日本最安「100円運賃で黒字経営」、岡山のバス会社・宇野バスに乗ってみた! 車内はWi-Fiに電源も
岡山県には、初乗り100円という日本最安の運賃を維持しながら黒字経営を続ける稀有なバス会社、宇野自動車(通称・宇野バス)がある。日本国内の多くのバス会社が、自治体の補助金なくして経営が成り立たない状況に置かれているなかで、宇野バスは補助金を一切受け取らずに健全経営を続けているというのが驚きだ。
筆者は、この宇野バスの路線のうち、比較的長距離を走る岡山駅から片上に向かう路線に乗車したので、今回はそのときの様子を紹介したい。
車内には無料Wi-Fiにコンセント
岡山駅から片上方面に向かう国道2・250号線のバスは、筆者が乗車した土休日は1時間当たり2~3本の本数が設定されているが、長岡・駅前や瀬戸駅で折り返すバスも多く、片上まで足を延ばすバスは6往復の設定しかない。筆者は、岡山駅を8時25分に発車する片上行に乗車し、1時間6分をかけて終点の片上に向かうことにした。
岡山市は人口約71万人を擁する政令指定都市で、宇野バスは、この岡山市中心部から岡山市郊外を結ぶ路線を屋台骨としている。片上に向かうバスは岡山駅前の11番のりばから発車するとのことで、筆者がこののりばでしばらく待っていると5連のマーカーランプが特徴的な宇野バスがやってきた。
宇野バスの、岡山市中心部の初乗り運賃は100円に設定されているが、そのサービスは決して「安かろう悪かろう」ではなく、乗客の快適性を高める工夫が随所になされている。まず、宇野バスの全車両には無料Wi-Fiが完備されていること。そして各座席にはコンセントも備え付けられていた。さらに、バスの車内は背もたれの高いハイバックシートが採用されており座席モケットには高級感のある阪急電鉄の座席と同じ住江織物性の深緑色のモケットが使用されており、長時間バスに乗車する乗客への配慮も見せている。なお、宇野バスの最長路線は岡山県北部の姫新線林野駅との間を結ぶ1往復で、この路線は乗車時間が2時間にも及ぶ。
バスは定刻通りに岡山駅を発車すると、路面電車である岡山電気軌道の線路に沿って岡山市中心部の宇野バスの本社に併設された表町バスセンターへと向かう。岡山市中心部を経由する大半のバス会社は、天満屋バスセンターに乗り入れているが、宇野バスだけは天満屋バスセンターには乗り入れず、本社併設の表町バスセンターに発着していることは同社の独自性を象徴している。
徹底したコストカットの工夫も
さらに、宇野バスではコストカットについてもさまざまな工夫を重ねているという。例えば、車両の低床化を行おうとした際には、新車のノンステップバスを導入するにはコストがかかることから、既存の高床バスのタイヤをひとまわりサイズの小さいものに履き替えることでバスの車高を下げ低床化を実現してしまったという。タイヤの小型化についてはバスのギヤ比を変える作業も必要になったというが、それでも当時の宇野バスが保有していた72代のバスの低床化を新車のバス1台分の金額と同じ約2000万円で実現してしまったというから驚きだ。タイヤの小型化によりバスの車高が7~8cm下がったという。しかし、地元の方に話を聞いたところ「宇野バスは不採算路線からの撤退も早い」といい、「確実に利益が出る路線だけに運行を絞って手堅い経営を行っている企業」だという評判だ。
岡山市中心部を離れるとバスは国道250号へ入り東へと向かう。そして国道2号へと合流し山陽新幹線とJR赤穂線の線路に沿って進む。山陽新幹線は岡山―相生間では赤穂線に近いルートに沿って敷設されていることから、時折、バスの車窓からは高速で新幹線の高架橋を走り抜けていくのぞみ号の姿を見ることもできた。そして、岡山駅を出発してから1時間強で終点の片上に到着。運賃は670円だった。ちなみに宇野バスは日本の民間バス会社で1kmあたりの運賃は日本一安い水準だという。
片上のバス停は1991年に廃止された同和鉱業片上鉄道片上駅の駅前ロータリーをそのまま活用したものだといいバスの待合室は当時、片上鉄道で運行されていた気動車を模したものとなっており、近くにはディーゼル機関車も静態保存されていた。
片上バス停の徒歩圏内にはJR赤穂線の西片上駅がある。西片上駅からは岡山駅に戻ることができるほか、新快速の西側の始発駅となる播州赤穂駅に向かうこともできる。
(了)