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新型コロナワクチンは世界でどのくらい死亡を防いだ? 接種率が低いと死亡者数は増える

倉原優呼吸器内科医
(提供:イメージマート)

新型コロナワクチンの有効性が高ければ、接種率が高いほど死亡者数が少なく、接種率が低いほど死亡者数が多くなるという相関関係になります。これに関して、アメリカ・ブラウン大学とペンシルベニア大学から報告がありました。また、新型コロナワクチンはこれまでに世界でどのくらいの死亡を防いだのかというデータも紹介させていただきます。

日本のワクチン接種率は高い

新型コロナは世界的に未曽有の感染者数を記録し、11月22日時点で約663万人が亡くなっています。世界三大感染症である、結核、HIV感染症、マラリアを同期間で足した数値よりも多いです。

経験のない死亡者数を抑制するため、新型コロナワクチンが世に出ました。

日本で新型コロナワクチンが接種されたのは2021年春でした。その後、ワクチン接種率が上がったこと、致死率が低下してきたこと、ワクチンの感染予防効果が低下したことなどによって、複数回接種を受ける人が減ってきました。

それでもなお、日本人口の3分の2以上がワクチンを3回以上接種しています(図1)。国際的にみても高い接種率を誇る国です。

図1. 11月20日時点の新型コロナワクチン接種率の日時推移(参考資料1より引用、一部数値追記)
図1. 11月20日時点の新型コロナワクチン接種率の日時推移(参考資料1より引用、一部数値追記)

ワクチン接種率と死亡者数

デルタ株およびオミクロン株の流行があった期間において、2回以上のワクチン接種率、新型コロナによる死亡者数、超過死亡数を比較したデータがJAMAという医学雑誌に発表されました(2)。アメリカの研究なので、接種率が高い州と低い州についても比較されました。

各国のワクチン接種率はの通りです。相関関係はありそうに思いますが、国ごとの医療政策や年齢など色々な違いがあるため、因果関係は評価できません。

しかし、アメリカのワクチン接種率が低い州では死亡者数が多いことが分かりました。接種率が高い10州と低い10州を比べると、死亡者数に2倍の差があることが分かります。同じ国内で明確な差が出ています。

図2. 各国の新型コロナ死亡者数・全死因超過死亡者数・ワクチン接種率(参考資料2をもとに筆者作成)
図2. 各国の新型コロナ死亡者数・全死因超過死亡者数・ワクチン接種率(参考資料2をもとに筆者作成)

この論文では「アメリカのワクチン接種がもう少し進んでいれば、最大で約36万人の命が救えた可能性がある」と言及されています。

日本の新型コロナ死亡者数は先進国の中ではかなり低いです。各地で医療逼迫の問題がありつつも、国際的にも評価されてよいことでしょう。

ワクチンはどのくらいの死亡を防いだか

世界185の国・地域を対象に、新型コロナワクチンが存在しなかったと仮定した場合の死者数を予測した研究があります(3)。

これによると、2021年にワクチンが無かったら3,140万人の超過死亡が生じたと推定されており、このうち1,980万人の死亡をワクチンが防いだとされています(図3)。ワクチンによる感染予防効果だけでなく、医療逼迫が回避できたことによる間接的な効果も加味されています。

図3. 新型コロナワクチンが無かった場合の死亡者数(参考資料3をもとに作成)
図3. 新型コロナワクチンが無かった場合の死亡者数(参考資料3をもとに作成)

まとめ

時に「ワクチン接種が超過死亡を増やしている」という言説を目にしますが、もしそれが真実なら、接種率が高い国や地域ほど超過死亡が多くなります。

そういったシグナルが発生していないというのは重要なポイントかと思います。新型コロナワクチン接種後の死亡に関して、相関関係と因果関係に焦点を当てて先日記事にさせていただきました(4)。

コロナ禍も3年が経過し、新型コロナワクチンが人類にどのような効果をもたらしているのか、ビッグデータの解析が進んできました。また、今後どのような位置づけのワクチンになっていくのか、医学雑誌や公的機関からの情報を収集していく必要があります。

(参考)

(1) 新型コロナワクチンの接種状況(URL:https://info.vrs.digital.go.jp/dashboard/

(2) Bilinski A, et al. JAMA. doi:10.1001/jama.2022.21795

(3) Watson O, et al. Lancet Infect Dis. 2022 Sep;22(9):1293-1302.

(4) 新型コロナワクチン接種後の死亡 接種との因果関係は? 日本における副反応報告の課題(URL:https://news.yahoo.co.jp/byline/kuraharayu/20221030-00321661

呼吸器内科医

国立病院機構近畿中央呼吸器センターの呼吸器内科医。「お医者さん」になることが小さい頃からの夢でした。難しい言葉を使わず、できるだけ分かりやすく説明することをモットーとしています。2006年滋賀医科大学医学部医学科卒業。日本呼吸器学会呼吸器専門医・指導医・代議員、日本感染症学会感染症専門医・指導医・評議員、日本内科学会総合内科専門医・指導医、日本結核・非結核性抗酸菌症学会結核・抗酸菌症認定医・指導医・代議員、インフェクションコントロールドクター。※発信内容は個人のものであり、所属施設とは無関係です。

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