観測史上初の7月台風発生0は、ミッドウェー海域が鍵
7月の台風発生数は観測史上初の0?
令和2年(2020年)は、台風の発生ペースが遅く、台風1号が発生したのは5月12日21時と、台風の統計が整備されている昭和26年(1951年)以降の70年間で8番目の遅さでした。
その後、6月12日21時に台風2号が発生したものの、いまだに台風3号が発生していません。
まもなく7月が終わりますが、この段階で台風が2個しか発生していないというのは、記録的な少なさです(図1)。
7月末まで台風が発生しなければ、令和2年(2020年)は、台風発生数が2個となり、平成10年(1998年)の1個に次ぐ2位の記録です。
例年であれば、7月には台風が3~4個発生します。
7月に発生した台風の数は、最多が平成29年(2017年)と昭和46年(1971年)の8個で、最少は平成10年(1998年)、昭和60年(1985年)、昭和32年(1957年)、昭和29年(1954年)、昭和28年(1953年)の1個です。
つまり、これまで、7月に台風発生数が0であった年はありません。
7月30日と31日に台風3号が発生しなければ、初めて7月の台風発生数0となります。
現在の日本の南海上
日本の南海上は、台風が多く発生する海域で、7月ともなると積乱雲が次々と発生し、台風の卵となる渦が形成されています。
しかし、令和2年(2020年)は、7月になっても積乱雲があまり発生しませんでした。
海面水温は27度以上あり、台風が発生するのに必要な豊富な水蒸気がありましたが、上空の大気の流れで対流活動を抑える下降流が卓越していたことなどが原因と考えられています。
従って、台風の卵となる渦も形成されず、台風の発生もありませんでしたが、ここへきて、積乱雲が増えてきました(図2)。
南シナ海でも積乱雲が増えてきましたが、いずれも現時点では渦巻きを形成していません。
周辺部より気圧が低くなる低圧部ができているだけです。
低圧部の中から渦巻きができ、その中から熱帯低気圧が発生し、その熱帯低気圧が台風に発達するまで、少なくとも2~3日はかかりますので、これらの海域からの7月中の台風発生はなさそうです。
また、小笠原諸島の東海上にある熱帯低気圧は、周辺の積乱雲が少なく、このまま衰弱する見込みです。
従って、7月中に台風発生の可能性がありそうなのは、日付け変更線を越えての台風発生です。
熱帯低気圧「ダグラス」が西進
世界中で熱帯低気圧が発生する海域は6つあり、それぞれに呼び名が違っています。
北西太平洋(南シナ海を含む)の台風、北東太平洋と北大西洋のハリケーン、南西太平洋と北インド洋、南インド洋のサイクロンの6つです(図3)。
南東太平洋と南大西洋は、低緯度であっても海面水温が低いことから熱帯低気圧は発生しません。
台風は、北西太平洋で熱帯低気圧が発達し、最大風速が毎秒17.2メートル以上となったときに発生するだけでなく、北西太平洋に台風並みの熱帯低気圧が入ってきた場合も発生します。
逆に、台風が北西太平洋を出た瞬間に台風ではなくなります。
つまり、東経180度線は、日付け変更線であると同時に、台風変更線でもあり、10年に1から2個は、北東太平洋から北西太平洋に入ることで台風になっています。
現在、ミッドウェー諸島付近には、7月26日にハワイ諸島の北方を通過した、台風並みの熱帯低気圧「ダグラス」が西進中です(タイトル画像参照、ひまわりからは斜めに見るため楕円形の雲になっている)。
ただ、「ダグラス」が台風並みの熱帯低気圧という状態で、日付け変更線を越えるかどうか微妙です。
ミッドウェー諸島付近の海面水温が27度位と、台風が発達する目安とされる27度ギリギリであることなどから、台風並みの熱帯低気圧「ダグラス」は衰弱傾向にあります。
また、日付け変更線を越えた時点では温帯低気圧に変わる可能性があります。
気象庁が海上警報を発表する担当範囲は、国際的には東経180度までですので、「ダグラス」の予報は行いませんが、予想天気図は担当範囲より少し広い範囲を解析しています。
気象庁の予想天気図によると、台風並みの熱帯低気圧「ダグラス」は、7月30日9時には温帯低気圧に変わり、7月30日中に日付け変更線(東経180度)を越えて、北西太平洋に入ってきます(図4)。
7月中に台風3号が発生するかどうかは、ミッドウェー諸島付近の「ダグラス」にかかっています。
ただ、現時点では、台風発生の可能性は低くなっています。
【追記(7月30日24時)】
熱帯低気圧「ダグラス」は、温帯低気圧に変わってから、7月30日21時に日付け線を越えました。
このため、日付け変更線での台風発生はありませんでした。
あと一日ありますが、これで7月の台風発生数0が確定です。
【追記(7月31日12時)】
気象庁は、7月31日9時に南シナ海で熱帯低気圧を解析し、今後、24時間以内に台風にまで発達する可能性があるとしています。
それ以外に、顕著な熱帯低気圧はありませんので、12時間後の7月31日21時の天気図解析(31日23時頃)までに台風が発生しなければ、7月の台風発生0が確定です。
タイトル画像、図2の出典:ウェザーマップ提供。
図1の出典:気象庁資料をもとに著者作成。
図3の出典:説明用に著者作成。
図4の出典:気象庁ホームページの図に著者加筆。