【麺どころか丼も見えないチャーシューメン】朝ラータイムで決まって売切れる特濃豚骨「虎」
福岡には「ふくちゃんラーメン系」、略して「ちゃん系」と呼ばれる豚骨ラーメンの名門がある。総本山的な存在が福岡市・田隈(百道より移転)にある「ふくちゃんラーメン」。伝説的なラーメン職人である故・榊順伸さんから息子の榊伸一郎さんが継承した、九州でも屈指の超人気店である。その“ふくちゃん”を起点に、先代が鍛えた弟子「冨ちゃんラーメン」(福岡市・飯倉)、現店主・伸一郎さんの門下生「なおちゃんラーメン」(福岡県・糸島市)、「しゅうちゃんラーメン」(大分県・中津市)、そして伸一郎さんの2人の姉、長女・美子さんの「ふくちゃんラーメン英美」(福岡県・宗像市)、次女・伸江さんの「江ちゃんラーメン」。筆者も含め、熱心な豚骨ラーメンラバーたちは、これらを総称して“ふくちゃんラーメン系(ちゃん系)”と愛着を込め呼んでいるのだ。
中でも今回の主役は糸島市の「なおちゃんラーメン」。“ちゃん”の真髄を知る王道の豚骨ラーメンをはじめ、1日約15食限定で、朝ラータイムに決まって売り切れてしまう特濃「虎」を紹介する。
まず、「ふくちゃんラーメン系」(ちゃん系)は、豚骨の部位は頭骨のみを使うのが大きな特徴。メイン、サブ、スペアと煮込み時間、濃度の異なる複数の釜のスープをブレンドし“コク”と“キレ”のバランスのいい一杯に仕上げ、丼に“なみなみ”と注ぐ。
「なおちゃんラーメン」の店主・脇山直幸さんはかつて、客として食べた「ふくちゃんラーメン」の一杯に衝撃をうけた。
「こんなにうまいラーメンがあるのかと震えるぐらい感動しましたね。僕自身もとはサラリーマンをしていてラーメンもあちこちで食べるのが好きだったんですが、それまでとは段違いの衝撃。飲食の経験はゼロだったものの、すぐに修業させていただけないかと頼み込みました」と脇山さん。筆者も長い付き合いなので分かるが、「ふくちゃん」の伸一郎さんは、THE豚骨職人のオーラをまとい“背中で語る人”。どんなに超繁盛店になろうと麺場は他の人には決してまかせず、弟子もあまりとらない。脇山さんの申し出にも当初難色を示したが、何度も訪れる熱意に打たれ入門を許した。脇山さん27歳の時。そこから33歳まで「ふくちゃんラーメン」で腕を磨き、2016年に「なおちゃんラーメン」を独立開業という運びとなった。
「師匠(伸一郎さん)には感謝してもしきれません。今でもかわいがっていただきよくお会いしますが、僕も8年間自分の店をやってきて、当時師匠から言われていたことがようやく理解できるようになってきた、感覚的に近づけてきたかなという感じですね」と脇山さん。
伸一郎さんは弟子に対して、いつも気にかけながらも「自分の店だから好きにしなさい」というスタンスだ。脇山さんもブレない軸はしっかりと持ちながら、醬油ダレを地元糸島のものに変えたり、自家製麺作りにも意欲的に取り組むなど自分流の進化を添えてきた。“ちゃん系”はこのような個性が楽しめるのも醍醐味なのである。そして脇山さんがここ1年で新たに力を入れているのが「朝ラー」と定番のラーメンとは全く異なる超特濃「虎」。
「糸島の前原という場所柄、通勤客、観光客とも車通りが多く、朝の需要もありと確信していました。元より仕込みで深夜から店に入っているのでそれならば開けてみようと。結果、大正解でしたね。“朝ラーでも、しっかりと濃厚な豚骨ラーメンが楽しめる”これがポイントだと思います」。
また、朝8:30から限定約15杯で販売する「虎」は、ラーメンにおいてのSDGsを考えた結果、生まれたものだという。
「豚骨ラーメンは炊いた後の“豚ガラ”がどうしても出てしまいます。この廃棄物を極力減らそうと、残ガラを集めて炊き、さらに追い骨を繰り返しながらスープ濃度をグイグイ上げたスープ。それが『虎』です。フードロスも減り、お客様にも満足してもらえる、理想的な形ですね」と脇山さん。
スープは“どろり”とした強いとろみがあり特濃。大量の骨が溶け込んでいるだけでなく、刻みチャーシューも入れて煮込んでいるため、“高濃度の食べるスープ”そんな印象だ。そして、定番のラーメンと同じく、「虎」もチャーシューメンにも対応してくれる。
肉肉しい分厚い豚もも肉がぐるり。上から見ると、麺どころか丼ぶりも見えない。
「なおちゃんラーメン」は、ドライブルートとしても人気がある糸島エリアにある。
無休で朝8時30分から営業。朝ラー、ランチ、ディナーと、がっつり豚骨注入したい時にこのピンクの看板を目指して欲しい。
【なおちゃんラーメン】
住所:福岡県糸島市前原1037-1
電話:092-324-1267
時間:8:30〜22:00、木曜〜15:00
休み:無休
席数:14席(カウンター6、テーブル8)
駐車場:7台(無料)