東京都台東区/上野公園・国立科学博物館「震災からのあゆみ」展に科博の不屈精神を見た!会期11/26迄
1923年9月1日に発生した関東大震災から、今年でちょうど100年。台東区をはじめ都内各所で震災関連イベントが催されていますが、上野公園の国立科学博物館(略称:科博)でも関東大震災100年企画展「震災からのあゆみ -未来へつなげる科学技術-」が開催中です。
国立科学博物館といえば近ごろ、燃料費高騰など厳しい状況を受けてクラウドファンディングを実施し、大成功を収めてニュースになったばかり。そのように逆境や困難に挫けまいとする、科博の持つ力強さのルーツにも触れられる展示となっております。
会期は11月26日(日)までなので、この機会をぜひお見逃しなく!
◆震災当時→震災後→100年後(現代)の3章立て
企画展の第1会場は、国立科学博物館の日本館1階の企画展示室。入場料は630円。常設展示入館料のみでご覧いただけます。高校生以下または65歳以上なら無料で入れます。
第1会場の展示は3章構成になっており、第1章「1923年 関東地震とその被害-関東大震災-」は震災当時の被害状況を詳しく振り返る内容。
続く第2章「関東大震災からの復興-災害に強いまちづくり-」では、震災後の帝都復興計画や、復興に使われた建築技術などにスポットを当てています。
そして第3章「100年間の地震・防災研究-災害に負けない国へ-」では、震災後から100年経過した現在までの地震研究・防災技術の歩みを解説。
さらに地球館1階にも第2会場が設置されています。
水・電気などライフラインに関わる最新の防災プロダクトが紹介されているほか、東京大学の大学院生が地震に対するまちづくりを設計した「復興デザインスタジオ」の成果も展示されています。
◆科博らしい地震対策技術・ガジェットの展示が多め
展示の見どころは科学博物館らしく、震災被害に立ち向かうための機械や建築、最先端技術が数多く展示されていること。展示物とキャプションを交互に見ていると、地震対策というシリアスな題材ながら「この機械がこう活躍するのか!」と何となくワクワクしてしまいます。
特に注目すべきは地震計の変遷でしょう。かつてロール紙と大型の機械を必要としていた地震計が…
今ではコンパクトなユニットにまで小型化しており、100年間での技術進歩の度合いを実感させてくれます。
台東区民にとっては見慣れた存在である、隅田川に架かる橋のミニチュアも展示されています。
これらも元をたどれば、関東大震災後に帝都復興事業の一環として造られたものの一種。私達が何気なく往来している橋が実は震災復興の遺産であることに、驚かれる方もいそうですね。
◆絵画と写真で見比べる浅草・凌雲閣の倒壊
また、台東区も関東大震災で大きな被害を受けた地域の一つ。
とりわけ有名なのは凌雲閣(浅草十二階)の崩壊です。当時は都内でも随一の高層建築とされていましたが、この「雲を凌ぐ」高さに見えた塔も、関東大震災で見る影なく破壊されてしまいました。
この凌雲閣については、絵画と写真の2種類が展示されています。絵画の方は震災被害の悲惨さと混沌ぶりが克明に描かれ、まさに鬼気迫る雰囲気。
対して写真の方は、白黒写真をAI技術と人の手で着彩してリアルな被害状況を確認できます。
この二つを見比べることで、当時の状況がより深く理解でき、想像も深まるでしょう。
◆科博の建物自体が震災復興のシンボル
実は、国立科学博物館の成立経緯にも、関東大震災が大きく関わっています。
科博の前身にあたる東京博物館はもともと、文京区の湯島聖堂内に位置していましたが、関東大震災によって貴重な資料・標本もろとも全焼してしまいました。
しかし、そこから標本や資料を懸命に再度収集し、1931年には復興建築として「東京科学博物館」が竣工、開館します。
この建物が、現在の私達が目にしている国立科学博物館・日本館なのです。いわば科博そのものが、関東大震災にも屈せず立ち上がろうとする、人々の熱意の結晶だと呼べるかも知れません。
記事冒頭にも書いたように、最近の国立科学博物館はクラウドファンディングによる資金調達で話題となりました。これもまた、コロナ禍や燃料費・原材料費の高騰など、大きな困難に立ち向かうための施策です。
こうした科博の強かな在り方は、100年前の震災から現在に至るまで受け継がれてきたもの。願わくば、さらに100年後まで続いてほしいと思わせてくれる企画展でした。
関東大震災100年企画展「震災からのあゆみ -未来へつなげる科学技術-」
【会場】
国立科学博物館
[第1会場] 日本館1階・企画展示室
[第2会場] 地球館1階・オープンスペース
[特設会場] 日本館1階・中央ホール ※10月11日(水)~
【住所】
東京都台東区上野公園 7-20
【最寄駅】
JR上野駅・公園口から徒歩5分
【会期】
2023(令和5)年9月1日(金)~11月26日(日)
【開館時間】
9時~17時(入館は16時30分まで)
【休館日】
月曜日
※月曜日が祝日の場合は火曜日
※ただし10月2日(月)は開館
【入館料】
一般・大学生:630円
※常設展示料金のみで入館可
※高校生以下および65歳以上無料
【リンク】
公式ホームページ