英中銀、独自の新仮想通貨を年内導入へ(その1)
英紙デイリー・テレグラフは昨年12月30日付で、イングランド銀行(英中銀、BOE)がインターネット上で取引が可能な仮想通貨ビットコインと似たBOE独自の仮想通貨を早ければ年内にも創設するというスクープ記事を報じた。その狙いについて、同紙は「BOE内に設置された調査チームが英ポンドとリンクした仮想通貨の導入の可能性について調査している」とし、「もし導入のゴーサインが出れば、BOEが発行する仮想通貨(デジタル通貨)がロンドンの金融街(シティ)の大手銀行の従来の銀行業務を革新的に変革させることになる」と伝えた。
この革新的な変革とは何を意味するのか。同紙はBOEの本来の目的は英ポンドの裏付けがある新デジタル通貨を世界各国の中央銀行との資金決済に利用することだが、「BOEの新しいデジタル通貨は、当初は中銀間の決済に使用が限定されても遅かれ早かれ一般社会に広がり英国市民の預金をデジタル化してBOEに預けることを認めるだろう」という。
例えば、数十万ポンド、あるいは100万ポンド(約1億5000万円)以上もの高額な住宅購入の支払いもBOEのデジタル通貨を使えば10億分の1秒という超高速でどんなに多額でも資金決済を完了してしまう。これでは送金完了までに最短でも1日以上かかるリテールバンキング(個人や中小企業を対象とした小口金融)は用無しとなる。これは銀行にとってBOEが商売敵になるという怖い話だ。BOEの調査チームは2015年2月に設置され、昨年夏にはビットコインなどの仮想通貨と同じブロックチェーン(公開の分散台帳)技術を使ってデジタル決済の技術試験に成功しており、年内に調査結果を出す予定だ。すでにBOEのマーク・カーニー総裁は昨年12月に一部の中銀とデジタル通貨を使った決済について協議しており今年も引き続き協議を行う方向で話が進んでいる。
その一方で、最近、国際通貨間決済大手の米リップルが国際送金に使っている仮想通貨リップル(XRP)の注目度が一段と高まってきた。世界主要国の大手金融機関が国際送金にリップルを使用しようとする動きが加速し始めた。リップルは昨年10月、全世界で100社超の金融機関がXRPを使ってリップルの国際通貨間決済システムを利用している、と発表した。この中には三菱東京UFJ銀行やみずほ銀行、仏金融大手クレディ・アグリコル、スウェーデン金融大手SEB銀行が含まれる。また、同11月には米クレジットカード大手アメリカン・エキスプレス<AXP>の国際商業送金サービス子会社FXインターナショナル・ペイメンツやスペイン金融大手サンタンデールも英米間の国際送金に利用すると発表している。
現在は、日本と韓国の銀行がリップルを使った送金試験を行っているほか、世界的な国際商業送金サービス大手3-5社が今年からXRPを送金(支払い)に利用する計画があるという。銀行がXRPに関心を持つのは、その送金決済の群を抜く速さだ。ビットコインは決済完了までに1時間、イーサリアムは2分超だが、XRPはわずか4秒と格段に速い。
BOEにとって課題はビットコインと全く同じでは相場変動が激しいためデジタル決済には不向きなことだ。ビットコインの昨年1年間の上昇率は1500%。XRPの市場の時価総額はビットコインに次いで2位だが、その成長スピードは昨年で3万5000%となっている。しかし、テレグラフ紙は、「BOEは新通貨の相場変動をビットコインより抑えるために、新通貨を英ポンドとペッグ(固定相場)させ、BOEが通貨の裏付けを与えることになる」と予想する。(続く)