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【お茶と健康】抹茶を飲むと睡眠の質が上がる?認知機能の低下が予防できる?最新の研究結果をチェック!

日本茶ナビゲーター Tomoko日本茶インストラクター
抹茶を煎茶茶碗に注ぎ分けて楽しむことも

前回の記事(こちら)ではお茶のカテキンに注目しましたが、今回は抹茶に多く含まれる「テアニン」という成分にフォーカスします。

ここ最近、テアニンの入った食品や飲み物をよく見かけるようになりました。

どうもテアニンはGABAと同様に睡眠の質の向上や脳をリラックスさせるという点で期待されているようです。

最新の研究結果を元に、「テアニン」についてまとめました!

抹茶に含まれる「テアニン」って何?

日本茶の特徴の一つに「うま味」があります。

このうま味は抹茶や玉露、上級煎茶に多く含まれるのですが、このうま味の成分であるアミノ酸の一種が「テアニン」です。

福岡県八女茶の玉露を「しずく茶(すすり茶)」でいただく。都内で開催された八女茶のイベントでの一コマ。玉露のうま味が口の中に広がって甘い香りが鼻から抜ける贅沢ないただき方。茶葉もおいしく食べられる。
福岡県八女茶の玉露を「しずく茶(すすり茶)」でいただく。都内で開催された八女茶のイベントでの一コマ。玉露のうま味が口の中に広がって甘い香りが鼻から抜ける贅沢ないただき方。茶葉もおいしく食べられる。

テアニンの働きとして脳をリラックスさせることは以前から知られていましたが、最近は認知機能の低下防止や睡眠の質を向上させるという研究結果も出ており、今注目の成分の一つです。

最近ではテアニンのサプリメントやテアニンが配合されたグミなどのお菓子もよく目にするようになりました。

コンビニなどで購入できる「サイクルミー」のプロテインバー・ホワイトには「L-テアニン」が配合されている。「L-テアニン」は微生物の作るグルタミナーゼを利用した発酵によって合成されたテアニンだそう。
コンビニなどで購入できる「サイクルミー」のプロテインバー・ホワイトには「L-テアニン」が配合されている。「L-テアニン」は微生物の作るグルタミナーゼを利用した発酵によって合成されたテアニンだそう。

テアニンについては過去記事「ここにも「テアニン」?今注目の緑茶に含まれるリラックスに役立つ成分とその上手な取り入れ方」でも取り上げています。

緑茶では抹茶、玉露、上級煎茶の茶葉にテアニンは多く含まれますが、同時に覚醒作用のあるカフェインも含まれるため、緑茶でテアニンのみを摂取することは難しいです。

テアニンについては太陽化学株式会社のサイト「1分でわかる「テアニン」効果」(外部サイト)にまとめられています。

では、抹茶については最近はどんな研究がなされているのでしょうか?

最新の抹茶についての研究結果

つい先日発表された研究結果に注目してみましょう。

抹茶による社会的認知機能(顔表情からの感情知覚)と睡眠の質への効果を確認し、8月30日(金)に学術雑誌PLOS ONEへ掲載」(外部サイト)によると、

株式会社MCBI(社長:徳美喜久 本社:東京都千代田区)と国立大学法人筑波大学(学長:永田恭介 所在地:茨城県つくば市)、医療法人社団創知会メモリークリニックとりで(理事長:朝田隆 所在地:茨城県取手市)、株式会社伊藤園(社長:本庄大介 本社:東京都渋谷区)は、認知症の前段階である軽度認知障害(MCI)(※用語1)と主観的認知機能低下(SCD)(※用語2)の高齢者を対象にした臨床試験「抹茶の認知機能低下抑制効果を評価する試験」を共同で実施し、抹茶を継続摂取することによる社会的認知機能の改善及び睡眠の質の向上傾向を確認しました。この試験結果は8月30日付、学術雑誌PLOS ONE※ に掲載されました。

とあります。

実際に臨床試験を行い、抹茶が社会的認知機能の改善と睡眠の質を向上させることを確認したとのこと。

もう少し詳しくみると、このように書いてあります。

抹茶は古くから日本人に親しまれてきた飲み物であり、その主な成分である「テアニン」には、ストレス緩和、睡眠改善、さらにはワーキングメモリーの改善などの効果があることが、また、「カテキン」には、血中コレステロールの低下、体脂肪の低下、さらにはワーキングメモリーの改善などの効果があることが報告されています。また、中高齢者を対象に抹茶を1日2gずつ12週間、継続摂取した効果として、「注意力」および「判断力」の精度を高めることが報告されています

抹茶2グラムという量は薄茶(一般的な抹茶)にして1杯分に使用される量です。

一杯の抹茶には粉末にして約2グラムの抹茶が使われている
一杯の抹茶には粉末にして約2グラムの抹茶が使われている

ワーキングメモリーというのは「外界から入ってきた感覚情報などを、それが消えた後に数秒から数十秒の間、短期記憶として保持し、それを用いて他の認知機能を実行する為の、脳の機能」のことだそうで、生活はもちろん勉強や仕事にも直結する機能とも言えます。

本研究では、抹茶が新たに「社会的認知機能(顔表情から感情知覚)」を改善する効果を有することが示されました。この社会的認知はDSM-5(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorder;精神疾患の診断・統計マニュアル第5版/米国精神医学会発行)にある認知症診断基準にある項目であり、高齢者の認知機能としてだけでなく、コミュニケーション能力や日常生活、さらには社会参加においても重要と考えられます。また、カフェインを含有する抹茶の摂取にもかかわらず、「睡眠の質」に悪影響がなく、むしろ改善傾向がみられた点も注目に値します。睡眠の質の維持が認知機能の維持にもつながることが期待されるため、これらの知見は非常に重要であると考えます。

私が特に注目しているのは、「抹茶はカフェインを含んでいるにもかかわらず睡眠の質に悪影響がなくむしろ改善傾向がみられた」という点です。

覚醒作用のあるカフェインは眠気防止に良いとされるので単独で摂取すると睡眠の質が悪くなりそうですが、抹茶に関しては問題がないというこの結果はとても意外でした。

カフェインが多く含まれているため抹茶を乳幼児に与えることは控えていただきたいですが、働く大人にとっては抹茶を生活に取り入れると良い効果が期待できそうです。

海外のIT企業で緑茶が評価される理由

実は既にアメリカのIT企業が集まるシリコンバレーでは、緑茶はかなり前から取り入れられていたようです。

ビジネスに関する記事のDIMEの2018年の記事「シリコンバレーの有名IT企業に緑茶が浸透しすぎな理由」(外部サイト)でも、緑茶(こちらの記事ではペットボトルの緑茶ですが)は「ワークコンディショニング飲料」と捉えられ、仕事の合間のリフレッシュに飲み頭をすっきりさせるものと受け入れられているようです。

エナジー飲料と比べるとパワフルな感じはしませんが、健康にも良くすっきりした感じが持続するという点で評価されているとのこと。

抹茶が手軽に家庭やオフィスで楽しめるマシンも

そんな意識の高い人たちにもと開発されたシリコンバレー発の抹茶マシン「CUZEN MATCHA(空禅抹茶)」をご存知でしょうか。

代表の塚田英次郎さんは抹茶の様々な効果にも注目し、オーガニックの碾茶(抹茶の原料の茶葉)を挽いて点てるところまでできる画期的なマシンを開発。

2020年にアメリカで、2021年からは日本でも販売がスタート。

クールジャパン官民連携プラットホーム(内閣府知的財産戦略推進事務局)が主催する「クールジャパン・プラットホームアワード2024」プロジェクト部門において準グランプリを受賞しています。

家庭など少人数向けのタイプのCUZEN MATCHA
家庭など少人数向けのタイプのCUZEN MATCHA

忙しい時でもボタン一つで抹茶が作れ、炭酸で割ったりミルクで割って抹茶ラテにしたりとアレンジも自在。

1度に2つ抹茶ができるオフィスやカフェ向けの業務用タイプ
1度に2つ抹茶ができるオフィスやカフェ向けの業務用タイプ

今年度末にはオーガニック抹茶のシングルオリジン(単一農園単一品種)の茶葉も発売予定だそうで、品種による味の違いを楽しめるのは日本茶マニアにとっても興味深い展開です。

過去の取材記事「抹茶で集中とリラックスを実現?クールジャパンで準グランプリ受賞の画期的な抹茶マシン「空禅抹茶」に注目」と合わせて、CUZEN MATCHAのサイト(外部サイト)もご覧ください。

抹茶を気軽に楽しむなら

抹茶の楽しみ方はいろいろありますが、茶筅などの特別な道具がなくてもお家にあるもので簡単に作ることができる「冷たい抹茶」もおすすめです。

ボトルに抹茶、お水、氷を入れて振るだけでできる簡単冷抹茶
ボトルに抹茶、お水、氷を入れて振るだけでできる簡単冷抹茶

作り方はこちらの記事「超簡単「冷たい抹茶」の作り方!ボトルと抹茶があれば秒でできる裏ワザを日本茶のプロがご紹介」に抹茶・お水・氷を入れて振るだけの簡単レシピを掲載していますので、ぜひお家でトライしてみてください。

抹茶も薬ではなくあくまで嗜好品です。

おいしく楽しく続けると良いことがあるかも!という気楽な気持ちで抹茶を楽しんでみてはいかがでしょうか。

日本茶インストラクター

【お茶の世界の扉を開く日本茶ナビゲーター】 日本茶専門店で7年勤務、茶道歴25年の経験を活かし、大手百貨店や外国の大学等でのワークショップで国内外2,000名以上の方に日本茶の魅力を伝える。 美味しい日本茶とそれにまつわる伝統工芸品を後世にも繋いでいきたい、日本茶への愛と想いで日本茶情報を発信中。 日本茶の商品開発、カフェ・飲食店での日本茶コーディネートや淹れ方指導も行う。 NPO法人日本茶インストラクター協会認定日本茶インストラクター(2004年取得)。 日本語教師(外国人対象)。

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