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ノート(207) 裁判官が補充尋問で関心を示した事項とそこから読み取れる判決の内容

前田恒彦元特捜部主任検事
(写真:アフロ)

~尋問編(13)

受刑197/384日目(続)

補充尋問の意義

 検察側の再主尋問が終わると、休廷せず、そのままの流れで裁判所の補充尋問へと移った。この尋問は必要に応じて行われるものなので、事件によっては全く何も聞かない場合もある。

 しかし、弁護側が全面的に無罪を主張している否認事件、それも3人の裁判官が審理に加わる合議事件の場合、確認しておきたい事項や趣旨が不明瞭な証言について、裁判所から様々な質問が出されるのが通常だ。

 検察側と弁護側がそれぞれの尋問技術をフルに使って主尋問や反対尋問を行なっていても、事実認定と量刑判断を行う裁判所からすると不十分に感じることもある。

 裁判官は、当事者間の争点を踏まえたうえで、特に関心や疑問をもった事実に絞って証人に補充尋問を行う。その内容から、裁判官の抱く心証や、判決文にどのようなテーマが盛り込まれるのかを推察することができる。

 中にはその場の思いつきにすぎないような尋問もみられるが、それでも裁判官による補充尋問が検察側や弁護側にとって大きなヒントになることは確かだ。証人も、一段高い法壇に座る裁判官からの問いだということで、ことのほか緊張感を覚える。

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元特捜部主任検事

1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。

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