「選手交代、全員バレンティン」で12点取れる
「選手交代、全員クロマティ」
これは好きな選手を集めてチームを組み、他のプレーヤーと競い合う野球ゲームのCMで使われていた一言。
1番・クロマティ
2番・クロマティ
3番・クロマティ
4番・クロマティ・・・
現実にこんなチームはありえないが、もしこうなったら何点取れる打線なのだろうか?
打者の得点能力を示す指標で「RC27」というものがある。
RCは(Runs Create)の略で、その打者が生み出した得点を表す。
計算式は(A+2.4C)(B+3C)÷9C-0.9C
A=安打+四死球-盗塁死-併殺打
B=塁打+0.26×四死球+0.53×(犠打+犠飛)+0.64×盗塁-0.03×三振
C=打数+四死球+犠打+犠飛
大まかには(出塁×進塁)÷(打席)となり犠打、盗塁、併殺打なども計算に含まれるため打者の総合的な得点能力を示す。当然打席に立つ機会が増えればRCの数値も増える。そのため出場機会の異なる打者を比べられるように変形させたものがRC27。27は1試合(27アウト)換算していることを意味する。つまり、RC27とはその選手だけで打線を組んだら1試合何点取れるかを示した数値である。
バレンティンが9人いれば12点取れる
今季のRC27トップはシーズン最多本塁打記録を更新したバレンティン。2位・ブランコの9.49を大きく上回る12.06を記録した。もし仮にバレンティンが9人いたとしても守備位置の都合上、全員出場は難しいと思われるが、平均12点取れるならなんだか勝ってしまいそうだ。
そんな印象さえ受けるバレンティンの12.06は歴代15位の数字。2000年以降でバレンティンより上にいるのは2人だけ。55本の本塁打を放ち当時の日本記録に並んだ2002年のカブレラが13.15で4位。平成唯一の三冠王に輝いた2004年の松中が12.43で11位。カブレラの最高年俸は6億円、松中の最高年俸は5億円と推定されているが、バレンティンはすでに複数年契約を結んでおり来季から3年間は年俸2億円前後とのこと。ヤクルトが見つけた助っ人は、史上最高のコストパフォーマンスで猛打を振るう。
世界の王は1人だけ異次元
RC27の歴代1位は王貞治の14.98(1974年)。1試合平均15点とは恐れ入る。以前「バレンティンに期待がかかるもう1つの日本新記録」という記事で、凄まじい勢いで本塁打を量産するバレンティンがOPS(出塁率+長打率)でも王超えの可能性があると紹介した。最終的にバレンティンのOPSは1.234で、王貞治の持つ日本記録1.293には及ばなかった。
そしてRC27においても同様、やはり世界の王の壁は厚かった。バレンティンより上位14人の内、なんと9人が王貞治!今季のバレンティンを上回る活躍が9シーズンもあったのである。OPSでもトップ10の内、半数を占めている王さんのスゴさは、もはや異次元としか言いようがない。
イチローVS松井秀
共にスーパースターとしてプロ野球界を引っ張り、ほぼ同時期に海を渡った日本を代表するリードオフマンとスラッガー。どちらが優れた打者かという議論は、人によって意見が分かれるところだろう。RC27によれば、という条件はつくもののここに1つの見解を示したい。
NPB通算RC27
イチロー 8.73
松井秀 8.81
MLB通算RC27
イチロー 5.96
松井秀 5.92
結論・・・どちらも非常に優れた打者で甲乙つけがたい。
ただ、それにしてもである。
1番・イチロー、4番・松井秀。
オリンピック、WBCでも実現しなかった近代プロ野球、真の最強打線。野球ファンの誰もが望んだ夢の共演を1度でいいから見てみたかった。