10月に脱線事故発生の「いすみ鉄道」 事故車両、2カ月以上「現場に放置」の異常事態
2024年10月4日の通学時間帯に発生した、いすみ鉄道の列車脱線事故。幸いにもけが人はなく、当初は10月中に復旧し運行が再開される見通しであると報道されていた。しかし、事故から2カ月以上が経過した現在でも運転再開は未定の状況となっており、脱線事故を起こした2両のディーゼルカーは、大型クレーンにより線路上には戻されているものの、脱線現場に放置され続ける異常事態となっている。脱線事故の原因については、10月7日にいすみ鉄道の古竹孝一社長が大多喜町役場で開いた記者会見で、事故の原因が車両ではなく保線の問題であるという見方を示している。
12月9日、いすみ鉄道は同社ホームページで運転再開について「復旧期間の長期化が見込まれ、現段階では再開見込時期をお知らせできない状況」であることを発表。その翌日となる12月10日、いすみ鉄道本社のある大多喜町の平林昇町長は「来年3月までをめどに大多喜―大原間で先行的に運行再開する方向で固まりつつあることが、おおむね事実であることを認めた」と千葉日報により報じられた。
しかし、いすみ鉄道では国土交通省関東運輸局より2020年と2023年に相次いで行政指導を受けている。2020年12月10日付で、国土交通省関東運輸局より、「自動列車停止装置(ATS)の動作試験未実施」「車両検査未実施」「運転士の身体機能検査未実施」「ほとんどの駅ホームで建築限界を支障」の4項目について、さらに2023年1月25日付では保線の不備により行政指導を受けている。いすみ鉄道の実情をよく知る関係者によると、脱線現場付近に車両が放置され続けているのは「脱線現場から車両基地のある大多喜駅や近隣の国吉駅までの線路で、保線不備による軌道異常が見つかっており、車両を自走できる状態にない」という。
いすみ鉄道の問題を語るときに「赤字続きの地方の鉄道会社が保線も満足にできない経営状況に置かれていてかわいそうだ」という論調が見られるが、この論調については認識が正しくない部分がある。現在、いすみ鉄道は「みなし上下分離方式」がとられており、単純な赤字補填方式とは異なり、鉄道を道路などと同じ社会資本としてとらえ、線路保存費などインフラ部の修繕費等の費用については県と市町で原則全額を負担するというものである。こうしたことから、線路の修繕について、自治体との協調のもとで計画的な保線が行われてこなかった可能性も考えられるのではないだろうか。
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