Yahoo!ニュース

危ういところで詐欺を防いだ男性 偽通販サイトの被害に遭わないためのポイントは?

多田文明詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト
(写真:アフロ)

「Google検索で出てきた通販サイトに購入の申し込みをしたのですが、何かおかしいなと思って、注文のキャンセルメールをしました」と、30代男性の田島さん(仮名)は話します。小さな違和感を覚えての行動は大事なことです。危うく偽通販サイトに、だまされそうになった男性の事例を通じて、被害に遭わないためのポイントを考えます。

幅広い人たちを引っかけるために様々な商品を並べる偽通販サイト

田島さんは、通販サイト(A・M)で、あるアーティストの商品を見つけました。値段は6200円です。

「ファンクラブ限定のDVDで、レアなものでした」(田島さん)

商品をカートに入れて、会員登録の画面に進みます。住所やメールアドレスなどの連絡先を入力して、購入の申し込みをします。

現在は、その通販サイトにはアクセスはできませんが、当時、スクショしたものを見せてもらうと、DVDだけでなくアウトドア商品や日用品、チケットなど様々なものを扱っています。幅広い人たちを引っかけるためにたくさんの商品を並べていることがうかがえます。

最近の偽通販サイトはうまく作られていますので、商品を紹介するページだけを見ただけでは、なかなか詐欺サイトだと見極めることは難しいですが、サイトを隅々まで見ることで、そこが信頼をおけるところかどうかを見抜くことはできます。

特定商取引法において、事業者に関する表記が必要

特定商取引法において、通販サイトには会社名や連絡先などの事業者に関する表記が定められています。このページがなかったり、記載に不備のあったりするところは法律を守っていませんので、購入の申し込みをしないことが被害に遭わないための大原則になります。

今回、田島さんがアクセスした通販サイトはどうかというと、住所や電話番号、メールアドレスはしっかりと記載されていました。一見すると、信頼おけそうなサイトに思えるかもしれませんが、ここには罠が潜んでいました。

住所は、和歌山県で、会社名は個人の男性名になっています。さらに問い合わせの電話番号が記載されていましたので、数回かけてみました。呼び出し音はなりますが、誰も出てきません。

ファックス番号に電話をかけると、都内のバーにつながる

もう一つ、ファックス番号がありましたので、こちらにもかけてみました。

すると、「○○〇バー○○です」と元気のよい男性の声が響き、和歌山ではなく、都内の飲食店につながりました。

私が「こちらはファックス番号でしょうか?」と尋ねると「いいえ、違います」と答えます。

そこで、ある偽通販サイトらしきところに、この電話番号が載っていたことを話すと「うちの電話番号が勝手に使われている可能性がありますね」と話します。

男性からは「またか」というニュアンスが感じられたので「もしかして前も同じような電話がかかってきましたか?」と尋ねると「はい、全く関係のないところから問い合わせがありまして」と答えます。過去には住所が勝手に使われていたこともあり、お店の側もかなり迷惑している様子でした。いずれにしても、嘘の電話番号を記載しているので、偽通販サイトであることは間違いありません。

2021年に、他人のクレジットカードを不正使用して商品をだまし取る詐欺グループが、飲食店の電話番号を勝手に使うケースがあるという記事を書きましたが、今も詐欺グループによる同じような行為が続いていることがわかります。

横行する不正注文の実態を暴く!今、飲食店の電話番号が悪用されている。(Yahoo!ニュース エキスパート 多田文明)

サイトには不自然な日本語も

サイト内の文言をよく見ると、やはり不自然な日本語がありました。

「安全なサイト」の項目の後半部に「私たちがしたことは、安全で幸せな買い物をもたらすことでした」となっています。

「すばらしいサービス」には「担当者は、適切な製品をオンラインで見つけて1日中適応させるのに役立ちます」

「世界中の無料税」には「その他、私たちはあなたのためにそれを解決します」と記載されており、このような不自然な日本語から、日本に住所を置く会社が運営する通販サイトではないことは明らかです。

感じた二つの違和感

田島さんは、どこで違和感を覚えたのでしょうか。二つあったといいます。

一つ目が「DVDを申し込む時に、カードで支払おうと考えてたんですけど、選択するページがなかったんです。次のページで選ぶのかなと思ったら、すぐに購入の申し込みになった」と話します。

二つ目はその後にきた注文のメールです。

「個人名でメールがきたので、おかしいなと思いました。それにメールには注文金額とお届け先と請求先、支払いは、銀行振り込みとなっていましたが、肝心な振込先が書いてないんです」この二つの違和感から、すぐにキャンセルのメールをしています。

パスワードを使い回してしまった恐怖は残る

しかし田島さんには心配なことがあるといいます。

「他のサイトでも使っている、同じパスワードをこのサイトに入れてしまったんです。不正にログインされて、クレジット情報が盗まれるのではないかが心配です」田島さんが偽通販サイトかもしれないと思い、同じパスワードを使っているBサイトにアクセスした時に、ログインができなかったそうです。

「慌てていて、パスワードを間違って入力したのか、それとも誰かにパスワードを変えられてたのかわからないのです」

偽通販サイトの難は逃れましたが、パスワードを使い回してしまった恐怖の念は残り続けています。

そこで、Bサイト内のログイン情報を本人に見てもらいましたが、本人がアクセスしたものしかないようなので、筆者の考えでは、詐欺に遭うかもしれないと動揺してしまい、パスワードを打ち間違えたことが原因でログインできなかった可能性が高いと思っています。最終的には、パスワードを忘れた時のページを通じて、スマートフォンでの指紋認証からログインをして、パスワードを変えたそうです。

このように、同じパスワードを他のサイトで使い回すことは、後に不安感が残り続けることになりますので、信頼おけるかどうかわからない通販サイトには絶対に行わないようにしてください。

偽通販サイトによる返金詐欺にも要注意

田島さんがアクセスした偽通販サイトの場合、おそらく後にメールで振込先の銀行口座が送られてくると思いますが、それは不正に取得した銀行口座で、お金をだまし取られることになります。彼の場合はキャンセルしたので詐欺には遭いませんでしたが、最近は、返金詐欺もありますので、こちらへの注意も必要です。

国民生活センターは、ネットショッピングの代金を返金するふりをして、逆に送金させる手口への注意喚起をしています。

通販サイトで注文をして、銀行などに代金を振り込んだ後に、業者から「欠品のため、注文をキャンセルします」というメールがあり「決済アプリを使って返金の手続きをする」といわれます。そしてLINEを通じて、QRコードを読み取らせて、逆にお金を振り込ませようとします。

同センターの発表する相談にも、7000円ほどのアクセサリーを購入した50代男性は「払い戻しは○○ペイで行います」との話を受けた後に、LINEの友達登録をするように指示がありました。ビデオ通話で○○ペイに指示された数字を入力したところ、約10万円の送金をして被害に遭ったといいます。

田島さんがアクセスしたサイトにもその可能性を感じています。このサイトの企業方針のなかに「15日間の満足度返品ポリシーを提供しています」とありますが、さらにお金をだまし取るための布石とも考えられます。返品、返金することを謳っているから安心なサイトとは思わないようにしてください。それは購入者を安心させるための偽通販サイトの罠かもしれません。

詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト

2001年~02年まで、誘われたらついていく雑誌連載を担当。潜入は100ヶ所以上。20年の取材経験から、あらゆる詐欺・悪質商法の実態に精通。「ついていったらこうなった」(彩図社)は番組化し、特番で第8弾まで放送。多数のテレビ番組に出演している。 旧統一教会の元信者だった経験をもとに、教団の問題だけでなく世の中で行われる騙しの手口をいち早く見抜き、被害防止のための講演、講座も行う。2017年~2018年に消費者庁「若者の消費者被害の心理的要因からの分析に係る検討会」の委員を務める。近著に『信じる者は、ダマされる。~元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』(清談社Publico)

多田文明の最近の記事