12月7日〜経済産業省コンビニ調査、2月中旬「本部から来てない」28日の締切を延長 メディアは報じず
「12月7日の文字が経済産業省の公式サイトから消えている」
2018年12月7日付で、経済産業省が公式サイトに、コンビニ加盟店対象の「コンビニ調査2018」を公開した。
2月27日に確認したところ、経済産業省「コンビニ調査2018」のページから、12月7日の文字が消えていた。最終更新日が「2019年2月15日」になっている。
2月14日、一人目のオーナー「FCも自分も本部から聞いていない」
筆者がそれを知ったのは、2019年2月14日。2月13日付の、弁護士ドットコムの園田昌也さんのツイートだった。
同じ2月13日、ローソンのオーナー(加盟店主)らしき人が「こんなの知らない」と書いている。
2月14日、セブン-イレブンの加盟店オーナーに取材した。「知らない」とのこと。
(筆者注:JFAとは一般社団法人 日本フランチャイズチェーン協会)
このオーナーは、2月14日に経済産業省に問い合わせをした。担当者によれば、同様の(聞いていないというオーナーからの)問い合わせは多い、とのこと。電話して、店名を言ったら、特に店主である確認も取ることなく、すぐにアンケートに必要なパスワードを教えてくれたそうだ。こんな状態だったら、コンビニオーナーじゃなくても、誰でも電話してそこらの店名を言えばパスワード簡単に知られてしまうのでは?と思ってしまう。確認を取る余裕もないくらい、全国のコンビニオーナーからの問い合わせが多いということだろうか。
筆者もアンケートの内容を見ることができた。食品ロスの状況がわかるような回答の選択肢もあった。
このオーナーが、2月14日当日に、セブン-イレブンのFCに聞いたら「本部からの指示はない」との回答だった。
(筆者注:FCとはフィールド・カウンセラー。OFC:オペレーション・フィールド・カウンセラーとも呼ばれる。セブン-イレブンにおける経営相談員。店舗経営上の相談員の立場の社員)
2月14日、二人目のオーナー「1月末ぐらいにOFCが持ってきた」
別のオーナーにも取材した。セブン-イレブンのOFCは、「1月末にアンケートを持ってきて、シレッと置いていった」とのこと。
2月14日、三人目のオーナー「何も知らされず他の書類に混ざっていた」
三人目のオーナーにも取材した。セブン-イレブンのオーナーだ。
2月20日、四人目以降のオーナー「まだ来ていない」
じゃあ、他はどうなのか。
2月20日、複数のコンビニオーナーが集まる場で伺った。
ファミリーマートのオーナーBさんは語る。
弁護士「調査費として税金で何千万かで発注しJFAが受けたはず いい加減なことでは税金の無駄づかい」
この場には弁護士の中野和子さんが出席していた。
中野さんは、
と語っている。
調査対象者である全国の加盟店主(オーナー)にきっちり伝わっていない
参議院議員の辰巳孝太郎(たつみ・こうたろう)氏「回答の選択肢が恣意(しい)的」
この場には参議院議員の辰巳孝太郎氏が参加された。
もともとこのアンケートは、辰巳議員が国会で「コンビニオーナーの実態を正確に把握すべし」と経済産業省大臣に質問したことが経緯で実施に相成ったそうだ(コンビニオーナー談)。
筆者も見せてもらった。アンケートの素人が作ったとしか思えないような選択肢だった。選択肢に「大変満足している」「おおむね満足している」を入れたのなら、満足していないの側も、2つの選択肢を入れなければ公正ではない。わざと1つにし、いい方に結果が偏るようにしたとしか思えない。いやいや「意図せずして作った」と言うのなら、国の多額の血税を費やすアンケートを、アンケートの取り方の基本すら知らない素人が作った、ということになる。
経済産業省が回答期限を延ばしたのは「これはまずい」と思ったから
辰巳議員は、今回のアンケートの回答期限が、もともと2月28日だったのを延ばしたのも「経済産業省が、全く浸透していないと認めたということでしょう」と語った。これはまずい、と思ったという証明である、と。
まあ、そうだろう。何しろ、もともとの公開日「12月7日」の文字をひそやかに消して「2月15日更新」と書き直すくらいなのだから。経済産業省の公式サイトに最初に書いた日付、消す必要ないなら消さないですよね?
出席したオーナーによれば、今回のアンケート調査はパソコンだが、オーナーの中にはパソコンを持たない人もおり、答えづらいのではとのことだった。
大手コンビニ三社はいつ通達したのか
そもそも大手コンビニ三社は、いつ加盟店に通達したのか?
この時点で、12月7日の発表から2ヶ月以上経っているが・・・。
弁護士ドットコムが報じたからこのアンケートの存在が判明し、回答期限が延びたようにも見える。
2月27日か28日に依頼された、というオーナーもいたようだ。
(筆者注:SVとはコンビニ社員の「スーパーバイザー」の略)
農林水産省の恵方巻き販売の通知も「本部から来ていない」
農林水産省が1月11日に小売業界に出した通知も「本部から来ていない」とのことだった。
ファミマ「こども食堂」も発表時に加盟店は聞いていない状態
ファミリーマートの「こども食堂」も、いろいろな識者や活動家の方が議論していたが、そもそも本部が発表した時点で、現場のオーナーさんたちは「知らなかった」というのが現状だ。
経済産業省のコンビニ加盟店調査も、農林水産省の恵方巻き需要に見合う数販売も、ファミマこども食堂も、現場の加盟店にはきちんと伝わっていない。
で、調査と販売とこども食堂、それぞれ、誰がやるのだろう?本部がやるのだろうか。やるのは現場の加盟店では?なぜ当の本人が知らないのか。
コンビニ会計 元国税庁「あれはヤバイ」 SDGsの専門家「主流の会計と真逆」
辰巳孝太郎議員が公式サイトで指摘している「コンビニ会計」は、廃棄した食品のコストは8割以上オーナー負担になっているが、それが損益計算書上、なかったことにされ、本部の取り分が多くなっている。筆者も取材記事で書いた。
国税庁の元勤務者に取材したところ、「コンビニ会計。あれはヤバイ」。
2015年9月、国連サミットで採択されたSDGs(エスディージーズ:持続可能な開発目標)の専門家に聞いたところ、「コンビニ会計は、環境配慮を考慮した会計システム、マテリアルフローコスト会計(MFCA)とは真逆の考え方」とのこと。
コンビニ会計の仕組みは、本部と加盟店主との契約条件に入り込んでおり、多くの加盟店主は知らずに契約しているので、契約自体を変えない限り、変わらない。
日本中が「他人ごと」にして加担している
ちなみに筆者は様々な業界や自治体、大学、消費者向けに400回近く「食品ロス」の講演を国内外で行ってきた。依頼主は様々だ。大手スーパー、中小スーパー、ホテル協会、食品メーカー、大学、都道府県庁、市区村町、消費者関連団体、食品展示会、などなど。で、唯一、依頼してこられないのが「コンビニ業界」だ。一人一人の社員にお会いすると、食品ロスを減らすことには関心を持っておられると思われるのに。
ただ、コンビニ本部のことだけ語っていたのでは、状況は変わらない。
今回の経済産業省のコンビニ調査も、弁護士ドットコムが報じただけで、マスメディアは報じていないようだ。
2月27日付で記者会見が開かれ、マスメディアが報じていたコンビニ24時間労働問題だって、2月19日に弁護士ドットコムがセブンオーナー「過労死寸前」で時短営業…「契約解除」「1700万支払い」迫られると報じた、これが皮切りだ。
マスメディアは弁護士ドットコムが報じるまで報じていない。このあと、各社が追随した。
メディアだけではない。
われわれ消費者も、コンビニ廃棄食料のコストは8割以上オーナーが負担しているコンビニ会計のことを知らない。
メーカー以外から出る食べ物ごみは、事業者負担だけでなく税金を使って焼却処分されていることも知らない。食べ物が4割以上を占めるであろうごみ処理費だけで年間2兆円近いのに、日本中が、今の状況に加担しているのだ。毎日捨てる食品の廃棄コストを食料品価格と税金で毎日払わされているのに、能天気に、怒りもせず。
立命館アジア太平洋大学(APU)学長、出口治明さんの出口塾での言葉を伝えたい。
「社会をよくしていくために批判が必要」
「”他人ごと” は日本の教育の一番の問題」
「みなさんが主人公。一人一人が行動すれば世の中が変わる」