2歳までに1度は感染するRSウイルス、なぜ冬ではなく今流行しているの?
RSウイルスって、どんなウイルス?
RSウイルスという名前は、小さいお子さんをお持ちの保護者さんの多くが御存じでしょう。
RSウイルスには、2歳までに1回は感染し(※1)、1~3%は入院となるからです。
(※1)堤裕幸他. 小児科診療 2018; 81:171-3.
ただし、RSウイルス感染のさまざまなパターンをとり、多くは風邪で終わります (※2)。
(※2) Mufson MA, et al. J Infect Dis 1988; 157:143-8.
RSウイルスに関して、多くの場合はそれほど怖がらなくてよいわけですね。
しかし、2歳未満の子どもがRSウイルスに感染すると、30~40%が気管支炎など、のどより下(下気道)の感染症に発展します(※1)。
そして、気管支より先の細気管支まで炎症が進み細気管支炎を起こすこともあります。実際に、入院する子どもの44%は生後2ヶ月未満です (※3)。
(※3) Hall CB, et al. Pediatrics 2013; 132:e341-8.
すなわち、小さい子どもほど、RSウイルスに感染したときのリスクが高くなるということです。
小さいお子さんが、鼻水、咳から徐々に「ぜいぜい」や呼吸困難が強くなってきた場合は、RSウイルスも疑って受診することをお勧めします。
RSウイルスは感染が拡大し、流行しやすいウイルスです。
RSウイルスは、小さい子どもが多い保育園で流行しやすいウイルスです。
そしてRSウイルスに感染すると平均8日はウイルスを排出します。
例えばRSウイルスを含んだ鼻水や唾が机などに付着したとしましょう。
そのRSウイルスは最大6時間生きているという報告があります (※4)。
(※4)Piedimonte G, et al. Pediatr Rev 2014; 35:519-30.
すなわち、手洗いなどは十分にしておいたほうが良いですし、周囲の流行状況や、家族の風邪症状に注意しておく必要があるわけですね。
特に、今年の春から保育園に行き始めた子どもは、まだ低年齢のうちに「はじめてRSウイルスの流行期」にあたることになり、悪化しやすいということになります。心に留めておくと良いでしょう。
最近、RSウイルスが夏に流行するようになりました。
もともとRSウイルスは、冬に流行していたウイルスでした。
しかし、近年RSウイルスの流行が前倒しになり、夏に流行することが問題視されています(※5)。
(※5) Yamagami H, et al. Front Public Health 2019; 7:39.
つまり、「冬の疾患だったはずのRSウイルス感染症が夏から秋の疾患になりつつある」ということです。
特に2017年の流行は早期から始まりました。
そして今年(2019年)の流行は2017年と同様の立ち上がりで、現在流行の真っ最中となっています (※6)。
ではなぜ、RSウイルスが夏季に流行するようになったのでしょうか?
最近、RSウイルスの全国的な流行データと、2007年~2014年の夏の全国気象データを比較した検討が報告されています。すると、気温が28.2℃以上で湿度が高くなるとRSウイルス感染症の流行が大きくなったことが示されています(※7)。
(※7) Shobugawa Y, et al. Epidemiology & Infection 2017; 145:272-84.
温度が高いこと、湿度が高いことが合わさると、RSウイルスが流行する可能性があるということです。
RSウイルスはもともと、沖縄では2~9月に、熱帯や亜熱帯では1年を通して流行してきました。
すなわち、温暖化により「日本が亜熱帯化してきたため」、RSウイルス感染症の流行が夏季に移動してきた可能性が指摘されています。
思わぬところに、温暖化の影響がでてきているといえそうですね。
低年齢の子どもがいるご家庭では、今は特に注意しておきましょう。