EUのIT規制、グーグルやツイッターなど19サービス対象 違法コンテンツに巨額制裁金
欧州連合(EU)の欧州委員会は4月下旬、巨大IT(情報技術)企業に違法コンテンツなどへの対応を強化するよう義務づける「デジタルサービス法(DSA)」の適用対象を公表した。
インターネットの誕生以来最大の改革
TwitterやFacebook、米アップルのAppStoreなど17サービスを「巨大オンラインプラットフォーム」に、グーグル検索と米マイクロソフトのBingを「巨大オンライン検索エンジン」に指定した。規制対象に指定されたこれら計19のサービスの運営企業は、4カ月以内に措置を講じなければならない。
DSAは2020年に法案が提出された後、22年4月に欧州議会などと合意に達し、22年11月に発効した。今後は運用段階に入り、規則が適用される。米ウォール・ストリート・ジャーナルは、「インターネットの誕生以来、西側の諸国のオンラインコンテンツに対する最大の大改革」と報じている。
従来法では、例えば米国の「通信品位法230条」のように、ユーザーが投稿した問題のあるコンテンツについて、企業は一定の措置を講じれば、法的責任を免除されることが一般的だった。だがDSAの下で企業は、表現の自由や選挙参加など市民生活にもたらすリスクを定期的に評価し、強固なシステムでそれらに対処していることを当局に示す必要がある。
「大規模なサービスには大規模な責任が伴う」
EUのブルトン欧州委員(域内市場担当)は「大規模なサービスには大規模な責任が伴う」とDSAの重要性を強調し、「23年8月下旬に規則が適用される前に企業に修正の機会を与えている。これにより企業は制裁リスクを回避できる」と述べた。
DSAでは児童ポルノなどの違法コンテンツやヘイトスピーチ(憎悪表現)、偽情報、違法商品・サービスなどの速やかな削除を義務づける。また人種や民族、宗教、健康情報、性的指向などの「センシティブデータ」を基にしたターゲティング(追跡型)広告を禁じる。子供を対象にしたターゲティング広告も禁止する。
制裁金は世界年間売上高の最大6%
DSAはEU域内のすべてのネットサービスを対象とするが、今回、域内月間利用者数が4500万人以上の19サービスを、最も厳しい規則が適用されるサービスに指定した。SNS(交流サイト)ではTwitterやFacebookのほか、TikTok、Instagram、Snapchat、Pinterestも対象となった。米グーグルは、YouTube、Google Play、Google Maps、Google Shoppingのサービスも指定された。電子商取引(EC)では米アマゾン・ドット・コムや中国のアリババ集団の「AliExpress」なども対象になった。
EUはこれらサービスの運営会社に対し、リスク分析・評価を実施させ、コンテンツ表示のために使用するアルゴリズムの透明性を高めるように求めている。同法に違反した場合は、世界年間売上高の最大6%の制裁金が科される可能性がある。違反が繰り返される場合はサービスが遮断される可能性もある。
ウォール・ストリート・ジャーナルによると、アップルは声明で、「以前からアプリストアについてDSAの規則に従うことを約束していた」と述べた。アマゾンは「新しい規則を順守するための計画を最終調整中」と述べた。グーグルは「EU当局者と協力して規則に従うための取り組みを進めている」とした。Facebookなどを運営する米メタは「透明性ツールと報告システムを拡大するなど、DSAの要件を満たすための措置を講じている」と述べている。
- (本コラム記事は「JBpress」2023年4月27日号に掲載された記事を基にその後の最新情報を加えて再編集したものです)