円滑になります。

また、筆者が行っているカウンセリングでは、保護者が子どものスマホやゲームへの関心や理解を示すことで、「どうせわかってくれない」という子どもの気持ちが和らぎ、コミュニケーションが取りやすくなったという事例も多くあります。

今回お伝えしたことを最初から100%実践するのは難しいかもしれません。まずはできそうなことから、スモールステップで取り入れていきましょう。

コロナ禍の春休み、家族で過ごす時間が増える今こそ、家族でじっくりとコミュニケーションをとるチャンスだと捉えてみてください。

ネット・ゲーム依存予防回復支援MIRA-i 臨床心理士

臨床心理士、公認心理師、社会福祉士。一般社団法人日本デジタルウェルビーイング協会代表理事。東京学芸大学大学院教育学研究科修了後、家庭裁判所調査官を経て、病院・福祉施設にて臨床心理士として勤務。2019年 独立行政法人国立病院機構 久里浜医療センターにて「インターネット/ゲーム依存の診断・治療等に関する研修(医療関係者向け)」を修了後、同年 ネット・ゲーム依存予防回復支援MIRA-i(ミライ)を立ち上げ。現在はネット・ゲーム依存専門のカウンセリングや予防啓発のための講演・セミナー活動を行う。2021年から特定非営利活動法人ASK認定 依存症予防教育アドバイザー。

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