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CSで3Pショットが大当たりの山崎稜の強みは、何事にも動じない冷静沈着なメンタリティ

青木崇Basketball Writer
4Qに中村からのパスで山崎が決めた3Pは広島を勢いづけた (C)B.LEAGUE

 ゲーム2で最高のハイライトシーンは、広島ドラゴンフライズのニック・メイヨがリバウンド争いでボールをタップするというプレーから始まった。弾かれたボールが前にいた中村拓人に渡ると、そのまま速攻でゴールへアタック。琉球ゴールデンキングスのヴィック・ローは必死になってディフェンスに戻ったが、中村はレイアップに行くと見せかけて、左コーナーへキックアウトのパスを出す。

 そこに走っていたのは、チャンピオンシップ(CS)に入ってから57.8%という高確率で3Pショットを決め続けていた山崎稜。琉球ベンチの目の前でノーマークとなった山崎は、この試合で4本目となる3Pショットを決めたのである。

 パスを出した直後に中村が右手を挙げていたのは、山崎が絶対に決めてくれるという確固たる自信の表れ。この3Pショットでリードを11点に広げて勝利に大きく前進したということでも、広島にとっては大きな意味があった。山崎はあのシーンを次にように振り返る。

「あれは走っている最中にアイコンタクトができていた。パスが来ると思いつつ、拓人もリバースレイアップが得意なので、ちょっと期待しながら(左コーナーで)待ってました」

 チームメイトたちが大喜びしている中でも、ビッグショットを決めた山崎は表情を変えることなく、いつものようにディフェンスに戻っていた。それは、セミファイナルで対戦した名古屋ダイヤモンドドルフィンズとのゲーム3、広島が4Q中盤で同点に追いつかれた直後にも似たようなシーンがあった。

 名古屋がディフェンスでスウィッチをした直後、ドウェイン・エバンスからボールをもらった山崎は、ティム・ソアレスの対応が甘くなった瞬間を逃さず、ラインの1m以上うしろからでも躊躇することなく3Pショットを放ち、見事に決めていたのである。その直後、ディフェンスに戻るタイミングでチームメイトの手をタッチしていたが、その表情は淡々としていた。

 CSで試合を重ねるごとに、山崎に対するディフェンスは厳しさを増している。CSに入ってからの3P試投数は、三遠ネオフェニックスとの9本が最多で、セミファイナル以降はすべて6本以下。しかし、そんな状況下でも高確率で成功できているのは、ボールのないところで動く中で自分のショットを打てるタイミングを探し続ける辛抱強さの成果だ。山崎は次のような言葉を残している。

「本当にその通りで、僕がチームのオフェンスのシステムで本来自分が打てる形でないプレーのコールがあるんですけど、そういった中で無理に動いてもうまくいかないです。本当にちょっとした隙から空くのをずっと待っているし、ビッグマンが3人の時でもパスがうまい選手が揃っているので、そこはよく見てくれていたと感じています」

ビッグショットを決めた後でもクールな姿勢を崩さない山崎 (C)B.LEAGUE
ビッグショットを決めた後でもクールな姿勢を崩さない山崎 (C)B.LEAGUE

 山崎の辛抱強さと何が起きても簡単に動じないメンタリティは、ターンオーバーといったミスをした後や不本意なファウルの笛を吹かれた時にも現れる。両手を叩いて悔しそうな素振りを見せても、フラストレーションを露わにするようなことはない。このメンタリティは正に、山崎がCSの大舞台で試合を重ねるごとに強みとなっている。どんな状況でもポーカーフェイスを維持できる理由について質問されると、山崎はこう返答した。

「試合中に自分のシュートが決まってもゲームは進んでいきますし、最後まで何があるかわからない。本当に試合が終わって勝ったら喜びを出せればと思っているので、試合中は落ち着いてプレーしています。バスケットをやり始めたからずっとそうです」

 チームが厳しい状況になった際は、すぐにハドルを組むように声をかけるなど、リーダーシップを発揮するという点でも、山崎は在籍1年目ながらも広島にとって重要な存在になっている。高校卒業後にスラムダンク奨学金で渡米し、その後ジュニア・カレッジでプレーした経験があり、外国籍選手やカイル・ミリングコーチと英語でコミュニケーションができることも大きい。

CSでは全試合2ケタ得点、57.8%という高確率で3Pを決めている山崎 (C)B.LEAGUE
CSでは全試合2ケタ得点、57.8%という高確率で3Pを決めている山崎 (C)B.LEAGUE

「こういった大舞台で自分のパフォーマンスができてうれしいというか、すごく楽しいです」と話す山崎は、三遠のゲーム2を除くと、最低でも3本の3Pショットを決めてきた。ファイナルでプレーする選手の中では唯一、CSの全試合で2ケタ得点を記録している。現時点でCSのMVPを選ぶのであれば、山崎は最有力候補と言ってもいいだろう。

 ゲーム3での琉球は、山崎に対してより厳しいディフェンス対応で臨んでくるはずだ。激しさを増す攻防の中であっても、一瞬の隙を突いて放たれる山崎の3Pショットが炸裂することで、広島は頂点に立てるのか? その答えは5月28日の夜に出る。

Basketball Writer

群馬県前橋市出身。月刊バスケットボール、HOOPの編集者を務めた後、98年10月からライターとしてアメリカ・ミシガン州を拠点に12年間、NBA、WNBA、NCAA、FIBAワールドカップといった国際大会など様々なバスケットボール・イベントを取材。2011年から地元に戻り、高校生やトップリーグといった国内、NIKE ALL ASIA CAMPといったアジアでの取材機会を増やすなど、幅広く活動している。

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