【来日直前インタビュー】トニー・マカパイン、2018年5月にヴィニー・ムーアと合体・来日ライヴ
トニー・マカパインがヴィニー・ムーアと合体。2018年5月、カップリング来日公演を行う。
超絶テクニックを誇る2大スーパー・ギタリスト。トニーは2015年9月に日本公演が発表されていたが、直前に大腸ガンの治療のため中止になっていた。だが彼は完全復調を果たし、ベスト・コンディションで日本のステージに立つ。1987年の名盤アルバム『マキシマム・セキュリティ』完全再現とベスト選曲によるライヴは、瞬きすら許されないスリリングなものになるだろう。
それに合流するのがヴィニー・ムーアだ。現在UFOでプレイする彼はソロ・デビュー作『マインズ・アイ』(1986)で共演して以来のトニーの盟友。2人のギター・バトルは、時空を超えた“神々の戦い”となる。
来日を前にして、トニーがインタビューに応じてくれた。彼は元気そうな声で、日本公演に向けた熱い意気込みを語った。
日本には100%のベスト・コンディションで行くよ
●2015年の来日が中止となって、日本のファンは心配していましたが、最新アルバム『デス・オブ・ローゼズ』を聴くと、あなたがグッド・シェイプであることが判って安心しました。
うん、健康状態は良好だよ。病気になったのはもう2年前で、すごく前のことのように感じる。ライヴもやっているし、日本でのショーは最高のものになるよ。
●『デス・オブ・ローゼズ』は退院してから作ったのですか?
入院中にもアイディアが浮かんだし、退院してからも曲を書いた。ロサンゼルスと、嫁の故郷のスペインで過ごして、幾つも曲を書いたんだ。とてもクリエイティヴな作業だった。
●奥様はスペインのどちらの出身なのですか?
スペイン北部のフランス国境に近いサンセバスティアン出身なんだ。彼女はシンガーで、スティーヴ・ヴァイのショーで出会ったんだよ。2012年に結婚して、ロサンゼルスとサンセバスティアンを行き来している。バスク地方の都市なんだ。俺はピアノでスペイン本土のエンリケ・グラナドスなどの曲をずっと演奏してきたけど、バスク地方の音楽には独特な個性がある。その文化には日々インスピレーションを受けるよ。
●あなたのアルバムで、バスク音楽の要素がある曲はありますか?
いや、単に音楽スタイルを模倣するのではなく、より深い内面への影響を受けているんだ。自分が普段プレイしているスタイルから距離を置くことで、新鮮なインスピレーションを受けることが出来るよ。
●2015年のインタビュー時に、前作『コンクリート・ガーデンズ』に続くアルバムを作っていると話していましたが、それが『デス・オブ・ローゼズ』となったのですか?
いや、ほぼ別の作品だ。アルバム作りのプロセスというのは、その時点での自分のエモーションを表現するものだからね。だから2015年にイメージしていたアルバム像と『デス・オブ・ローゼズ』はかなり異なるものとなった。それと同様に、病気だった頃と現在では、俺は別の地点にいる。病気のことは引き摺っていないんだ。日本には100%のベスト・コンディションで行くよ。
●手術後、ライヴはいつから再開しているのですか?
2016年6月、フランス でミッシェル・ポルナレフとやったショーがカムバックとなった。その後、10月にLAの“ベイクド・ポテト”で単独のショー、それからスティーヴ・ヴァイとの北米ツアーをやったよ。
●ミッシェル・ポルナレフとの交流について教えて下さい。
ミッシェルとは2007年以来、何度かツアーでバックを務めているんだ。CABのベーシスト、バニー・ブルネルの紹介でやることになったんだよ。ミッシェルはフランスのポピュラー音楽を代表するアーティストで、さまざまな音楽スタイルを経てきた。だから彼のバックでやるのは勉強になるし、楽しんでいるよ。俺がミッシェルと一緒にやっているとき、パリのベルシーでのショーにジョニー・アリデイが来たんだ。その頃ジョニーはあまり体調が良くなかったみたいだけど、ミッシェルと旧交を温めていた。しばらく後に、ジョニーは亡くなってしまったんだ(2017年12月5日)。
●ポルナレフは最近(2017年12月)、キャリアの集大成といえるCD23枚組ボックス・セット『Pop Rock En Stock』をリリースしましたね。
うん、あのボックスには2007年ベルシー・アリーナと2016年オランピア劇場でのライヴ・テイクが入っていて、俺も参加しているよ。あまり派手なシュレッド・プレイはしていないけどね。
ひとつのオーガニックな流れで自分とヴィニー、2人のショーをやる
●今回の日本公演はヴィニー・ムーアとのカップリングとなっていますが、どのようなライヴになるでしょうか?
まず『マキシマム・セキュリティ』(1987)を全曲再現するんだ。それから歴代のナンバーもプレイするし、ヴィニーの曲で俺がプレイしたり、サプライズも幾つか用意していくよ。ヴォーカルは無しの、インストゥルメンタル・ミュージックの一夜だ。きっと楽しいものになるよ。
●ショーの構成はどのようなものになりますか?まずヴィニーのセットをやってから、あなたのセットをやる二部構成?
いや、ひとつのオーガニックな流れで2人のショーをやることになる。必ずしもヴィニーと俺がステージに出ずっぱりというわけではなく、どっちかが単独でスポットライトを浴びる瞬間もあるだろうし、ちょっとしたピアノ・ソロ演奏もやると思う。ヴィニーのファンも、俺のファンも、2人のギター・プレイをたっぷり聴くことが出来る、ひとつのビッグ・ショーになるよ。
●2015年のショーは『マキシマム・セキュリティ』と『エッジ・オブ・インサニティ』の2枚のアルバムの完全再現が予定されていましたが、今回も『エッジ・オブ・インサニティ』からの曲は演奏されますか?
完全再現はないけど、『エッジ・オブ・インサニティ』から何曲かはプレイするよ。ただ、今までたくさんアルバムを出してきたし、今回はヴィニーとの共演ライヴだから、やるべき曲をリストアップしていったら膨大な数になってしまうんだ。セットリストを決めるのは難しいよ。ショーの流れとか、お客さんの盛り上がりを考えながら曲を選んでいくのは楽しいけどね。
●あなたはヴィニーのアルバムではキーボード奏者として参加していますが、2人のギター・バトルも披露されるでしょうか?
もちろん!ヴィニーと俺の異なったスタイルの対比が面白いバトルになるよ。俺はクラシックからインスパイアされたプレイをするし、ヴィニーはクラシック音楽のバックグラウンドはないけど、クラシック・ロックに通じていて、素晴らしいフィーリングとテクニックを持っている。彼がUFOに加入したのは驚いたけど、彼に相応しい大舞台だと思った。実際にライヴを見て、その素晴らしさを再確認したよ。UFOはマイケル・シェンカーという凄いギタリストがいたけど、そのテイストを踏襲しながら、ヴィニーならではの個性も取り入れていた。
●ヴィニーとはいつから交流があるのですか?
ヴィニーとは1980年代から友達なんだ。彼のファースト・ソロ・アルバム『マインズ・アイ』(1986)でキーボードを弾くことになって、カリフォルニア州コタティの“プレイリー・サン”スタジオで会ったのが最初だった。それから彼の『ザ・メイズ』(1999)でもキーボードをプレイしたし、ずっと友達だよ。2人とも音楽を聴くことも、演奏することも愛する仲間なんだ。でも不思議なことにステージで共演する機会はずっとなくて、2010年、ニュージーランドのギター・フェスティバルでやっと実現したんだ。日本でまた彼と一緒に出来るのは嬉しいね。
●日本公演に同行するリズム・プレイヤー達について教えて下さい。
ピート・グリフィン(ベース)は長年の友達なんだ。一次元的でなく、インストゥルメンタル・ミュージックに多角的に迫るタイプのミュージシャンだよ。ゲルゴ・ボルライ(ドラムス)はアル・ディ・メオラやスコット・ヘンダーソンとプレイしたこともあるドラマーでありミュージシャンだ。彼はロックやジャズなど、さまざまな音楽を心得ていて、ギターもベースもこなすし、プロデュースも出来る。彼と一緒にプレイするのは、目を開かされる瞬間の連続だよ。
『マキシマム・セキュリティ』は俺の原点だ
●『マキシマム・セキュリティ』を作った時期のことを教えて下さい。
最初に俺のことを“発見”してデビューさせたのは、『シュラプネル・レコーズ』のマイク・ヴァーニーだったんだ。彼とはよく一緒に仕事をして、『エッジ・オブ・インサニティ』を出してからヴィニーの『マインズ・アイ』、それとプロジェクト:ドライヴァーのアルバムとかね。『マキシマム・セキュリティ』はマイクがプロデュースを手がけたけど、ビジネス面はローリング・ストーンズやメタリカで知られるクリフ・バーンステインに担当してもらうことになった。『エッジ・オブ・インサニティ』は3、4日でレコーディングしたけど、『マキシマム・セキュリティ』は1ヶ月近くかけて、よりプロフェッショナルなサウンドになったよ。まあ、1ヶ月といっても決して長いとはいえないけどね。
●当時は『シュラプネル』を中心に、ギター・インストゥルメンタルがひとつのブームとなりましたが、当時のあなたの心境はどんなものでしたか?
ブームとはまったく関係なく、自分の信じる音楽をやっていたよ。それぞれのギタリストが異なったことをやっていたと思うけど、お互いのアルバムに参加しあったり、最高のリズム・セクションと共演したり、一種のコミュニティ意識があったことは確かだね。俺にとっては、とてもスリリングな時期だったよ。自分の音楽がレコードとして発売されて、アメリカ各地のラジオ局を回ってインタビューを受けたりしたのも興味深い経験だった。『マキシマム・セキュリティ』ではジェフ・ワトソンやジョージ・リンチみたいな凄いギタリスト達と共演できたのも楽しかったし、ディーン・カストロノヴォやアトマ・アヌールのような素晴らしいドラマーとも一緒にやれた。前作以上に自分のやりたいことを出来たアルバムだったよ。当時ならではの勢いも感じられるし、俺のスタイルを確立させたアルバムだったといえる。このアルバムで自分のアイデンティティの立脚点を築いたおかげで『プリモニション』(1994)みたいな、音楽性の幅を拡げたアルバムを作ることが出来たんだ。それがさらにバニー・ブルネル、デニス・チェンバーズとのプロジェクト“CAB”にも繋がっていったし、プラネットXもそうだ。ひとつのことが次へと連なって、現在の自分がある。クリエイティヴであり続けることは喜びだよ。そんな自分のある意味“原点”にあるのが、『マキシマム・セキュリティ』なんだ。
●日本公演を楽しみにしています!
うん、俺もすごく楽しみなんだ。これまで何度も日本でプレイしたことがある。ポートノイ/シーン/マカパイン/シェリニアンやプラネットX、スティーヴ・ヴァイのバンド、リング・オブ・ファイアー...ギター・クリニックもやったし、いろんなバンドで日本を訪れてきた。でも、自分のソロ・ショーを日本でやるのはこれが初めてなんだ。ヴィニーと一緒だから純然たるソロ・ライヴではないけど、自分の音楽をたっぷりとプレイ出来るのは嬉しいよ。俺自身、すごくエキサイトしている。
●ところで『デス・オブ・ローゼズ』収録曲の“Shundor Prithibi”とはどういう意味ですか?
ヒンディー語かサンスクリット語か知らないけど、インドの言葉で“美しい、理想の世界”という意味だよ。その言葉の美しさに魅力を感じたんだ。
【2015年のインタビュー】
【MacALPINE / MOORE Japan Tour 2018】
- 5月30日(水)東京・渋谷クラブクアトロ
開場18:00/開演19:00
- 5月31日(木)大阪・梅田クラブクアトロ
開場18:00/開演19:00
公演公式ウェブサイト:M&Iカンパニー http://www.mandicompany.co.jp/MacAlpineMoore.html