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体重超過で勝利のガルシア 物議を醸す勝利にSNSで賛否両論

木村悠元ボクシング世界チャンピオン
(写真:REX/アフロ)

20日(日本時間21日)、アメリカでWBC世界スーパーライト級タイトルマッチが行われ、同級王者のデビン・ヘイニー(25=米国)と、挑戦者のライアン・ガルシア(25=米国)が対戦した。

体重超過が話題に

試合前日の公開計量。挑戦者のガルシアが約1.4kgもの体重超過を犯したため、一時は対戦も危ぶまれたが、勝利しても王座を獲得できないという措置が取られ、予定通り試合は行われた。

初回から体格の優るガルシアがヘイニーに襲いかかり、7ラウンドには得意の左フックでダウンを奪う。

その後も勢いに乗り、10、11ラウンドとダウンを奪い、2-0の判定(112-112、114-110、115-109)でガルシアが勝利を収めた。

しかし、体重超過した上での勝利に「公平性に欠ける」と批判的な意見も寄せられた。

ボクシングと階級

ボクシングは階級ごとに規定体重が定められている。一つの階級の差は、軽量級であれば1.5キロほど、中量級では2〜3キロほどだ。

一階級ちがうだけでボクサーの体格は大きく変わり、パンチの強さや耐久力など、同階級選手とは桁違いになる。

そのため少しでも有利な軽い階級で戦えるよう、無理な減量を試みるボクサーも多い。前日計量までに10キロ以上減量して、翌日の試合までに8キロ近く戻す選手もいるくらいだ。

減量は計画的に行い、パフォーマンスに影響が出ないよう行うのが理想だが、現状それができているボクサーは少ない。

ほとんどのボクサーが減量で体調不良を起こし、万全と言える状況でないまま、リングに上がっている。

減量の終盤、一番苦しいと言われる最後の500g〜1kgを落とす際には、食事制限はもちろん、水分も我慢してギリギリまで体重を落としていく。

今回ガルシアは減量を放棄し、計量直後には体重オーバーにもかかわらず、秤の上でビールを飲むパフォーマンスを見せた。

本来フェアでない状況ならば、試合を行うべきではない。しかし、現在のボクシング界では興行あってこそだ。このようなトラブルがあったとしても、メインイベントを中止することは難しいだろう。

ガルシアの影響力

ガルシアはインフルエンサーとして、Instagramで1000万以上のフォロワーを持つなど、影響力のあるボクサーだ。

しかし、いくら影響力があるからとはいえ、ルールを守らず、好き勝手に振る舞うのは、いかがなものだろうか。

日本のボクシング関係者達も、今回の試合について物議を醸している。

ボクシングの本場アメリカで近年増えつつあるのが、YouTuberや引退したレジェンドによるエキシビションマッチだ。

本来のボクシングと、エンタメ重視のボクシングの二極化が顕著になっている。

ボクシングはショービジネスとしての側面もあるが、本来、厳格にルールが定められたスポーツだ。

ルールは公平にかつ選手の身の安全を守るために必要であり、それを軽視してしまえば、競技としての信用や、選手に怪我を負わせてしまうリスクも高まる。

今回、タイトルマッチでこのようなトラブルが起きてしまったことは残念でならない。トップレベルのボクサーが、ルールを軽視する振る舞いをすれば、競技のイメージダウンにつながる。

今後は団体とプロモーター間でも、ルールの厳格化に取り組んでほしいところだ。

元ボクシング世界チャンピオン

第35代WBC世界ライトフライ級チャンピオン(商社マンボクサー) 商社に勤めながらの二刀流で世界チャンピオンになった異色のボクサー。NHKにて3度特集が組まれ商社マンボクサーとして注目を集める。2016年に現役引退を表明。引退後に株式会社ReStartを設立。解説やコラム執筆、講演活動や社員研修、ダイエット事業、コメンテーターなど自身の経験を活かし多方面で活動中。2019年から新しいジムのコンセプト【オンラインジム】をオープン!ボクシング好きの方は公式サイトより

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