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福岡でも輝きを放つ“讃岐ラーメン”とは。「麺屋おおやま」

上村敏行ラーメンライター
「麺屋おおやま」の讃岐ラーメン「伊吹いりこ 醤油らぁ麺」

福岡のラーメン業界でも“煮干し”は間違いなくトレンドの一つ。日本人に刻まれた出汁文化のDNAにも響くような煮干しはラーメンに取り入れられる食材としても今や珍しいものではない。しかし、名脇役から主役級へと押し上げた“ニボっぷり”見事な一杯が確実に増えているのが昨今の潮流だ。THE煮干しのイメージとして馴染みのあるカタクチイワシだけでなく、アゴ、サバ、タイ、タコ、イカetc. 煮干しは魚介乾物の総称であり、実は種類がとんでもなく多い。昨今では深海魚の煮干しまでラーメン食材として注目されているほどだ。そして、弱火で炊くか、強火で鍋をまわらせるように炊くか、ある程度で鍋から上げるか、あえて残して砕くかなどで淡麗清湯、粘度大のどろ煮干しなど多彩に変化する。煮干しは意欲のあるラーメン職人にとって個性を出せる格好の食材なのである。

「麺屋おおやま」のキーとなる食材である香川県伊吹島産「伊吹いりこ」
「麺屋おおやま」のキーとなる食材である香川県伊吹島産「伊吹いりこ」

今年12月で開業1周年を迎える「麺屋おおやま」は、そんな煮干しを巧みに操る人気店の一角。使用する煮干しは厳選した香川県伊吹島産「伊吹いりこ」。さらには“うどんソムリエの資格をもつ店主が作る讃岐ラーメン”としても話題を集める福岡の気鋭店である。

ブルーの外観が目を引く福岡県・春日市「麺屋おおやま」
ブルーの外観が目を引く福岡県・春日市「麺屋おおやま」

場所は、福岡市の中心部、天神エリアから車で30分ほどの春日市。外観、内観とも淡いブルーと木目を基調としていて、住宅街にあるもののまるでビーチカフェを思わせるような洒落たしつらえだ。

店主の大山貴幸さん(1986年香川県出身)が「故郷に根付く讃岐ラーメンを福岡でも広めたい」と2023年12/25に開いた。

讃岐といえばもちろんうどんだが、実は讃岐ラーメンも根強いファンをもつご当地麺。大山さんは、その特徴でもある素材の煮干しを最高級の「伊吹いりこ」を使って表現する。

うどんソムリエの資格も持つ「麺屋おおやま」店主の大山貴幸さん。「新福菜館」や「肉肉うどん」で修業を積んだ
うどんソムリエの資格も持つ「麺屋おおやま」店主の大山貴幸さん。「新福菜館」や「肉肉うどん」で修業を積んだ

「香川では市民権を得ている讃岐ラーメンは、イリコと肉系ダシを合わせたスープに背脂の粒を浮かせるなど、芳醇な“出汁感”と“パンチ”を両立したようなラーメンです。僕の故郷の文化であるこのジャンルは全国、世界でも受け入れられるポテンシャルを秘めていると確信していました。名ラーメン店やうどん店での修業、さらにうどんソムリエの資格も取得したのも麺や出汁の理解を深めるためです。この1年で福岡の方にもだいぶ浸透し手応えを感じています」と大山さん。

ラーメン、つけ麺共に「伊吹いりこ」の旨味を効かせている
ラーメン、つけ麺共に「伊吹いりこ」の旨味を効かせている

丸鶏&豚骨の肉系と「伊吹いりこ」の魚介ダシを別取りして合わせるダブルスープ。ラーメンダレには福岡人も馴染みやすいよう九州産の醤油を採用している。飲んでみると、ふくよかな丸鶏スープの中で、絶妙に主張する煮干しのコクと風味。背脂の粒と共にくるパンチと和風ダシの上品繊細さ、双方が両立し食べ進めるごとに深いうまみが押し寄せてくる。

背脂の粒も浮かべた「伊吹いりこ 醤油らぁ麺」
背脂の粒も浮かべた「伊吹いりこ 醤油らぁ麺」

具は低温調理のチャーシューやナルト、メンマ、海苔、ネギ。麺は佐賀神埼市「白鷺めん」の中太麺を合わせる。またつけ麺もあり、こちらも拍手喝采のうまさで食べた後も罪悪感ゼロ。二ボ好きにはたまらない!!

「つけ麺伊吹」。こちらも「伊吹いりこ」と丸鶏のダブルスープ。器にもこだわる
「つけ麺伊吹」。こちらも「伊吹いりこ」と丸鶏のダブルスープ。器にもこだわる

煮干し系のラーメン&つけ麺はドハマリする人が続出するジャンルではあるが、中には苦手な人もいるだろう。そんな方には鶏×豚の「博多中華そば」も用意している。

充実した卓上調味料での味の変化も楽しい
充実した卓上調味料での味の変化も楽しい

煮干し好き、また九州では馴染みのない「讃岐ラーメン」を体感したい方へおすすめの「麺屋おおやま」。周辺の方は日常使いの店として、また観光や出張で福岡を訪れた方も春日市まで足を伸ばす価値は絶対にある。

【麺屋おおやま】

住所:福岡県春日市昇町5-139 

電話:092-558-0909

電話時間:月・火・水曜11:00〜14:30、17:00〜20:00(LO)、木曜11:00〜14:30(LO)、土・日曜、祝日11:00〜20:00(LO)

休み:金曜

席数:17席(カウンター6、テーブル12)

駐車場:近隣有料パーキング利用

ラーメンライター

1976年鹿児島市生まれ。株式会社J.9代表取締役。2002年、福岡でライター業を開始。同年九州ウォーカーでの連載「バリうまっ!九州ラーメン最強列伝」を機にラーメンライターとして活躍。各媒体で数々のラーメンページを担当し、これまで1万杯以上完食。取材したラーメン店は3000軒を超える。ラーメン界の店主たちとも親交が深く、ラーメンウォーカー九州百麺人、久留米とんこつラーメン発祥80周年祭広報、福岡ラーメンショー広報、ソフトバンクホークスラーメン祭はじめ食イベント監修、NEXCO西日本グルメコンテストなど審査員も務めてきた。その活躍はイギリス・ガーディアン紙、ドイツのテレビZDFでも紹介

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