シリアでトルコのドローン攻撃、イランの民兵、米シーザー法、アル=カーイダどうしの衝突に反対するデモ
シリア各地では、政府支配地、クルド民族主義組織の民主統一党(PYD)が主導する北・東クルド自治局の支配地、トルコ占領地、シリアのアル=カーイダであるシャーム解放機構が軍事・治安権限を握る「解放区」で、さまざまな抗議デモが続いた。
政府支配地
ダイル・ザウル県では、国営のシリア・アラブ通信(SANA)によると、イラク国境に面するユーフラテス川西岸のブーカマール市で6月23日、米国のシーザー・シリア市民保護法に抗議するデモが行われた。
政府との連帯を訴えるデモが行われる一方、2018年まで反体制派の支配下にあったダルアー県では抗議デモが相次いだ。
ダルアー県では、英国で活動する反体制系NGOのシリア人権監視団によると、ブスラー・シャーム市で6月23日、「イランの民兵」の退去や逮捕者釈放を求めるデモが発生し、住民数百人が参加した。
また、6月24日には、ダルアー市で女性1人が拘束されたことに反発するかたちで、ウンム・マヤーズィン町の住民が抗議デモを行い、逮捕者の釈放を要求した。
さらに25日晩には、フラーク市で若者数十人がデモを行い、「イランの民兵」の退去や体制打倒を訴えた。
北・東シリア自治局
北・東シリア自治局の支配地では、6月24日、ダイル・ザウル県のアブー・ハマーム市で生活レベル向上や汚職撲滅を求める抗議デモが発生した。
また同日、政府との共同統治下にあるアイン・アラブ(コバネ)市では、トルコ軍無人航空機(ドローン)が同市近郊のハルナジュ村のスィタール女性大会会合を爆撃し、女性3人を含む5人を殺害したことに抗議するデモが行われた。
同様のデモは6月25日にも、政府との共同統治下にあるハサカ県ダルバースィーヤ市で実施された。
トルコ占領地
トルコ占領下にあるハサカ県北部のいわゆる「平和の泉」地域では、シリア人権監視団やSANAによると、ラアス・アイン市で、トルコ軍とその支援を受ける国民軍(Turkish-backed Free Syrian Army:TFSA)に対するデモが行われ、住民数百人が参加、農地への放火、略奪、強制退去など、市民への犯罪行為、トルコ軍の占領支配に対して抗議の声が上げられた。
シリア人権監視団によると、抗議を行ったのはラアス・アイン市近郊のアルーク村(西アルーク村)の住民で、ほとんどが女性。彼女らはラアス・アイン市の内務治安部隊(いわゆる自由警察)本部前に集まり、国民軍に所属するムウタスィム旅団のメンバーが25日朝に地元の病院で看護師を殴打した事件に抗議したという。
解放区
イドリブ県の「解放区」では、シリア人権監視団によると、イドリブ市で、シャーム解放機構と、新興のアル=カーイダ系組織からなる武装連合体の「堅固に持せよ」作戦司令室の戦闘に抗議するデモが行われ、戦闘停止とイドリブ市住宅街の中立化が訴えられた。
(「シリア・アラブの春顛末記:最新シリア情勢」をもとに作成)