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衆院選の前哨戦と化した東京都議会議員選挙、告示1ヶ月前の情勢と分析

大濱崎卓真選挙コンサルタント・政治アナリスト
東京都議会(写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート)

衆院選の前哨戦と化した都議選

 東京都議会議員選挙が6月25日告示、7月4日投開票の日程で行われます。今回の都議選は、直後の秋には衆院総選挙が行われることが確定しているため、ほぼほぼ衆院選の前哨戦と化しており、その影響もあって春以降は情勢に変化も出つつあります。各政党会派別に東京都議選の情勢をみていきたいと思います。

小池旋風再来にかける都民ファースト

東京都知事選挙では「東京大改革2.0」を掲げた
東京都知事選挙では「東京大改革2.0」を掲げた写真:つのだよしお/アフロ

 前回、公認49名・推薦7名を当選させた都民ファーストの会ですが、現有議席は46。会派離脱などの動きもあり、今回は一転して厳しい選挙という見通しです。前回初当選組の中で定数3以下の選挙区では都民ファーストにとってかなり厳しい選挙も多いものの、定数4以上の選挙区や当選2期以上の候補者を中心に激戦となっている選挙区も多く、予断を許しません。特にこの1年はコロナ禍という中で街頭演説などといった活動が難しかった候補者も多く、基礎となる組織票も少ない候補者にとっては、戦い方の難しい選挙となっています。前回は小池旋風によって大勝を収めた都民ファーストですが、小池旋風の再来があるのかどうかが終盤に向けての注目ポイントでしょう。

議席復活を狙うも簡単ではない自民党

前回都議選で歴史的大敗を喫した下村都連会長(当時)
前回都議選で歴史的大敗を喫した下村都連会長(当時)写真:Motoo Naka/アフロ

 都民ファーストが躍進した前回都議選までは都議会第1党であった自民党は、前回失った議席を取り戻すべく各選挙区に新人候補者を擁立しています。情勢をみていくと、定数1の選挙区では自民党が優勢なものの、定数が複数の選挙区においては、現職(や元職)と新人の2〜3名を擁立する構図の選挙区において、主に新人候補の苦戦が伝えられています。コロナ対策への不満などによる内閣支持率の低迷などから「ただなんとなく自民」層が無党派層に戻っている現状もあり、支持組織や友好団体からの集票力の弱い新人候補者のうち、特に選挙戦に出遅れた候補者ほど当落線上で厳しい戦いが強いられています。

またも「23議席」死守できるか公明党

 都議会公明党は、2009年(民主党)、2013年(自民党)、2017年(都民ファースト)と都議会第一党が目まぐるしく変わる中で、安定して23議席を維持し続けています。今回も都議会第一党が変わる可能性のある中で、東京都議会議員選挙にはこだわりのある公明党がこの23議席をまたも維持できるかが鍵となるでしょう。現状、各選挙区を見る限りでは堅調な戦いを維持していますが、23区を中心に定数3の選挙区などで他陣営候補者の状況によっては互角の戦いになる可能性も未だ残っています。コロナ禍で集会や座談会が開きにくい状況は変わっておらず、都議選告示直前まで緊急事態宣言が延長となる見込みとなったことが、終盤戦に向けてどれだけ影響として出てくるかにも注目をしています。

衆院選前哨戦の煽りを受けつつある共産党

 共産党は現有18議席。2017年(19議席)や2013年(17議席)の共産党獲得議席は、2017年当時の民進党(5議席)や2013年当時の民主党(15議席)よりも多く、国政選挙における民進党や民主党に対する逆風によって野党票が共産党に集中する現象が見られました。しかし今回は確実にある衆院選の前哨戦ということから国政野党第一党である立憲民主党の政党支持率上昇もあり、一転として厳しい選挙となりそうです。特に多摩地域における定数3以上の選挙区では、軒並み野党側候補としての立憲民主党候補の追い風によって、厳しい選挙が見込まれそうです。

国政選挙前に躍進できるか立憲民主党

 共産党の項で触れたように、衆院選の前哨戦という位置づけになりつつある中で立憲民主党は議席の上積みを狙う形になっています。特に23区はもとより、多摩地域でも新人(・元職)候補が善戦している選挙区が増えています。一方、選挙区や候補者による差が大きいのも事実で当落線上の候補者も多く、衆議院小選挙区の議員(・総支部長)との連携を含め、終盤戦に向けてどの程度支持を広げられるかが鍵となるでしょう。終盤戦にかけて最も変動が大きくなりそうな政党とも言えます。

衆院選を見据えた活動を広げる日本維新の会

 東京進出が大きな課題となっている日本維新の会ですが、今回は衆院選前ということもあり、ある程度の候補者を擁立して戦いに臨んでいます。衆院選東京ブロックでの票の上積みのためにも都議選で集票力を確かめて本戦(衆院選)に望むような構図となっていますが、議席獲得の点でいえば前回(1議席)から多少の上積みの可能性がみえてきたような状況です。共産党と立憲民主党と日本維新の会は政治活動期間中における政党カー(街頭宣伝車)による運動も多く確認されており、衆院選を見据えた「支部長と都議候補予定者との連携」による動きが活発化しているのも特徴です。

 このほか、れいわ新選組も複数の候補者の擁立を決定しており、国民民主党や古い政党から国民を守る党(旧・NHKから国民を守る党)も候補者を擁立しています。諸派系や無所属候補者の立候補もある東京都議選は、告示直前まで緊急事態宣言が発出されるという異例の展開の中、激しい終盤戦を迎えることとなりそうです。いずれにせよ政党・会派単独では過半数を取る勢いではないことから、公明党との連携(キャスティングボート)による過半数を自民党が取れるのか、それとも都民ファーストの会が小池旋風再来で踏ん張るか、あるいは野党系が衆院選前哨戦の勢いに乗じて躍進するのかにも注目していきたいと思います。

選挙コンサルタント・政治アナリスト

1988年生まれ。青山学院高等部卒業、青山学院大学経営学部中退。2010年に選挙コンサルティングのジャッグジャパン株式会社を設立、現在代表取締役。不偏不党の選挙コンサルタントとして衆参国政選挙や首長・地方議会議員選挙をはじめ、日本全国の選挙に政党党派問わず関わるほか、政治活動を支援するクラウド型名簿地図アプリサービスの提供や、「選挙を科学する」をテーマとした研究・講演・寄稿等を行う。『都道府県別新型コロナウイルス感染者数マップ』で2020年度地理情報システム学会賞(実践部門)受賞。2021年度経営情報学会代議員。日本選挙学会会員。

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