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北欧フィンランドで月経カップが人気の理由 生理用品の革命は女性をより自由にするか

鐙麻樹北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会理事
若い女性が月経カップを選ぶのはなぜ? Photo:Asaki Abumi

生理用品が、今年日本で話題を集めている。外からわからないように生理用品の「二重包装」を希望するかどうかという日本の議論を北欧の人々に話すと、きょとんとする反応ばかりだ。

二重包装なんて、ありえない

私が住んでいるノルウェーでは、スーパーや薬局で生理用品を買う時、レジで二重包装されることなんてない。

日常生活のプラスチック使用料を減らすプラスチックフリーや、無駄なごみをなくそうというゼロウェイストの運動が高まる中、自分が持っているマイバッグに他の商品と一緒に突っ込むだけの存在だ。

生理用品カルチャーは、日本と北欧では随分と違う。私はオスロ大学に2008年から大学院卒業まで通っていたが、驚いた習慣があった。新学期が始まると、キャンパス内や大学周辺の駅で、大学生向けの「お楽しみ袋」が無料配布されるのだ。

大学ではタンポン無料配布

「男子袋」と「女子袋」に分かれていて、中には各企業が学生にPRしたい食品や文房具、割引券が大量に入っている。男子の袋にはデリケートゾーンの液体石鹸、女子袋にはタンポンやおりものシートが入っていた。

男子が間違えて女子袋をもらうこともあり、「これは使わないから、あげる」と、タンポンを隣の席にいる女子にあげる光景が、当たり前だった。

タンポンを使用しないナプキン派などの人によって「タンポンは他の人にどうぞ」と、食堂のテーブルにどかーんと置かれていたり。私がタンポンを初めて試したきっかけも、この無料サンプルがあったからだ。そのまま大学のトイレで試したのを、今でも覚えている。

選挙期間には、政党が無料でコンドームを配布するような国だ。

このような環境なので、そもそも生理用品や性に関する話題が「恥ずかしいもの」という認識が、若者の間では薄かった。

だから、日本の二重包装の話は、北欧の人には「ん?」と分からないのだ。

月経カップで私は生理ストレスから解放された

カップはシリコン製で、いろいろな形に折り曲げることができる。どの折り方が自分の膣にあっているかは人それぞれなので、試すことを続けるのみ Photo: Asaki Abumi
カップはシリコン製で、いろいろな形に折り曲げることができる。どの折り方が自分の膣にあっているかは人それぞれなので、試すことを続けるのみ Photo: Asaki Abumi

私はずっとナプキン派だったが、北欧の生理用品事情を記事にすることが多くなり、噂の「月経カップ」を自分でも試す時がきた。デビューして半年、私は今、月経カップの大ファンになった。

月経カップとは?

  • 膣の中に直接入れて経血をためる生理用品
  • ブランドにもよるが、最高12時間の装着も可能で、経血量によりサイズが2~3種類。1日に何回交換するかは人による
  • 初回の購入で3000~5000円ほどするが、何年も使用できるため、長期的にはお金の節約ができる
  • プラスチックではなくシリコン製。ゼロウェイストや、プラスチックフリーなどのエコな生活をしたい人は、布ナプキンや月経カップを選ぶようになってきている。カップは中の血を捨てて洗浄するだけなので、ゴミがでない。
  • カップは柔らかく、折り紙のように折りたたんで、膣の中に挿入

ルネッテ社の公式動画。英語だが、見ていると使い方のイメージができる。

多くのブランドは3サイズある。選ぶ基準に初潮、出産経験、性交体験が基準とされていることがあるが、それよりも経血量で判断するのがおすすめ。ルネッテは2サイズで、写真左が生理が重い(経血量が多い)人用、右が軽い人用。どのブランドやサイズが自分に合っているかは人それぞれ。「友人に良いから自分にも」ではないので、自分の直感が一番のものさしとなる Photo: Asaki Abumi
多くのブランドは3サイズある。選ぶ基準に初潮、出産経験、性交体験が基準とされていることがあるが、それよりも経血量で判断するのがおすすめ。ルネッテは2サイズで、写真左が生理が重い(経血量が多い)人用、右が軽い人用。どのブランドやサイズが自分に合っているかは人それぞれ。「友人に良いから自分にも」ではないので、自分の直感が一番のものさしとなる Photo: Asaki Abumi

私は、生理前・生理中には、眠くなり、空腹になり、イライラする。加えてナプキンを使用中は、湿った状態による違和感(人によってはかゆみやかぶれ)、1日に何度も交換してゴミを捨てる作業とつきあわねばならず、また血液が漏れるかもしれない不安から黒いズボンやタイツを選んではき、ナプキンをバッグに入れ持ち歩かないといけない手間もある。

対して月経カップは、

  • カップ挿入後は、体の中に何かが入っているという違和感が一切ない
  • ナプキンのようにデリケートゾーンが湿り、肌がじめじめとする感覚もない
  • 1日に取り換える回数が減った(カップは最高12時間挿入可能)
  • 以前よりも服を気にして選ぶことがなくなった(スカートも水着も生理中に着るようになった)
  • 自分の体をより知り、カップの使い方も毎月うまくなる。そのレベルアップの繰り返しが、自己肯定感の促進ともなった

睡魔や腹痛などがなくなるわけではないが、閉経するまで付き合わないといけないと思っていた毎月の精神的ストレスが激減したことに、私は感激した。仕事や日常生活がより楽になったことから、「これは女性を自由にし、自立をサポートする発明品だ」と思った。

カップ女性がなぜか簡単に見つかる国、フィンランド

どの企業の商品にも、カップをしまえる小さな袋がついている。右側の絵を見ると、膣に挿入している様子がイラスト化されている Photo:Asaki Abumi
どの企業の商品にも、カップをしまえる小さな袋がついている。右側の絵を見ると、膣に挿入している様子がイラスト化されている Photo:Asaki Abumi

北欧各国で月経カップは生産されている。とはいえ、ノルウェーやデンマーク、スウェーデンでは、日本と同じくもっともメジャーな生理用品というわけではない。

私は各地の取材で、生理用品の使用事情をストレートに聞くことが多いのだが、月経カップ率が「異常に高い」国がある。ムーミンやマリメッコで有名な、フィンランドだ。

フィンランドでは、薬局やナチュラルショップだけではなく、全国展開のスーパーでも月経カップの販売が始まっている。

北欧各国の生理用品の使用データというのは探し出せないのだが、明らかにフィンランドではカップを使用している女性を探すのが簡単だ。

10人に1人が月経カップを使用

ルネッテ社の調査データによると、12%の女性が月経カップを使用。

画像制作:Yahoo!ニュース
画像制作:Yahoo!ニュース

カップを選ぶ理由は、「環境のため」と地球への負荷を気にする人が多い。

画像制作:Yahoo!ニュース
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スーパーでも月経カップを販売

フィンランドのスーパー、生理用品コーナー Photo: Asaki Abumi
フィンランドのスーパー、生理用品コーナー Photo: Asaki Abumi

なぜ、この国では普及率が高いのか?月経カップが大好きになった私は、その秘密を知りたくて、フィンランドでは有名な月経カップ企業「ルネッテ」(Lunette:英語圏ではルネットと発音することが多い)を訪問した。

薬局や自然派ショップならまだしも、スーパーに月経カップがあるというのは、すごいことだ。紫色のルネッテのカップ(中央)、洗浄用のジェル(右)、持ち運びができる洗浄用シート(左) Photo: Asaki Abumi
薬局や自然派ショップならまだしも、スーパーに月経カップがあるというのは、すごいことだ。紫色のルネッテのカップ(中央)、洗浄用のジェル(右)、持ち運びができる洗浄用シート(左) Photo: Asaki Abumi

首都ヘルシンキで有名なナチュラルショップに行くと、なんと店の外に、大きな女性器がデザインされたルネッテの「記念撮影スポット」があるではないか!

「さぁ、膣(箱)の中に入って、よろしければ撮影を」と、女性の女性器を美しいものとした置物 Photo: Asaki Abumi
「さぁ、膣(箱)の中に入って、よろしければ撮影を」と、女性の女性器を美しいものとした置物 Photo: Asaki Abumi
ナチュラルショップでは専用の棚がある Photo: Asaki Abumi
ナチュラルショップでは専用の棚がある Photo: Asaki Abumi

フィンランドで生理に関する世論のレベルが、なんだか違うことが伝わってくる。

現地での性の議論を大きく変えたと評価されるルネッテ。

本社は首都から電車で90分離れたユーパヨキという田舎町にあった Photo: Asaki Abumi
本社は首都から電車で90分離れたユーパヨキという田舎町にあった Photo: Asaki Abumi

私が直接会って話を聞きたかったのは、生理のタブーを破ることに貢献した女性起業家、ヘリ・クリアネンさんだ。

月経カップを広めた女性、ヘリ・クリアネンさん Photo: Asaki Abumi
月経カップを広めた女性、ヘリ・クリアネンさん Photo: Asaki Abumi

「不思議な議論ね」、とクリアネンさんは日本の二重包装の話題を聞いて、つぶやいた。

左から2005年版、2008年版、2014年版、右が現在版2017年~ Photo: Asaki Abumi
左から2005年版、2008年版、2014年版、右が現在版2017年~ Photo: Asaki Abumi
ルネッテの包装はシンプルな白や青で、ピンク色や花柄とは程遠い。箱を開けると、「あなたの小さなお友達に、こんにちは」と書かれているメッセージが、私は好きだ。箱は紙製で、中身が見える透明なシートは堆肥化可能なプラスチック。プラスチック問題も意識したパッケージだ Photo: Asaki Abumi
ルネッテの包装はシンプルな白や青で、ピンク色や花柄とは程遠い。箱を開けると、「あなたの小さなお友達に、こんにちは」と書かれているメッセージが、私は好きだ。箱は紙製で、中身が見える透明なシートは堆肥化可能なプラスチック。プラスチック問題も意識したパッケージだ Photo: Asaki Abumi
カップも黄色から青色と多彩だ。色によって効果は変わらない Photo: Asaki Abumi
カップも黄色から青色と多彩だ。色によって効果は変わらない Photo: Asaki Abumi

「フィンランドではかなり多くの女性が月経カップを使い始めています。欧州で最も普通な生理用品はタンポン、それからナプキンですが、国によっても異なりますね。北欧やドイツでは、タンポンにはアプリケーターは付属していないのが一般的です」

※アプリケーター=主にプラスチック製の長い挿入器具。手に血がつかずにタンポンを膣の奥に挿入できるが、ゴミが増える。北欧などの一部の地域では、この器具がなく、自分の手でタンポンを奥に入れるフィンガータイプ。

日本ではタンポンにはアプリケーターが付いていることが多いが、北欧では自分の手でタンポンをそのまま膣の中に押し込む。

25歳で起業した母親を、国の税金と福祉制度が支えた

「私は生理が重いほう。カップがなければ、今の仕事はほとんどできなかったでしょうね。前は、生理が私の人生をコントロールしていたから」

タンポン派だった彼女は2004年に月経カップの存在を知り、虜になり、2005年でルネッテ社を起業(当時25歳)した。

「月経カップはフィンランドで普及していなかったので、最初のころは他国製のものをネットで注文しました。カップに関する考え方そのものはいいなと思いましたが、その商品は私には合っていなかった。そのブランドは、デザインもなんだか古臭く、若い女性に受け入れられるようなものではないように感じたんです。マーケティングも違うやり方で私ならできると思いました」

オープンなオフィスで打ち合わせ中。男性社員はひとりしかいない Photo: Asaki Abumi
オープンなオフィスで打ち合わせ中。男性社員はひとりしかいない Photo: Asaki Abumi

フィンランド人のサウナ愛が、生理のタブーを変えた

月経カップの普及活動において、フィンランド独自のサウナ文化には随分と助けられたそうだ。

「以前は人々は生理のことは話したがらなかったけれど、サウナのお陰で議論が進み、世論は全く違うものになりました。今は高齢者も含めて、もっとオープンに生理のことを話しているわ」

人口540万人の国で、サウナは一般家庭や職場など、およそ200~300万箇所にあるという(フィンランド観光局)。そもそも、サウナはフィンランド語らしい。

日本人にとっての自宅でのお風呂や銭湯の感覚で、フィンランド人にとって欠かせないサウナ。

だからこそ、生理なんかにサウナの楽しみを奪わせはしまいと、女性たちはこれまでタンポンを使用。タンポンにあるような「ヒモ」さえない月経カップがすぐに人気となったのは、驚くことではないのかもしれない。

フィンランドのサウナ愛は本当にすごい。イノベーションや商品の取材をしていると、「サウナ中でも、その商品を使用できるか」が、重要な評価項目なのだ。フィンランドの女性とカップの話をしていると、必ず「サウナ」という言葉も出てくる。

他国では、これほどの熱意でサウナを考慮しながら、商品開発や社会議論はされていないだろう。

生理のタブーを変えるには

「生理はクール」といった、生理を明るく楽しいものにするメッセージを発信して、世論を変える Photo:Asaki Abumi
「生理はクール」といった、生理を明るく楽しいものにするメッセージを発信して、世論を変える Photo:Asaki Abumi

クリアネンさんは、アメリカやイギリスでは、北欧よりも生理用品に関するタブーがもっと多いという印象を受けているそうだ。

「保守的な傾向がある国ではタブーの傾向が強く、北欧のような平等でオープンな社会では話しやすいわね」

「生理はプライベートであるべき」と、否定的なコメントがSNSなどでくることもあるが、相手をしないようにしている。

とはいえフィンランドでも、まだ改善すべきと感じている点はあるという。タブーを根本から破るには、学校での性教育を変え、男子を蚊帳の外に置かないことだと、彼女は指摘する。

フィンランドでは小学校から性教育があるが、今でも男子は一緒に授業を受けることはできない。

「娘が学校から持って帰ってきた、性に関する資料がひどくて!私たちで冊子を作り、学校に配布し始めました。カップだけではなく、生理についても書いています。私が小さい頃に、欲しかったなと思う情報をね」

学校にも教育セットとして寄付する。カップは「硬そう」と思っている人も多いので、実際にサンプルに触れることもできる。保健室の先生や教員が話しやすいように、オーストラリアでは全学校に寄付した Photo: Asaki Abumi
学校にも教育セットとして寄付する。カップは「硬そう」と思っている人も多いので、実際にサンプルに触れることもできる。保健室の先生や教員が話しやすいように、オーストラリアでは全学校に寄付した Photo: Asaki Abumi

ルネッテ社のSDGs(国連サミットで採択された、持続可能な開発目標)担当であり、クリアネンさんの右腕でもあるソーニャ・カリヤアライネンさんも、「生理に関する性教育には男子も含めなければいけない」と強く語る。

カリヤアライネンさんが手にしているのが限定ピンク版。「赤い血」に対する世間の嫌悪感を変えたいと、Tシャツでもメッセージ発信。社員は普段からこのTシャツを着用している Photo: Asaki Abumi
カリヤアライネンさんが手にしているのが限定ピンク版。「赤い血」に対する世間の嫌悪感を変えたいと、Tシャツでもメッセージ発信。社員は普段からこのTシャツを着用している Photo: Asaki Abumi

「体から出てくる普通の血なのに、戦争映画で血を見るのはよくて、CMや広告で生理の血を見るのはだめなんて、おかしいとは思わない?」 

「社会のタブーを作り出したのは女性でもあります。今は時代の変化を感じます。今の若い人はオープンで、恥ずかしがらずに、どんどんと聞いてくる。男性も、議論の輪に一緒にいなければ」

月経カップは持続可能な生活目標SDGsを実現する未来商品

生理用品とSDGsをつなげて考えたことはあるだろうか?月経カップの企業は、発展途上国での支援活動をしていることが多い。

インフラが整っていない国では、女性が抱える生理の問題が深刻だ。私たちのように生理用品に恵まれた環境にいるわけではない。

布や新聞紙をナプキン代わりにするのは清潔ではないし、布ナプキンなどを洗濯するにしても、十分な量のきれいな水が必要となる。

ルネッテ社は、2016年には東アフリカで3万個のカップを無償提供。H&M傘下の若者向けアパレルショップ「モンキ」では、限定ピンク色のカップを共同販売。カップを購入すると、もう1個のカップがケニアに住む少女に寄付される。

「性教育がされないと、タブーは一生消えることはない」という考えから、性の健康や権利に関するレッスンも提供 Photo: Lunette
「性教育がされないと、タブーは一生消えることはない」という考えから、性の健康や権利に関するレッスンも提供 Photo: Lunette

「ノーはノー」と女性の権利を主張したり、少女たちが体の構造を理解できるように、避妊やセックスも話題に含める。カップを入れることで処女膜がやぶれることを気にする人もいるので、処女膜と処女は関係ないということなども伝える。

性教育プログラムを受けることなしに、カップを無償提供することはしない。

私は北欧現地での環境や気候会議をよく取材するが、SDGsが実現できる商品として、月経カップが紹介されるのは当たり前となった。

生理は恥ずかしがるものではなく、未来を変革する明るいものなのだ。

月経カップのデメリット

膣内に手を入れることにどうしても抵抗がある方には、カップは最初は精神面でのハードルが高いかもしれない。タンポン、特にアプリケーターなしでの使用に慣れている人はより移行しやすいだろう。

北欧では、生理用品は(エコなど)「ライフスタイルや価値観の選択」でもある。自分に一番合った生理用品を選ぶのがいいだろう。

出し入れに苦労したり、カップが中でしっかりと開いておらずに経血が漏れることもある。こちらはリラックスすること、練習を重ねること、折り方を変える、場合によってはサイズやブランドを変えてみるのも手だ。

手に血がつくので、外出先で入れ替える時は、ウェットティッシュを持ち歩くか、手が洗える洗面台があるトイレを選ぶと安心できる。

ネットでカップのことを検索すると、様々な情報があるが、英語と比べて日本語の情報はまだ少ない。私は周囲の使用経験者とも話や相談をすることで情報も集まり、最初は挿入できなかった時もパニックにはならなかった。

月経カップの疑問、教えてください

最後に、月経カップについての質問を、クリアネンさんに答えてもらった。

Photo: Asaki Abumi
Photo: Asaki Abumi

取り出せずに病院に行く人がいるの?

私「日本語で月経カップを検索すると、『取り出せずに病院に行った』というコメントが。ちなみに私はそのようなことは一度もなく、何人かのノルウェーの医師に聞いても、「前例なし」という回答でした」

クリアネンさん「カップが取り出せずに病院に行ったことがある人が、何人かいるという報告は受けています。怖がらずに、リラックスすることが大事。緊張していると取りにくいことはあるかもしれませんが、取ることは可能です」

※私の感想だが、取ることは問題ないのだが、初日はうまく挿入できなかった。「ちょっと落ち着こう」と思い、ソファでごろごろして、カップを水で湿らせたら、うまく入った。呼吸をして、リラックスするのが本当に大事!

ブランドごとに大きな違いはあるの?

私「複数の企業の商品を試しましたが、柔らかさ以外ではあまり違いを感じません。実際、大きな違いはあるのですか?」

クリアネンさん「大きな違いはないけれど、細部が、全てを決めるの。感触は人によるけれどね。小さな違いに気づく繊細な人もいて、私もそのひとり。シリコンが硬めのほうがカップは開きやすいのだけれど、硬すぎると今度は開きにくくもなるし、挿入もしにくくなるの。そのバランスが大事」

初めて買う時はブランドやサイズで迷います。何に気を付けて選べばいいですか?

クリアネンさん「ふだんの生理の時にどれほどの量を出血するのかが大事。生理が重めなら大きめ、軽いなら小さめ。複数のサイトでのレビューをよく確認して」

「ユーザーからの感想がたくさんあって、多くのファンがいるブランドを選んで。SNSもチェックしてね」

血が漏れないための挿入のコツを教えてください

私「私は2度ほど漏れたことがありますが、どうして漏れたのか、わからないまま。アドバイスをください」

※漏れるといっても、パンツがどばーっと濡れる惨事ではなく、ぽつぽつ漏れるくらい。「ナプキンがずれて、たまに血がちょっとパンツに付いた」レベル。カップ装着のまま、筋トレ、ヨガ、サウナ、水泳などをしたが、そういう時に漏れたことはなし。

クリアネンさん「私は15年間、カップを使用しているけれど、出血量が本当に多いので、満杯になって漏れることは今もあるわ。でも、装着方法で、漏れはかなり防げます」

漏れないコツは、下からくるくる回す・下から引っ張る

クリアネンさんが、折ったカップを膣の中でどうすれば開くことができるか、実際に実演してくれた。

挿入しにくい生理初日などはジェル、オイル、クリームを使うと簡単だ。

日本人が投稿するレビューでは、「小さい体の日本人には、欧米ブランドの一番小さいサイズでよい」という意見がよくあるが、人によってさまざまだ。出血量も毎月同じではないし、明らかに出血量が多い人は中~大サイズでよいだろう(小サイズだと、血を捨てる交換回数が増える)。

・・・・・

月経カップは、ただの生理用品ではない。タブーを壊し、プラスチックフリーやゼロウェイストの動き、MeTooをはじめとする女性運動とつながり、サステイナブルな選択肢をより魅力的にしている。

変化を起こすのには良いタイミングで、カップが若者に支持されているのだ。

「将来はカップが最も使われる生理用品になると思う」と話すクリアネンさん。「とても革命的で、環境にもいいから。薬局だけではなく、全てのスーパーで売られていることが普通の未来がやってきますよ」

Photo&Text: Asaki Abumi

【この記事は、Yahoo!ニュース個人の企画支援記事です。オーサーが発案した企画について、

編集部が一定の基準に基づく審査の上、取材費などを負担しているものです。この活動は、個人の発信者をサポート・応援する目的で行っています。】

北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会理事

あぶみあさき。オスロ在ノルウェー・フィンランド・デンマーク・スウェーデン・アイスランド情報発信16年目。写真家。上智大学フランス語学科卒、オスロ大学大学院メディア学修士課程修了(副専攻:ジェンダー平等学)。2022年 同大学院サマースクール「北欧のジェンダー平等」修了。多言語学習者/ポリグロット(8か国語)。ノルウェー政府の産業推進機関イノベーション・ノルウェーより活動実績表彰。北欧のAI倫理とガバナンス動向。著書『北欧の幸せな社会のつくり方: 10代からの政治と選挙』『ハイヒールを履かない女たち: 北欧・ジェンダー平等先進国の現場から』SNS、note @asakikiki

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