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コロナ禍での資金難に「何か行動したい」 伝統校・早稲田大学相撲部のいま

飯塚さきスポーツライター/相撲ライター
東伏見の道場での稽古の様子(写真はすべて筆者撮影)

コロナの影響で資金が激減

学生横綱を4人輩出した実績をもつ早稲田大学相撲部は、創部104年を誇る伝統校だ。昨年11月に行われた全国学生選手権(インカレ)では、1971年以来49年ぶりのベスト8に進出。快挙を成し遂げた。

部を率いる室伏渉監督は、選手たちの自主性を重んじる指導を大切にしている。

「こちらがなんでも教えてあげることは簡単です。そうではなくて、選手に自ら考えさせること。それによって、個々の意識が変わってきます」

自らもまわしを締めて指導に当たる室伏監督
自らもまわしを締めて指導に当たる室伏監督

しかし、問題は世界を襲った新型コロナウイルスの猛威だった。2020年に入ってから、稽古も合宿もままならない日々が続いた。今年に入ってようやく開催された東日本選手権では、団体戦ベスト8の成績でAクラスに残ることができたが、部の活動を脅かす要素がひとつあった。資金面だ。

同部には、OB会に加え、独自の支援会「サポーターズ俱楽部」が存在する。コロナ以前は、そういった支援者を招いた稽古見学会やちゃんこ会を開くことで、活動資金をまかなっていた。しかし、コロナの影響で資金調達が大幅に減少。部は窮地に立たされていた。

クラウドファンディングで150万円達成!

そこで乗り出したのが、クラウドファンディングを駆使した資金集めだった。

「ちゃんこを作ることで部を支えていたのに、それができなくなったいま、自分は部にどう貢献できているんだろうかと悩み、何か行動しないとと思ったのがきっかけでした」

そう語るのは、マネジャーであり主務の吉村千華さん(3年)。高校までバスケットボール1本だったが、幼い頃から好きだった相撲に関わりたいと、大学入学を機に相撲部のマネジャーになった。

主務の吉村千華さん(右)と、2年生のマネジャー石田萌果さん
主務の吉村千華さん(右)と、2年生のマネジャー石田萌果さん

大学からの勧めもあって乗り出したクラウドファンディング。吉村さんを中心に、積極的に告知を行った結果、サポーターズ俱楽部のメンバーはもちろん、まったく面識のないファンなどからも支援があり、目標だった150万円を見事達成した。現在までで、実に140名の支援者が名乗りを上げている。

今年9月、学生個人体重別選手権115kg未満級で優勝した栗田裕有選手(2年生)は、このクラウドファンディングについて次のように話す。

「僕らの代はまだちゃんこ会などを経験していないので、クラウドファンディングに寄せられた応援メッセージを読んで、ようやく皆さんからの応援を肌で感じることができました。重圧はなく、むしろより一層気持ちが高まりました」

部は、新たに300万円達成を目標に掲げ、月末まで寄付を募っている。

部の有望株・栗田裕有選手(2年生)
部の有望株・栗田裕有選手(2年生)

室伏監督は、「多くの人に応援してもらっているのを感じたことで、やはり選手たちの意識も変わってきました。今後はより、いい意味でのプライドをもって取り組んでくれることを願っています」と、期待を寄せる。

次なる目標は「59年ぶりの全国ベスト4」。2022年は、いまよりさらに一回り大きくなった選手たちに会えることだろう。全員が一丸となって、”早稲田の栄光”を取り戻しにいく。

スポーツライター/相撲ライター

1989(平成元)年生まれ、さいたま市出身。早稲田大学国際教養学部卒業。ベースボール・マガジン社に勤務後、2018年に独立。フリーのスポーツライター・相撲ライターとして『相撲』(同社)、『Number Web』(文藝春秋)などで執筆中。2019年ラグビーワールドカップでは、アメリカ代表チーム通訳として1カ月間帯同した。著書に『日本で力士になるということ 外国出身力士の魂』、構成・インタビューを担当した横綱・照ノ富士の著書『奈落の底から見上げた明日』。

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