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まもなく建て替え!築88年のかわいらしい木造駅舎 東海道本線 用宗駅(静岡県静岡市駿河区)

清水要鉄道ライター
用宗駅

先月19日、「用宗を楽しくする会」が建て替え予定の用宗(もちむね)駅をデジタルデータで残そうと取り組んでいることが静岡第一テレビで報じられた。

【JR用宗駅】建て替え前に“デジタル空間”に残す取り組み…資金募るクラウドファンディングも(静岡市)

用宗駅は静岡市駿河区にある東海道本線の駅で、今ではすっかり少なくなった戦前からの木造駅舎が残る駅だ。具体的な建て替え計画は公表されていないものの、今見ておいた方がいい駅舎の一つだろう。

駅舎
駅舎

用宗駅は明治42(1909)年11月1日開業。当時の所在地は安倍郡長田(おさだ)村で、駅名は明治の町村制まで存在していた有渡郡用宗村から取られている。用宗は戦国時代には「持船」と表記されていた地名で、古くからあった湊に由来するという。「もちふね」が「もちむね」に転訛して駅名になったのだろう。用宗を含む長田村は昭和9(1934)年10月1日に静岡市に編入、平成17(2005)年4月1日の政令指定都市移行で駿河区の一部となっている。

駅舎内
駅舎内

駅舎は昭和11(1936)年1月に建て替えられたもの。築88年と古いが、JRになってから改装されているため、あまり古さは感じさせない。駅舎内にはみどりの窓口も設置されている。

ホーム
ホーム

ホームは2面3線。駅舎側の1番線はあまり使われておらず、平日の18時18分発浜松行きが使用するのみだ。2番線が下り浜松方面、3番線が上り静岡方面となっている。ホーム間を結ぶ跨線橋も古いが、エレベーター設置によりバリアフリー化されている。

駅舎(ホーム側)
駅舎(ホーム側)

ホームの一部は石積みで、明治の開業以来110年以上の長い歴史を感じさせてくれる。駅舎の開口部がホームに直接面しておらず妻部に設けられているのは、嵩上げしたホームと駅舎の間で段差が生じていることによるものだ。ホームの嵩上げ前はゴミ箱の左の窓の所に開口部があったのだろう。

駅裏
駅裏

駅裏に人家は少なく、すぐそばを東海道新幹線の高架が通っている。すぐそばまで山が迫ってきている地形のことなども考えると、駅舎改築に合わせてもう一つの出入口が造られる可能性は低いだろう。

余談だが、用宗駅後方を抜けた新幹線はまもなく日本坂トンネルに突入する。このトンネルは戦前の弾丸列車計画の一環として建設されたもので、戦後に石部トンネルが改良されるまで18年ほど東海道本線が使用していた。

駅前
駅前

駅前には大きな一本松が立っている。詳細は不明だが、大きさから見てかなりの樹齢だろう。かわいらしい洋風駅舎と純和風な景観を演出する松の木の取り合わせはなかなか絵になる。駅舎の改築後もこの松の木が残って変わりゆく用宗駅を見守り続けていくことを願うばかりだ。

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鉄道ライター

駅に降りることが好きな「降り鉄」で、全駅訪問目指して全国の駅を巡る日々。

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