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リアルレポ。西日本豪雨・応援の旅2 倉敷・児島は国産ジーンズ聖地&うどん天国だった

寺田直子トラベルジャーナリスト 寺田直子
児島ジーンズストリートで純国産デニムと出会う/筆者撮影

7月21~24日と訪問した倉敷市レポの第二弾。今回は児島地区をご紹介する。

第一弾

リアルレポ。西日本豪雨・応援の旅1 倉敷・美観地区は元気です!

それまで筆者のイメージは第一弾レポで紹介した美観地区=倉敷(市)だった。もちろん観光の拠点であることは間違いないのだが、今回、豪雨被害のあった真備地区も含め「倉敷市」というのがとても広範囲なのだということをあらためて実感した。里山の風景から瀬戸内に面した港街まで多岐にわたる。児島はそのなかで瀬戸大橋をのぞむ海沿いの地区。古くから「繊維の町」として知られるエリアだ。

ちなみに今回、豪雨被害の大きかった北部・真備地区と南部の児島は距離にして約40数キロ、車でおよそ1時間弱。7月上旬の豪雨時も児島周辺は雨量も少なく被害の甚大さをニュースで知って驚いたと地元の人は教えてくれた。今回の豪雨はそれほどまでに局所的かつ広範囲に被害をおよぼしたことがわかる。

児島きっての観光スポットがジーンズストリート。訪れたのは7月21日。豪雨から2週間ほどの時期で観光客が少なく静かな雰囲気だった/筆者撮影
児島きっての観光スポットがジーンズストリート。訪れたのは7月21日。豪雨から2週間ほどの時期で観光客が少なく静かな雰囲気だった/筆者撮影
トリック&インスタ映えするアートも登場。テーマはやはりジーンズ/筆者撮影
トリック&インスタ映えするアートも登場。テーマはやはりジーンズ/筆者撮影

観光で児島を訪れたらまず向かいたいのがジーンズストリート。児島駅から徒歩15分程度。「ストリート行き」バスがあるほか、市営駐車場があるのでレンタカーで訪れるのもいい。

ストリート沿いには世界的に人気の高い桃太郎ジーンズを筆頭に約40店舗の個性的なジーンズメーカー直営店や、デニムアイテムをそろえたショップ、飲食店が集まっている。有名人をはじめ世界中からジーンズマニアが訪れるいわば聖地だ。

日本家屋を利用したジャパンブルージーンズは生地メーカーが生み出した製品として定評あり/筆者撮影
日本家屋を利用したジャパンブルージーンズは生地メーカーが生み出した製品として定評あり/筆者撮影
ジャパンブルージーンズのデニム&児島愛にあふれるスタッフのみなさん/筆者撮影
ジャパンブルージーンズのデニム&児島愛にあふれるスタッフのみなさん/筆者撮影

ジーンズストリートの中でも印象的なのが日本家屋をそのままショップにしたジャパンブルージーンズ。デニム生地メーカーだがサンプル商品として制作したものが海外のバイヤーから評価されたことから国産ブランドを立ち上げた。徹底的にこだわり抜いた生地と絶妙なシルエット。人気は藍染ジーンズ。柔らかなさわり心地のコートジボワール綿を使用。20回もの染めの工程を繰り返し糸の芯まで深く届いた藍色がうつくしい。

個性的な商品をそろえたBluxe/筆者撮影
個性的な商品をそろえたBluxe/筆者撮影
Bluxeおすすめジャケット。経年で色が変化していくのもインディゴの魅力。愛すべき自分だけの一着になる/筆者撮影
Bluxeおすすめジャケット。経年で色が変化していくのもインディゴの魅力。愛すべき自分だけの一着になる/筆者撮影

まるで作務衣かどてらか。日本の伝統衣装、仕事着、ミリタリースタイルを取り入れたアイテムが並ぶのはBluxe。もちろんどれも職人の染めの技術を活かしたもの。手作業でほどこされたパッチワーク、野良着のようなスタイルなどかなり個性的だが、意外にも女性が着るとかわいい。長年、愛用していくと色合いが変化していくのもインディゴの魅力。「自分だけの一着になっていくんですよ」と女性スタッフの言葉が印象的だった。

クラウン・レーベルのデニム素材のオーダースーツ。ダンディズムの極致/筆者撮影
クラウン・レーベルのデニム素材のオーダースーツ。ダンディズムの極致/筆者撮影
店内には手織り機が。ここで丁寧に織られていく/筆者撮影
店内には手織り機が。ここで丁寧に織られていく/筆者撮影

ジーンズストリートの中で最も端正な店構えともいえるのがクラウンレーベル by Momotaro Jeans。ここでは国産オリジナル生地を使用したデニムオーダースーツをあつらえることができる。シングル、ダブル上下から3ピース、ジャケット、ベスト、パンツなど。さらに自分の体形にそったオーダージーンズも可能。きわめつけは手染めの天然藍染糸を丁寧に手織りした生地で仕立てた「手織りジーンズ」。22万5000円(税別)と高額だが、しなやかにフィットするジーンズはまさにマニア向けの究極の1本といえる。

これがウワサのインディゴソフト350円!/筆者撮影
これがウワサのインディゴソフト350円!/筆者撮影

ジーンズストリートで行列ができる店がある。それがRivets。コミュニケーションステーションとしての役割をになっていて、カフェとしても運営。もちろん誰でも利用可能だ。行列の理由はジーンズをイメージした藍い色の「インディゴソフト」!児島三白の塩を使った塩バニラフレーバーに藍パウダーをトッピング。インスタ映えするだけでなくほんのり塩味バニラはストリート散策のブレイクに最適。児島ならではのスイーツなのでぜひ、試したい。

記念に筆者が購入したのが本藍染のバングル/筆者撮影
記念に筆者が購入したのが本藍染のバングル/筆者撮影
ジーンズミュージアム&ヴィレッジではリベット打ちなどができる体験工場が/筆者撮影
ジーンズミュージアム&ヴィレッジではリベット打ちなどができる体験工場が/筆者撮影
限定ジーンズを購入、好みのボタンを選んで自分だけの1本をゲット/筆者撮影
限定ジーンズを購入、好みのボタンを選んで自分だけの1本をゲット/筆者撮影

児島のもうひとつの観光スポットがジーンズミュージアム&ヴィレッジだ。老舗国産メーカーのベティスミスが運営する施設でジーンズストリートから車で10分ほど。あるいはバスを利用して行くこともできる。

ベティスミスの大島康弘代表取締役。訪日客に国産ジーンズを「Omiyage」としてアピールするアイデアマンだ/筆者撮影
ベティスミスの大島康弘代表取締役。訪日客に国産ジーンズを「Omiyage」としてアピールするアイデアマンだ/筆者撮影

ベティスミスという名前からアメリカのブランドだと思っている人も多いかもしれないが、ここはれっきとした国産ブランド。1962年、児島に創業。以来、日本のデニムシーンを見続けてきた。施設内にはジーンズの歴史を物語る資料、年代モノのジーンズや縫製用ミシンなどを展示した「ジーンズミュージアム」、1970年代に稼働していた洗い工場跡地を利用した資料館「国産ジーンズ館」のほか、自分でリベット打ち、ボタン付け、ストラップ作り、デニム加工体験ができる「体験工場」も。ファクトリーアウトレットも併設しているのでお値打ちアイテムが手に入るチャンスもある。

ひろよしの「えび天ぶっかけ」950円。そそりたつえび天2本が圧巻!/筆者撮影
ひろよしの「えび天ぶっかけ」950円。そそりたつえび天2本が圧巻!/筆者撮影

考えてみれば児島の対岸は「うどん県」の香川。うどん文化の影響を受けないわけがない。しかも古くから職人たちの多い環境。手軽で手早く食べられるうどんは重宝がられたことだろう。そこから、児島独自のうどん文化が生まれていった。

どれもそそるツラがまえの児島うどんたち。目指すは全制覇!/筆者撮影
どれもそそるツラがまえの児島うどんたち。目指すは全制覇!/筆者撮影

児島に行くのであればまず、観光センターで「児島うどんマップ」を手に入れてほしい。

オンライン情報&pdf版はここから。

マップに登場するのはいずれも地元で愛される店ばかり。それぞれにこだわり&個性がある名店ぞろいだ。筆者が今回、食べたのは倉敷在住の友人おすすめの「ひろよし」。名物は味噌煮込みうどんとのことだが、さすがに猛暑だったので冷たい「えび天ぶっかけ」を注文。うどんの上に温玉と揚げたての巨大なえび天2本が凛々しくもクロスして鎮座。甘辛いツユを投入して一気にうどんをすすりこむとむちっと適度な弾力のうどんの破壊力にノックアウト。今回は時間がなく1軒のみで断念したが複数件はせめたいところ。地元のみなさんもそれぞれにひいきの店があるようで、「わたしはココ!」と行く先々で積極的に情報提供してくれるのがありがたい。それを参考にうどん三昧をするのは間違いなく楽しい。次なる野望はマップに掲載の15店制覇といきたいところだ。

豪雨の影響をまったく受けなかった児島地区だが、やはり観光客の数は少なくなっていた。逆に混みあうショップや行列のできるうどんやスイーツも今ならゆっくりあせることなく楽しむことができる。

美観地区を拠点に。ひと足のばしてジーンズの聖地であり、うどん天国でもある児島をたっぷりと極めてほしい。

<データ>

児島へは倉敷駅から岡山駅経由JRマリンライナーなどを利用。この区間は豪雨の影響もなく通常運転を行っている。

また、児島駅からジーンズストリート、ジーンズミュージアム&ヴィレッジ、染め工場などをめぐる観光型周遊バスジーンズバスが金~日曜、祝日(年末年始は除く、お盆期間は毎日運行)もある。

児島公式サイトこじまさんぽ

児島ジーンズストリート

倉敷市公式観光サイト倉敷観光WEB

点在するジーンズをイメージしたポイント探しも楽しい/筆者撮影
点在するジーンズをイメージしたポイント探しも楽しい/筆者撮影
トラベルジャーナリスト 寺田直子

観光は究極の六次産業であり、災害・テロなどの復興に欠かせない「平和産業」でもあります。トラベルジャーナリストとして旅歴40年。旅することの意義を柔らかく、ときにストレートに発信。アフターコロナ、インバウンド、民泊など日本を取り巻く観光産業も様変わりする中、最新のリゾート&ホテル情報から地方の観光活性化への気づき、人生を変えうる感動の旅など国内外の旅行事情を独自の視点で発信。現在、伊豆大島で古民家カフェを営みながら執筆活動中。著書に『ホテルブランド物語』(角川書店)『泣くために旅に出よう』(実業之日本社)、『フランスの美しい村を歩く』(東海教育研究所)、『東京、なのに島ぐらし』(東海教育研究所)

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