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照ノ富士にまたも土をつけたのは同期の明生。今日の結びは御嶽海、波乱は続くのか

飯塚さきスポーツライター/相撲ライター
写真:日刊スポーツ/アフロ

盤石と思われた新横綱・照ノ富士に、またも土がついた。大波乱の展開を生んだのは、7敗と後がない新関脇の明生だ。これまで4回の対戦があったが、一度も照ノ富士に勝てたことはなかった。そこからもぎ取った白星は、本人にとってはもちろん、場所の行方を左右する意味でも、大きな大きな1勝となった。

見事な相撲で横綱を下した明生

前日まで、貴景勝・正代の2大関に敗れていた明生。新関脇として、苦しい場所を強いられていた。

照ノ富士とは、2011年5月の技量審査場所で初土俵を踏んだ同期生だ。波乱万丈な土俵人生を歩んできている照ノ富士だが、明生はいつもその背中を追ってきたといっていい。この日も気合十分な新横綱。明生はどう立ち向かっていくのか。

立ち合い。なんと、明生が頭から当たって踏み込み、照ノ富士の体を押し込んだ。右を深く差し込むと、思い切った投げを打つ。いったんはこらえられたが、向正面の土俵際でもう一度思い切った投げを打ち、横綱がそのまま土俵を割った。国技館は、割れんばかりの拍手に包まれた。

まだまだわからない秋場所 やはり相撲は面白い

この日、唯一2敗で追いかけていた妙義龍が負けて、照ノ富士と2差がついてしまったが、これで3敗勢との差は1になった。照ノ富士を追いかけるのは、阿武咲、隠岐の海、妙義龍、遠藤の4人。序盤こそ、盤石な新横綱を前に、優勝はもう彼しかいないかのように思われたが、ここにきて展開がわからなくなった。

序盤だけを見ると、カド番で場所を迎えた大関・貴景勝の調子も案じられていたが、この日宝富士を見事破って勝ち越しを決め、黒星を4にとどめており、見る者をいい意味で裏切ってくれている。令和に生きる”武士”、貴景勝も、ここからさらに奮起し、星を伸ばしてくるかもしれない。

十三日目となる今日、照ノ富士に対するのは、関脇の御嶽海。日によって波はあるものの、力が出るときの御嶽海であれば、横綱を下す可能性は大いにある。そうなったら「面白くなる」といえば、照ノ富士にあとで怒られそうな気はするが、「それでも、終わってみれば照ノ富士だった」という結末を見据えるからこそ、その過程を楽しみたいのだと書いておこう。

常に”ダークホース”といわれる御嶽海が、そのダークホースっぷりを見せてくれる日になるのか。十三日目も結びに注目だ。

スポーツライター/相撲ライター

1989(平成元)年生まれ、さいたま市出身。早稲田大学国際教養学部卒業。ベースボール・マガジン社に勤務後、2018年に独立。フリーのスポーツライター・相撲ライターとして『相撲』(同社)、『Number Web』(文藝春秋)などで執筆中。2019年ラグビーワールドカップでは、アメリカ代表チーム通訳として1カ月間帯同した。著書に『日本で力士になるということ 外国出身力士の魂』、構成・インタビューを担当した横綱・照ノ富士の著書『奈落の底から見上げた明日』。

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