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世界との差は「すべて」 馬場雄大がW杯で味わった悔しさと希望

大島和人スポーツライター
(C)FIBA.com

大会前は「世界と戦える」

バスケットボールの男子日本代表は、ワールドカップ(W杯)を5連敗で終えた。エース八村塁、キャプテン篠山竜青とチームの「軸」が離脱した影響もあるのだろう。2次ラウンドはニュージーランド戦が81-111、モンテネグロ戦が65-80と苦しい結末だった。

2週間前を振り返ると、馬場雄大のコメントは希望に満ちていた。8月下旬に、中国行きを前にした3連戦を終えた直後の彼はこう述べている。

「世界と戦えるレベルまでは来ている。まだ粗削りなところはある中でドイツに勝って、チュニジアやアルゼンチンともこういう試合を繰り広げた。先が楽しみなチームだなと感じました。『ヨーロッパを倒す』は漠然とした夢だったのが、目標になったのも感じられた」

23歳の馬場は7月にNBAのサマーリーグにも参加し、悪くないプレーを見せていた。彼は198センチ・90キロとサイズこそ中型だが、抜群のスピードと跳躍力を持ち、スキルも悪くない。田臥勇太、渡邊雄太、八村塁に次ぐ史上4人目のNBAプレイヤーとしても期待される存在だ。

アメリカ戦は18得点も「不完全燃焼」

しかしW杯本大会で日本代表は5連敗。馬場は5試合で46得点を挙げ、特にアメリカ戦は18得点とインパクトを残した。一方でコンスタントな活躍を見せたとは言い難い。

今大会のプレーについて彼に問うと、こんな答えが返ってきた。

「不完全燃焼です。雰囲気なのか分からないですけれど、いつもより疲れてしまう自分もどこかにいました。気持ちよく、楽しくプレーできたかというとそうではない。(モンテネグロ戦は)気力でリングにアタックしていきましたけれど、それも5試合通してできたわけでない。個々のDF力もアジアと比べ物にならないほど強かったりして、そこでの状況判断も考えさせられました。(ハンドラーとして相手を引きつけて)ノーマークを作ることは僕の責任なんですけど、逃げるようなパスをしてしまうケースもあった。ファーストブレイク(速攻)はどの相手にも通用するように感じたんですけれど、ハーフコートオフェンス(遅攻)のレベルがまだまだです」

23歳が経験した「初めての領域」

対戦相手の質はNBAのサマーリーグも高かったはずだ。しかし世界大会だからこその壁を馬場は感じた。

「(W杯の相手は)オーガナイズされているので、ひとり抜いてもその後のブロッカーがいる。サマーリーグは自分のアピールだけを考えてプレーしているけれど、チームの勝利を一番に考えているのはこういったFIBAの大会。そういった部分は初めて体感しました」

世界との差について問われると、少し長い沈黙があった後にこう返してきた。

「今のところ“全て”としか言いようがない。フィジカルも、シュートの確率も、リバウンドも…。勝っていた部分は一つもないと思っています。本当に浮ついた気持ちがあったと思うんですけれど、足元を見て、この1年間死にものぐるいでやらなければいけないなと感じました」

7日のニュージーランド戦直後はひどく落ち込んだ表情を見せて記者に気を揉ませた彼だが、いざ語り始めると言葉とは裏腹に明るささえ漂わせる口調になっていた。

「一瞬一瞬の判断、駆け引きは初めて経験したと言っていいほどの領域でした。この感覚を絶やさず、来年の東京五輪までやる必要があります。もう1年修行するだけです。僕はネガティブじゃないので!鼻をへし折られたんですけれど、這い上がるだけなので。マジでやってやるぞという気持ちでいるので、今は次に向かって進むだけです」

スポーツライター

Kazuto Oshima 1976年11月生まれ。出身地は神奈川、三重、和歌山、埼玉と諸説あり。大学在学中はテレビ局のリサーチャーとして世界中のスポーツを観察。早稲田大学を卒業後は外資系損保、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を始めた。サッカー、バスケット、野球、ラグビーなどの現場にも半ば中毒的に足を運んでいる。未知の選手との遭遇、新たな才能の発見を無上の喜びとし、育成年代の試合は大好物。日本をアメリカ、スペイン、ブラジルのような“球技大国”にすることを一生の夢にしている。21年1月14日には『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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