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【獣医師監修】猛暑で飼い主を悩ます「お散歩警察」 熱中症対策もバージョンアップを

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
イメージ写真(写真:アフロ)

3歳になる甲斐犬の男の子、黒虎くんの飼い主さん(@kaiken_kurotora)が、毎朝午前4時に起床し、黒虎くんと約1時間散歩。そんな黒虎くんの早朝散歩の様子に対して、「夏のアスファルトは犬がやけどするから歩かせるな」「虐待だ」「飼い主が自分の足で地面歩いてやけどしてみろ」といった、誹謗中傷の声が寄せられたとまいどなニュースが伝えています。

猛暑の熱中症対策

昨年の菊花賞を制したアスクビクターモアが放牧先で熱中症による多臓器不全で死にました。大切にされている競走馬でも、この猛暑で命を落とす地球環境になっています。

犬の散歩は、基本、日中はやめておきましょう。そのうえ、日が陰ってもアスファルトを触ってみて、熱ければもう少し時間をずらした方がいいです。

このようなことは、犬を飼っている人なら常識になっていますが、そんな中「お散歩警察」という言葉があります。

お散歩警察とは?

SNSの時代になったせいか、「お散歩警察」という言葉が出てきています。

お散歩警察とは、散歩の写真をあげると、反射的に注意する人たちのことです。

もちろん、炎天下に犬のお散歩をする人もいるので、犬のことを考えて注意している人もいるのでしょう。

その一方で、飼い主は細心の注意を払っているにもかかわらず、事実も確認せず反射的に「炎天下の昼間」と決めつけ、「虐待」などを批判する人たちもいます。

犬を飼っていると、どうしても暑い時間に散歩に連れていく必要もあります。暑い中に外に連れて出すときは、緻密な対策が必要です。

バージョンアップした熱中症対策

撮影は筆者 ネックウォーマーに保冷剤を入れてある
撮影は筆者 ネックウォーマーに保冷剤を入れてある

以前、ペットが熱中症になってしまった時の対処方法とはという記事にも書きましたが、猛暑なので、さらなるバージョンアップが必要です。

・塩分補給は十分か?

人でも言われていますが、ただ水分を補給すればいいというものでもありません。犬は塩分を取ることがあまりないので、塩分について考えている飼い主は少ないかもしれません。

臨床をしていると電解質であるナトリウムが少ない子もいます。血液中のナトリウムの量は、血液検査をすればすぐにわかります。一度、動物病院で電解質のチェックをしてもらいましょう。

・深部体温を下げる

熱中症は深部体温が上がるためになるので、外から冷やしてもなかなか症状が改善しません。そのため、冷たい水を飲ませて、エアコンが効いた部屋に犬を置いておきましょう。

冷たい水を飲ませると、下痢をする子もいるので、水の温度は、その子の様子を見ながらにしてあげてください。下痢をしない場合は、氷水でも大丈夫です。

・大きな血管を冷やす

一番、効果的なのは首の血管を冷やすことです。後肢の付け根などがありますが、犬の場合は難しいです。ネックウォーマーに保冷剤を入れるなどして、首に巻いてあげましょう。

・四肢を冷やす

冷水に四肢をつけておいて、冷やしてあげてください。

・冷却作用のある服を着せる

お散歩中はもちろんですが、室内でも冷却作用のある服を着せてあげてください。

熱中症になりやすい犬

この夏は猛暑なので、どの犬も熱中症になる可能性があるのですが、特に以下の犬は細心の注意を払ってください。

・シニアの子

シニアの子は、体温調節がうまくいかない子が多いです。

・肥満の子

肥満の子も体温調節がうまくできない子が多いです。

・基礎疾患を持っている

心臓病、腎臓病、慢性の下痢、糖尿病、がんの子などはやはり体温調節がうまくいかない子が多いです。

・寒冷地原産の犬

バーニーズマウンテンドッグやセントバーナードは、暑さに弱いです。

・短頭種の子

鼻ペチャな犬のことを短頭種と称することがありますが、マズルが短い犬種のことです。ブルドッグ、フレンチブルドッグ、ボストンテリア、ボクサー、シーズー、チベタンスパニエル、パグ、狆などです。

この子たちは、鼻が短く口腔の面積が狭いため、唾液を気化して熱を逃すのが苦手です。

まとめ

イメージ写真
イメージ写真写真:アフロ

暑い時間に治療のために動物病院に来院するときは、カートに入れてその中には、冷却マットを入れるなど入れてすると、肉球が冷えていいです。

外に出す前に、上述のバージョンアップした熱中症対策をしてから連れ出しましょう。「お散歩警察」に非難されないために、見た目も大切なので以下のこともしてください。

・冷却作用のある服を着せる

・首に保冷剤を巻く

・犬用の靴をはかす

飼い主も犬もこの暑さは命の危険があるレベルだということを頭において、お散歩に連れていきましょう。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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