Yahoo!ニュース

勝者は井岡対マルチネスの勝者と3冠戦か 米記者がエストラーダ対ロドリゲス戦を展望

杉浦大介スポーツライター
Melina Pizano/Matchroom

6月29日 フェニックス フットプリント・センター

WBC世界スーパーフライ級タイトル戦

王者/2階級制覇王者

ファン・フランシスコ・エストラーダ(メキシコ/34歳/44-3, 28KOs) 

12回戦

挑戦者/2階級制覇王者

ジェシー・“バム”・ロドリゲス(アメリカ/24歳/19-0, 12KOs)

 軽量級最高級の好カードのゴングが迫っている。すでに殿堂入りも間違いなしのレジェンド王者エストラーダに、24歳にしてすでにリングマガジンのパウンド・フォー・パウンド・ランキングでもトップ10入りを果たしたヤングスター、“バム”・ロドリゲスが挑む。DAZNで全米配信される新旧対決は、ハイレベルの戦いになることが必至だ。

 決戦を直前に控え、軽量級にも精通するBoxingscene.comのベテランライター、デビッド・グレイスマン氏に意見を求めた。ビッグファイトへの期待感が抑えきれないグレイスマン記者の言葉からも、米国内でもコアなファンを歓喜させている今戦の前評判の高さが分かり易い形で伝わってくる。

 *以下、グレイスマン氏の1人語り

Sフライ級のスターウォーズ再開へ

 スーパーフライ級は“フォー・キングス(4人の王たち)”が属する階級であり続けて来ました。“フォー・キングス”というとシュガー・レイ・レナード、トーマス・ハーンズ 、マービン・ハグラー(すべてアメリカ)、ロベルト・デュラン(パナマ)という中量級の雄たちを思い浮かべると思いますが、現在の“フォー・キングス”と呼びえるエストラーダ、ローマン・“チョコラティート”・ゴンサレス(ニカラグア/帝拳)、シーサケット・ソールンビサイ(タイ)、カルロス・クアドラス(メキシコ/帝拳)もスーパーフライ級で通算10度に及ぶ直接対決を繰り返して来たのです。

 2022年12月に挙行されたエストラーダ対ゴンサレスの3度目の対決以降は動きがありませんでしたが、29日のエストラーダ対ロドリゲス戦を発端に、スーパーフライ級は再び活気付こうとしています。偉大なエストラーダに対し、ロドリゲスは2022年以降、素晴らしい活躍を続けて来ました。ロドリゲスの真価が問われる一戦は最高レベルのマッチアップといえるでしょう。

Matchroom Boxing Photos
Matchroom Boxing Photos

 どちらが勝ち残ろうと、その後には7月7日のWBA同級王者・井岡一翔(志成)対IBF王者フェルナンド・マルチネス(アルゼンチン)の勝者との統一戦が話題になるに違いありません。また、“チョコラティート”も7月12日に復帰戦を行い、トップ戦線に戻ってこようとしています。スーパーフライ級のエキサイティングな時間は目前に迫っており、私も今後数週間が楽しみでなりません。

若さと才能か、ベテランの上手さか

 エストラーダ対ロドリゲス戦は本当に興味深いマッチアップですね。

 エストラーダは多くのビッグネームと対戦し、この階級で長い時間を過ごし、様々な経験を積み重ねてきました。アウトボクシング、打ち合いの両方をこなし、パワーも備えていることを十分に示してきました。ただ、しばらくリングから遠ざかっており、今戦が約1年半ぶりの試合になります。

 “バム”・ロドリゲスはよりアクティブで、コンスタントに試合をこなしています。クアドラス、ソールンビサイには勝ちましたが、まだエストラーダほどの選手とは対戦経験がないのも事実ではあります。ソールンビサイにはKO勝ちを飾ったものの、そのパワーがこの階級でどこまで影響力を持つかもわかりません。それを考えれば、今戦前に“チョコラティート”とスパーリングを重ね、ハイレベルのスパーリングで準備を積んだロドリゲス陣営は賢明でしたね。

Melina Pizano
Melina Pizano

 互いに自分の方が上だと証明したがっている一戦ですから、アクションの多い戦いになるでしょう。エストラーダと“チョコラティート”はどちらもスキルも備えた一流選手同士ですが、拳を交えるたびに最高級の打ち合いになりました。希望も込めて、エストラーダと“バム”の激突でも同じことが起こると考えます。

 序盤はハイレベルの技術戦でスタートし、その後に至高のアクションが展開されるのではないでしょうか。いずれにしても、今回の試合では “若さと才能”が勝るのか、“依然とした力を残したベテラン”が上回るのか、開始ゴング後、比較的早い段階で見えてくるのではないかと考えています。

 勝敗予想は難しいですが、エストラーダが“チョコラティート”との第3戦と同じ状態で、ロドリゲスが2022年9月のイスラエル・ゴンサレス戦、2023年4月のクリスチャン・ゴンサレス(ともにメキシコ)戦と似た出来だった場合、エストラーダが主導権を握ると見ます。ここでは世代交代のまだ一歩手前にいると考え、エストラーダが優位と言っておきます。

 とはいえ、前戦のサニー・エドワーズ(英国)戦でのロドリゲスの戦いぶりは出色でしたし、彼が勝ってももちろんまったく驚きません。ロドリゲスの行く手には紛れもなく明るい未来が広がっています。繰り返しになりますが、自身のレガシーに新たな勲章を加えようとする王者と、これからレガシーを築いていこうという若者がしのぎを削るのですから、ファンにとって喜びといえる試合が展開されることは間違いないと私はすでに確信しています。

ワシントンDC在住のデビッド・グレイスマン記者 撮影・杉浦大介
ワシントンDC在住のデビッド・グレイスマン記者 撮影・杉浦大介

スポーツライター

東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『日本経済新聞』『スポーツニッポン』『スポーツナビ』『スポルティーバ』『Number』『スポーツ・コミュニケーションズ』『スラッガー』『ダンクシュート』『ボクシングマガジン』等の多数の媒体に記事、コラムを寄稿している

杉浦大介の最近の記事